1 レモンバーム
レモンバーム 2021/3
ハーブを愉しんでおられますか ?
恐らく(貴方のハーブは)、「庭の片隅でひっそりと命を細々とつないでいる状態」なのではないでしょうか。シソや三つ葉、ショウガに山椒、ネギや大葉など日本にもハーブはたくさんあるのだけれど、ヨーロッパのハーブは今ひとつ馴染みがなくてという方が多いのではないでしょうか。「ホームセンターで見かけたから、お花屋さんで、ムードに押されて何となく買ってきたのだけれど。どう使って良いかわから無くて、お茶で飲むのが精一杯。」という方が殆どなのではないでしょうか。
(いわゆるヨーロッパの)ハーブは、これまでヨーロッパ人は4000年余りの間利用してきましたが、上手に利用してきたのは、紀元前約3000年から紀元後400年の間と、その後の、紀元後1900年から現在までの約120年間です。そこで古代ギリシャ時代と、古代ローマ時代に(経験に基づいて)書かれた文献、それにここ120年の間に得た科学知識、更に私が毎日の生活の中で経験している「ハーブの使い方」をご紹介していこうと思います。写真はいずれも私が小さな庭で育てているハーブをカメラに納めたモノです。
第一回は、メリッサ(別名;レモンバーム、バーム、上の写真)を取り上げました。冬の寒さが少し緩んで、最初に目に触れるのがこのハーブです。春から暑い夏の間を経て、秋に入る手前までの長い期間毎年お世話になるハーブです。ハーブティーにしてたくさん飲んでも副作用のないハーブで、安心して愉しむことが出来ます。木陰の、光りがチラチラ差し込む場所を好む植物で寒さにも強く育てやすいハーブです。部屋の中でも丈夫に育ってくれます。
(書き溜めが無いので、一つの記事をアップするのに3~4週間位かかりそうです。時間を見定めてご訪問下さい。一回のアップで一つのハーブのお話が完結するようにしました。その方が読みやすいでしょう。)
3月に地面を這うように茂っていたメリッサも今ではこんなに背が伸びました。
混み合ってくると蒸れないように間引くように刈り取ります。
それでは、始めることにしましょう。
一般名称 学名 生育地
レモンバーム Melissa officinalis L. 南ヨーロッパ山岳地帯
Melissa officinalis L.( レモンバーム) 2021/3/28
レモンバームは気楽に楽しめるハーブの一つです。寒さにも強く栽培も簡単。この季節の葉は硬く表面にこわばった様な凹凸が見えます。
別名 Bee Balm, Balm Leaf, Melissa。古くは、メリテオン(melitteon)、メリフィロン(meliphyllon)、エリスラ(erythra)、またはテメレ(temele)とも呼ばれました。 ローマ時代はアピアストラム(apiastrum)、シトラゴ(citrago,)、そしてガリア人は、メリシモリオン(merisimorion)と名付けていました。古来、人々に愛されたのでしょう。この中には今の分類方法では他の植物とみなされるものもありますが、多くの呼称が残っています。
生息地; 南ヨーロッパ山岳地帯原産。後、イングランド南部に帰化。
高さは1m程のシソ科(Mint family)の多年草で、茎は正方形で枝分かれして、擦ると香りのよいレモンに似た香りを放ちます。葉は卵形またはハート型で、白または黄色がかった花は、6月から10月に咲きます。葉は冬に枯れますが根は残り、翌年の初春に芽を出します。”Melissa” とはギリシャ語で「蜜蜂」の意で、葉を擦ると蜜蜂が集まってきます。レモンバームの花に蜂が集まる事はありません。
った魔女の箒で、群れは最も簡単に制御できる。ハチ、クモやサソリなどの昆虫の刺傷に、ワインの中に入れると鼓腸に効果がある。葉は塩と一緒に投与すると、肛門部分に感染した腺病の痛みに効く。ボイルした汁は月経を促進し、炎症と痛みを取る。関節の痛み、慢性の下痢、腹部、喘息、脾臓、胸部にある潰瘍に効果がある。汁を蜂蜜と混ぜた軟膏は目の治療に特に効果がある。」と言い、ディオスコリデスは「葉の煎じ薬は、サソリに触れた或いはクモや犬に噛まれた人に適している。」と述べています。古く、レモンピール、ナツメグ、アンジェリカの根と組み合わせたバームエッセンスは、神経痛や神経痛に対して非常に有用であるとされ、「カルメル会の水」という名前で高い評価を得ていました。( Eau de mélisse des Carmes Boyerはいまも薬局で手に入れることが出来ます。)
古代ギリシャ・ローマの文献はその内容の幅は広く、含蓄に富みます、ここに現在の知見を加えて、完璧とまではいかなくても、日々の生活に活用できる情報に集約してみようと思います。
主な有効成分 モノテンペル ロスマリン酸 ケルセチン
抗菌性 抗酸化作用 抗炎症作用
レモンバームには精油成分(0.2 % 以下;シトラ―ル、シトロネラ―ル、ネラ―ル、ゲラニオール、リナロールなど)、ポリフェノール(ロスマリン酸、ケルセチン、ルテオリン)、タンニン、コハク酸、ウルソール酸、コーヒー酸、クロロゲン酸、リソスペルミン酸などが含まれています。
シトラ―ル、シトロネラ―ル、ネラ―ル、ゲラニオールは、テルペン系のアルデヒドですので抗ヒスタミン作用、抗真菌作用、抗菌作用、抗炎症作用、抗ウイルス作用、昆虫忌避作用があります。シトロネラールの精油を単独使用すると皮膚刺激性が強く、アレルギー反応を起こす事がありますが、レモンバームの葉を使う限りでは問題はありません。
レモンバームに含まれているフラボノイドに抗アレルギー性、抗喘息性、抗炎症性、抗酸化性、および抗新生物性、抗腫瘍性が期待できます。特にケルセチンは、関節炎やアレルギーの抗炎症剤として広く使用され、肝細胞への損傷を抑制するのに特に役立つ抗酸化剤です。ルテオリンは、植物によく見られるもう1つのフラボノイドで、抗炎症作用と抗菌作用がある一方、ヨーロッパで最初に使用された黄色の衣類用染料の1つでした。
プウリニウスとディオスコリデスは、創傷治癒、腫れ、犬の咬傷、虫刺され、過食にレモンバームを推奨していますが、これは、レモンバームに含まれるタンニンの抗菌性、防腐性、および駆風性を利用したものです。タンニンの抗菌性、防腐性、強力な抗ウイルス性は、特に下痢や赤痢の場合の消化器系のバランスを取ってくれます。
セスキテルペンは揮発性のエッセンシャルオイルを多く含み、苦い成分を含んでいます。セスキテルペン、モノテルペンは、非常に高い抗菌性および抗真菌性があります。R.C. Wrenは「Potter’s New Cyclopedia of Botanical Drugs and Preparations」で、「レモンバームは解熱作用と解熱作用があるため、冷やしたお茶は熱のある患者に心地よさをもたらす。」と述べています。著者は、抗菌性のあるレモンバームが感染症患者に効果があることを示唆しています。
ウィリアム ミッチェル博士は、著書「Plant Medicine in Practice」で、『レモンバームに含まれる芳香性エッセンシャルオイルは鎮静剤、抗けいれん剤、軽度の制酸剤の働きがある。』と述べています。モノテルペンには、駆風性、消化性、鎮静性、鎮痙性、抗菌性があるからです。ゲラニオール、リナロールはモノテルペンアルコールで殺菌、抗菌、抗ウイルス作用があり、毒性が無く皮膚刺激の原因にならない為、安心して使えます。
トリテルペノイドは、心臓の作用に影響を与える植物心臓配糖体で、ステロイドやフィトステロイドが存在するため、体にホルモン/ステロイド効果を及ぼします。一部のトリテルペノイド化合物はサポニンとして知られ、血液を薄くするのに役立ち、抗菌性もあります。
メリッサには、ロスマリン酸が含まれ抗ヘルペスウイルス剤の1つであると考えられています。ジェームズ デューク博士は、彼の著書「The Green Pharmacy」で、単純ヘルペスウイルスは口唇ヘルペスと性器ヘルペスの痛みとして現れると述べています。水痘・帯状疱疹ウイルスは帯状疱疹を起こすウイルスで、レモン香油には、両方のウイルスを除去し治癒する能力があります。ロスマリン酸は抗炎症作用があり、非常に強力な抗酸化剤であることが証明されています。ビタミンE(α-トコフェロール)とビタミンCの抗酸化作用の10倍の効果があります。
レモンバームに含まれるコーヒー酸にも抗ウイルス作用があり、単純ヘルペスの治療にも効果的で、レモンバームの葉から分離されたコーヒー酸が癌細胞のタンパク質生合成を阻害するため抗腫瘍活性を示します
レモンバームの薬効を要約すると、次のようになります。
抗酸化剤、抗炎症剤、鎮痙剤、神経質、抗真菌剤、抗ウイルス剤、発汗剤、肝臓剤、抗菌剤、抗腫瘍剤、抗うつ剤、抗菌剤、抗甲状腺剤、鎮静剤、駆風薬。
※ 注意 いずれの薬効もレモンバームを外用して得られる効用で、経口摂取して上の効果が得られることはありません。
レモンバーム(メリッサ)を使用する上で注意点が今後付け加えられるとするならば、プリニウスが、『蜂の巣をバームで擦ると、ミツバチは飛び去ることはない。この植物で作られた魔女の箒で、群れは最も簡単に制御できる。』と述べていた「蜜蜂を制御する何か」に対してでしょう。人間が大量に摂った時、弊害が起こるかも知れません。メリッサは、自身が踏みつけられたか、刈られたか、何かの危機に際して香りを放出したのです。人間の為に香りを用意しているのでは無いことを承知してメリッサの香りを利用することが大切です。
(ミツバチは体のナサノフ腺からゲラニオールを分泌して蜜を持っている花とミツバチの巣の入口を標識することが知られています。レモンバームにはゲラニオールが含まれていることから「何か」はゲラニオールではとも思われますが、詳しくはわかっていません。)ゲラニオールに敏感な人もいるため、香水への使用は規制されています。大量に浴びるとアレルギー性皮膚反応、眠気又はめまいを起こすおそれがあります。
5月になると、木漏れ日の下で気持ちよさそうに大きく枝を伸ばします。
栽培 春または秋に種子、挿し木、または根の分割
定期的に株を切り戻すと、そこから枝分かれして新しい葉が出てくるので、シーズン中にたくさんの葉を収穫することができます。また、切り戻しは暑い期間の株の蒸れ対策にもなります。レモンバームは長い間収穫できますが、花を咲かせると香りが落ちます。葉を収穫するために育てている場合は、花が咲く前に切り戻しをします。レモンバームは寒さに強く、関東以南の地域では防寒対策はほとんど必要ありません。挿し木は、水に挿す部分の下葉を取り除いて水に挿しておくと発根します。日光をさほど必要としないので室内でも栽培出来る利点があります。
HMPCは、下記の用量内において、その長年の使用に基づいて、「メリッサの葉はストレスの軽度の症状の緩和と睡眠を助けるために使用できる、又、鼓腸や軽度の消化器疾患の症状の治療にも使用できる。」と結論付けています。 (14 May 2013)
メリッサを使う上での注意事項は次の通りです。
メリッサは、大人と12歳以上の青年、成人、高齢者に使用すること。
ハーブティーとしてのハーブ量:1.5〜4.5gから、1日3回。
液体抽出物(45%エタノールで1:1):2〜4mlを1日3回まで。
チンキ剤(45%エタノールで1:5):2〜6mlを1日3回まで。2週間の治療後も症状が続く場合は、医師に相談する必要があります。(HMPCの評価では、これらの薬による副作用は報告されていません。)
用途 軟膏 クールドリンク ワインカクテル スープ
ハーブティーを作るには、沸騰した500mlのお湯をレモンバームの葉、約10枚に注ぎます。15分程蒸らしてから濾して飲みます。蜂蜜、レモンピールなどを加えると、さわやかな夏の飲み物になります。単独で、または他のハーブと組み合わせて飲むと発汗を促進するので、発熱を伴う風邪に優れています。一緒に使うハーブはレモンバームの香りを損ねない程度の、香りのきつくないハーブがお薦めです。
キッチンカウンターから レモンバームの葉に含まれる精油の量は僅かです;
葉そのものを卵料理やスープに安心して使うことが出来ます。
ブレンダーではなくミキサーを使って撹拌するとズッキーニの皮のきれいな緑色になり滑らかなスープになります。翌日になっても色は褪めません。
スープは炒めたタマネギをベースに、デンプンを多く含む野菜を使うと脂肪分の少ない、或いは出来るだけ使わない仕上げとなります。ジャガイモ等の芋類、パンプキンなどのカボチャ類、エンドウ豆などの豆類、ニンジン、ゴボウ等の根菜類、カリフラワー等、身のまわりにはたくさんのデンプンを貯め込んだ野菜があります。工夫のしどころでもあり、貴方のセンスを活かす場所でもあります。
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