BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説19-59「ディスティニー・アンダーグラウンド

2019-06-15 21:23:19 | ★ディスティニー19章
 …と思ったのだが、麻也の額ももうしとどに汗に濡れている。
二人が汗ででろでろのまま、ライトに照らされて絡み合うのもまた一興…

 そう思った諒は早足で麻也に向かっていき、後ろから左手を回すと、マイクにのせて、適当なメロディで「俺の麻也ちゃん、もっと良く顔を見せて~♪」

 すると麻也がやっと吹き出して、こっちを見てくれたところで軽いディープキス。

 客席が悲鳴を上げているうちに、諒は麻也を誘うように座り込み、ステージの上の恋人たちは、恍惚の表情をファンたちにさらしながら頬をすり寄せた…
珍しく麻也は手を止め、演奏は後の3人に任せてしまった…


 打上げの2次会、麻也はつぶれたふりをして、宴会の片隅で突っ伏して休んでいた。

 すると知り合いの社長が、麻也王子、大丈夫?と訊いてくる。
諒が引き取って景気よく返した。

「夜はこれからだもんね、麻也さん?」

それを聞いた麻也は顔だけ見せると、可愛らしい笑みを見せた。

〈19章終わり〉


★BLロック王子小説19-58「ディスティニー・アンダーグラウンド

2019-06-15 16:47:11 | ★ディスティニー19章
麻也にキスシーンの案を出されて…

 鏡に向かった諒は、今日のステージではひざまずくのがいいのかも、

とも思ったが、最近の麻也は体が弱っているからなのか甘えん坊が加速しているところもあって、

さりげなく諒の胸に頬を埋めていることが多い気がする…

服を着ている時はもちろん、素肌の時も…
 
 諒は、ベッドの上の麻也の無邪気な表情を思い出して、一人で照れ笑いしてしまい、なかなかメークがはかどらなかった…

…そしてその数時間後…

  諒は昨日と同じきらびやかなステージで、「その時」を迎えていた。

 アンコールの後の一曲目…
間奏で麻也と諒がラブシーンをいつも繰り広げる曲、「マジェスティック・クラウド」が始まった…

 客席に向かって放たれるキャノン砲から、会場全体に無数の金色のテープがふりそそぐ。

骨太だがきらびやかなサウンドに諒のボーカルがシニカルな言葉をのせ始めると、

いつものおなじみの曲が「大切な今日の一曲」に変わっていく。

「メンバー紹介します! 俺の恋人!…」

諒がそう言っただけでもう大歓声。

しかし、今回のツアーのこれまたお約束で、諒はいたずらっぽい目で…

 両手を広げてファンたちは音とメンバーのエネルギーを受け止める…

諒はみんなを挑発しながら、ステージの中央でつぶやくように続ける…

「…麻也ちゃんです、麻也王子、ギターも凄いがあっちも凄いよ…」

しかし、客席が見ると麻也は笑いもせず硬い表情で前を見たままリフを弾き続けている。

ようやく笑みを浮かべたが、諒にはその疲労がはっきり見て取れた。

それで諒は瞬時に考えた。

(とにかく麻也さんを床に座らせよう…その体勢で、長く長くキスだ…)

麻也の座ってのギターはレアなのでウケるだろうし…ふわふわの豊かな黒髪の麻也が客席に向かって小首をかしげながら、

うっとりとした表情でも浮かべてくれたらもうけものだ。

★BLロック王子小説19-57「ディスティニー・アンダーグラウンド

2019-06-15 16:19:31 | ★ディスティニー19章
諒と響子の声が大きくなった時、そこに響子のマネージャーがやってきた。

 諒はひやっとしたが、彼女は諒に挨拶をし、響子には須藤さんに差し入れをお渡ししてきました、と言う。

響子は諒に、

「…忙しい時にごめんなさいね。ライブも楽しませてもらうわ。」 

 混乱した頭で、 諒はようやくみんながいるパウダールームにたどり着くと、

「須藤さん、これ、処分してください。」

と、渡されたブランド物の紙袋を、諒はいつものように須藤に差し出した。

 事務所の一室は、メンバーへのプレゼントの一時保管庫になっている。中でも響子のプレゼントは… 

 須藤が開封したあと、響子専用のコーナーにしまわれて終わりだ。

他の、業界関係の女性達からのものも同じ扱いだ。

メンバーが身につけるプレゼントといえば、先輩後輩のバンドマンや関係者からのものがほとんどだ。

麻也と諒はそれすら、誤解を招かないために申告制だった。

嫉妬深いのはお互いさまだが…

 それだけ神経をつかっても、何も知らない人間から諒は「関村響子に貢がれている」と騒がれ、

「売れたらそのうち麻也を捨てる気だ」とまで陰口を叩かれていた。

それは諒がびっくりするくらい嬉しい言葉だった。今の麻也から出てくるとは思っていなかったから…

しかしその笑顔が、少年のように可愛らしくもあり、

でもどこか寂しそうにも見えるのは気になったが
 しかし、光の角度によっては、残酷なものをはらんでいるようにも見えて、

それは諒には新鮮な魅力に見えて、嬉しかったし、愛しさが増した。

「...…うん。みんなに見せつけてやろうね。」

そう答えると諒は麻也と軽く抱き合った……