![]() |
おべんとうの時間 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2010-03-30 |
去年のクリスマスに、友だちがプレゼントしてくれました。
カメラマンのご主人と、ライターの奥さんのご夫婦が、さまざまな職業の人にインタビューして、その方の普段食べているあたりまえのお弁当をのせた本。
ただ、それだけなのですが、お弁当というのはこんなにその人の人生に密着しているものか、と、新鮮な驚きを感じる本でした。
お弁当の本は元々好きでして、クウネルの『わたしたちのお弁当』とか、『かえる食堂のお弁当』とか持っているので、最初読みはじめたときは、「あ、インタビューと写真だけなんだ。レシピ無いんだね~」と意外な思いでした。
けれど、だんだんに、勧めてくれた友達の“自分も頑張ろう、っていう気になる”という思いが分かってきました。なんでもない普通の人の生活とお弁当、そしてそこに寄り添っている人生がじわじわと心にしみてくるのです。
最初に魅かれたエピソードは、砂丘の馬車の馬牽きをやっている、立花夏希さんのもの。激務を真摯にこなす、その一生懸命さ健気さがいじらしかった。
可愛いエピソードもありました。猿まわしの方が、奥様に恋人時代に作ってもらったお弁当の話。自分に作ってくれた三段弁当の豪華さもさることながら、猿の勘平ちゃんのための、ちっちゃなお弁当もあったとか。皮をむいた(リンゴだけはウサギちゃんになってた)フルーツが入ったそのお弁当を、勘平ちゃんがじっと見てた、という話には、思わず笑ってしまった。
でも、ことさら印象に残ったのは、秋元正次さんのエピソードでしょうか。幼い子供連れのインタビューで、充分話が聞けなかったので、3年半後再度インタビューを申し込んで快く受け入れられたものの、もうその方のお昼ご飯はお弁当ではなくなっていた。奥様が体調を崩されていたのです。
小さなお弁当箱に入っているものは、心尽くしの料理とそれに寄り添う、ささやかな日々の幸せなのだと思わされました。
そして。自分のためのお弁当しか作ったことがなく、それが気楽だと思っていた私ですが、誰かのために作るお弁当、というのはまた別の喜びがあるのではないかと思ったのです。