![]() | 死刑でいいです --- 孤立が生んだ二つの殺人池谷孝司(編著)、真下周(著)、佐藤秀峰(イラスト)共同通信社このアイテムの詳細を見る |
この本は共同通信社から新聞に全国配信。連載されたものを編集しなおしたもの。
山口で母殺害の後、少年院を経て社会に出て
ふたたび大阪で同じマンションの別階に住む姉妹を殺めた山地悠紀夫の発した言葉が題名になっている。
反省の言葉を口にせず弁護士も要らないと言い『死刑でいいです』と。
アスペルガーに普通の杓子定規ではきちんと理解がなされないものらしい。
少年院では広汎性発達障害の診断がされ、2回目の逮捕後は人格障害と診断。
決して発達障害者が犯罪を犯す危険を説かれている訳ではなく、
少年院から次の殺害を犯させない支援がどうあったら良かったか?に視点が置かれている。
山地は発達障害を持っていた上に
家庭内で暴れる父持ち、母にも充分な愛情を注がれず、水道が止まるほどの貧困といじめの中で成育した。
『私は生まれるべきでなかった』と言った山地の刑の執行は2009年7月28日。25歳で生涯を終えた。
つい近々の事に戦慄を覚える。
山地の行動パターンとアスペルガーである息子と酷似している。
取り調べにこ難しい言葉や哲学者の言葉の引用をする辺り。
そして職歴がどこか被る。
中学を出てから母殺害までは新聞配達。
少年院を出てからはパチンコ店で働く。最初はうまく行っていても店長が変わったとたんに働けなくなった。
息子は郵便配達をしていた。
そして宅急便のカウンターでうまく働いていたけれど、店長が変わったとたんに居ずらくなって辞めた。
そして、今回は交通誘導バイトはとてもうまくいっていたのに
工場警備に抜擢されたばっかりに、仕事に苦しんでいる。
人や環境が変わらなければ長く働くことが出来るのにといつも思う。
山地は少年院から社会へ身内すら身元引受人すらなく放りだされた形になった。
彼を受け入れてくれたのはパチンコで不正を働いて儲けるゴト師集団。
これも福岡に居る間は良かったけれど、意に染まない元締めと大阪へ移って
叱責をくらい居場所を失った形で第2の殺人を犯してしまった。
少年院で広汎性発達障害と診断を受けていたにも拘らず、保護司すらそれを知らされていなかった。
ここで何か手立てがなかったか?悔やまれてならない。
この本では最後に『ではどうするか?』という項目をあげ
当事者の自助グループが紹介されている。
人と違うことが前提。
普通になるためのトレーニングはいらない。
逆にほっておいて興味のあることをやるから方向性をつけてあげればいい。
と、結んである。
息子にも生まれてきて良かったと心から思って欲しい。
自傷も他害も根っこは同じ。行き場のない焦燥から派生する。
25歳で刑が執行。
こうなる前に、人の命を摘むような二重三重の悲劇を生む前に何か手立てはなかったか?
同じ障害を持つ子の親として残念でならない。