6月からお伝えしてきた「タラゴン」も今回で最終回を迎えることになりました。
ハンガリーのトランシルバニア地方に着地したタラゴンはイングランドに、そしてウィーン会議を契機にフランスに入ったタラゴンはその後めざましい発展を遂げて今日に至っています。ウィーンからはイタリアにも、ドイツにも、その他の地域にも飛び火したはずなのですが、受け入れられる受け皿がなかったのでしょう、今日のような有様です。
ここで、最近のイギリスのタラゴンの様子をお知らせしておきましょう。
2022/Aut. 刊のGreat British FOOD p83 から引用しました。
Creamy Chicken & Tarragon Pie
市販のパイ生地を使った、いかにもといったレシピです。
バター 55g
スライスしたリーク 1本
チキンの胸肉 450g
タラゴンの葉 8枚
イタリアンパセリ 3tbs
エンドウ豆 150g
crème fraîche 250ml
パイ生地 500g
卵黄+塩(グレイズ) 2個
塩、ブラックペッパー -
材料をバターでソテーしてパイ生地にくるんで180℃で約30分間焼く。
イギリスのレシピは今も昔も変わらないですねえ。前のレシピは、”Matthew Eads ; a former US Marine, self-taught gourmet griller”と紹介されていましたから、タラゴンの使用方法としてはアメリカの方が少し先を行っているようです。フランスのcrème fraîcheを使ったところが少しましになったと言えますが。
ここで終わるとあまりにも不親切なので、まとめをしておきましょうか。
1601年のマジャール料理では;
タマネギ、ライム、ビネガー、ブラックペッパー、サフラン、ジンジャー
1620年の料理の科学では;
セージ、ジュニパーベリー、ビネガー、ブラックペッパー、ジンジャー
1669年のディグビィは;
タラゴン、ブラックベリー、ビネガー、オリーブオイル、レモン、
1672年のハンナウーリィは;
ブラックペッパー、メイス、ナツメグ、ジンジャー、クローブ、ワイン、バター、ベイリーフ、マスタード、砂糖
1698年の料理の手引きでは;
ディル、ベーコン、ビネガー
1723年のジョンノットは;
砂糖、ケイパー、ロンググラス、アンチョビ、オレンジ、レモン、バーベリー
1849年のソワエは;
バター、チャービル、ブラックペッパー、カイエン、ビネガー
1861年のビートンは;
マスタード、カイエン、オリーブオイル、ビネガー
をタラゴンと一緒に使っていました。
ここからタラゴンの使い方が見えてきます。貴女はタラゴンをどの様に使いますか?
新しい料理は、歴史を溯ることで、その姿を現してくれます。それはまるで遊園地の滑り台のようで、素材にたいする歴史、文化が古いほど、滑り台の階段を上へ上へと導いてくれます。滑り降りる先は、設置された滑り台よりも前の、誰もが着地し得なかった先の地面の上になります。思いつき、閃きで作る料理はその場限りの、寿命の短いものです。
完
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