アメリカン マヨネーズ ストーリーズ 価格:¥ 2,940(税込) 発売日:1997-11 |
ロードムービー風、で思い出したけれど、もう十年以上も前、大好きだったCMがあった。
それがキューピーマヨネーズアメリカンのCM。ロングショットのアメリカの風景の映像と、さりげないナレーションだけ。
15秒のロードムービーみたいだった。
この本の内容がCMと一致しているのか、それとも雑誌などの広告用に書き下ろされたものかはもう時間が経ってしまって思い出せないけれど、この本もまた、とてもいいのだ。
本の体裁は横長の変型判で、右に写真、左に10行ほどの文章(字組さえもデザインの一部だ)というレイアウトになっている。
文中には、必ずマヨネーズが出てくる。マヨネーズの広告集なのだから当然だ。けれどそれでいて、掌編小説として成り立っている。
素敵な女性をダイナーで見かけ、コーヒーの飲み方で懐かしい相手だと分かる。なのに、“ペギーですか”と尋ねると“いいえ、わたしはマージ”と応えられ、なすすべもなく彼女がフィッシュチップスにマヨネーズをつけて食べるのを眺めていると、去り際彼女が、“こんにちわ、そしてさようなら、ジョニー。ことしの雪は深かったの”とだけ囁いていく一編。
長い手紙を書いたのに、目ざめた後その手紙は破ってしまい、レターペーパーに降り出した雨のしずくをつけて、“ケープコッドの雨です。いろいろありがとう。ジェーン”とだけ書く一編。
思えば、“20秒のあいだ、兄貴の墓が見えていた”とか“この土地では、風をマリアと呼ぶ”といった、タイトルさえそのままストーリーだ。
いま読み返しても、心をゆさぶられる。
本の叙情にも、ストイックなプロの部分にも。
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