3. 耳
諸々の事情を乗り越えて?それとなく内容を理解しようと試みると、ぼんやりとこの料理の姿が浮かんでくるでしょう? 次に「耳」の文字が料理書の中に現れるのは、数年後の1393年。びっくりするような短期間の内に出現します。その本、メナジェ・デ・パリ( Menagier de Paris ;パリの家政学 )は一体誰が書いたのか今もってわからないけれども、普通の人間でないことだけは確かです。羊皮紙にガチョウのペンで写し取ったLe Viandier de Tailleventを短期間で手に入れて自らの本の中に書き入れたのですから。
Menagier de Parisは、他書からの引用が極めて多い書物です。しかしそこに書かれた料理名は「ロリーパスティ」ではなく、「オリエット;orillettes」に変化していました。この料理の中身を吟味し、先の料理と同一であることを確認したいところですが、レシピは書かれていませんでした。(このことがこの本を書いた著者;以下メナジェ氏と呼ぶことにします、の正体を知るきっかけになるのですが。)
第二のコース。海の魚、淡水魚、ブリームとサーモンのパイ、ウナギのゼリー( 逆さまにしたウナギ )、茶色のherbolace(ハーブのパイ包み), テンチのベーコン粥、ブラマンジェ、レタス、lozenges ( ロザンヌ ), orillettes ( 耳の形をしたオリーヴでフライした小さなケーキ )、ノウィージャンパイ、サーモンとローチの詰め物。
内容から、第二コースの料理はアントルメであることが分かります。小さな耳は、その内の一つです。大切なお客様を迎えての、第二番目のコースの中でサーブされる料理です。金箔、銀箔、サフランで飾った料理は貴族以上の身分の者にしか出すことのできない、(してはならない)豪華な料理です。
Histoire du Grand Alezandre: Petit Palais から
ジョージ・ネヴィルが大司教の座に着いたことを祝って1467年に行われた饗宴
この豪華な祝宴を飾るのはクジャクのアントルメです。作り方は、孔雀の羽、足、頭を取って、その肉を軽くローストします。冷めた後で取っておいた羽等を元に戻すのです。肉がよく焼けていると後で首や頭が取れてしまうために、この料理を食べるとお腹を壊すと、美しいけれども、手を付けるとひどい目に合うという評判の料理でした。孔雀のアントルメは「ロリーパスティ」から、少し後になって現れたアントルメです。
このレシピではオイルがラードからオリーヴに変わっています。オリエットと名の付いた料理は今もあるのでしょうか。フランスのサイトから「不思議な耳」というレシピを見つけました。
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