BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説20-13「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-22 21:53:27 | ★ディスティニー20章
 …とさりげなく言った。諒はこういう時は子供と同じで、大きく反応すると調子に乗りまくるのだ。
「はーい…せっかく可愛いおしりなのにねえ…」
予想通り、諒はそっと大きな手を離したが、麻也が選んだブレスレットが諒を表す太陽のモチーフなのを見て、気を良くしてプレゼントしてくれた。
 …その30分後には麻也は「お礼のキス」と言って、麻也の方からリビングで諒の唇をむさぼっていたのだが…

 次の日の移動は随分と麻也を気遣ったものだったが、麻也はずっと乗り物のシートに深く体を沈めてだるそうにしていた。
 麻也は、目はサングラスで隠しているので、すごく生意気に見えると隣に控える諒がそれをからかって笑いに変える。
「ええ~、何だよ~、も~」
麻也もやっと笑顔を見せた。
 遠距離の移動だったが、空港に着くとすぐにリハーサルのために会場入りだった。
 この公演地は、客席の盛り上がりが比較的おとなしめな土地で、万全の体調でも本当は難しいと麻也は思っていた。
 何度も来たことはあるけれど、遠い街だから他の街と同じようにいや、こっそり他の街以上に心を込めて演奏したい気持ちもメンバーにはある。
 案の定、表面は堅実だが中は熱すぎるぐらいといわれる県民性のせいなのか、その日も客席のエネルギーは遠慮がちにゆっくりと立ち上がり、途切れることはなかったが、その頃には麻也はどうにかピンクのレスポールから攻撃的な音を出し、合間に腕を伸ばして客席を煽るのがやっとだった。
 表情が硬いのは自分でもわかる。
(困ったな…だるい…マイク前からもう動けない…)
 その時、
「夜はかるかんより甘いです!俺の恋人、ギターの麻也~!」
気づいた諒が抱きとめてくれて、少し体が楽になった。舌をちろ、っと見せられるくらいに。

★BLロック王子小説20-12「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-22 21:28:39 | ★ディスティニー20章
 憧れの人にそんなことを言われた鈴音は、困った表情になった。
「俺は恋愛に関してはすごく臆病で、むしろ冷たい人間かもしれない。それを、溶かすことができるのは諒だけなんだ…」
…それは麻也の実感だった…しかし、わざわざ他人に言うことではなかった…
 まあ、鈴音には、高校生とはいえ予防線を張っておく必要は常にあるのだが…

 慣れているはずなのに、一人のタクシー移動は寂しい。
(…諒、大好きだよ…)
思わずもらしてしまった心の 声に、麻也は 一人で照れ笑いまでしてしまっていた。

 しかし、いざ診察を受けると医師が言うことは同じことの繰り返し。
 …とにかく休養をとって、薬はこのままで…それで麻也は薬が毎日だと仕事にならないと訴えたが、もう少し経過を見なければと言われ…
 がっかりして麻也が病院の玄関で携帯の電源を入れると、諒のメールが入っていた。
 
ー麻也さん、寝坊してごめんね。迎えに行けるけどどう?
 
 しかし、麻也はせっかくの誘いを断った。諒とデートして気分を変えたい気持ちはあったが、翌日は飛行機移動なので諦めたのだ。
 …でも家に着くとデートに出かけたくなり、近所のレストランに手を取り合ってランチに行ったのだが。
 食事を終えて店を出ると、いつの間にか、隣にシルバーアクセサリーの店がオープンしていた。
「あー、麻也さん、何か入りたい、って顔してる」
「わかる?」
 あまり諒にはピンとくる店ではなかったらしく、いかにも付き合って入ったという感じで…
 ガムを噛みながら、麻也のアクセ選びを待つ諒…だが、手持ち無沙汰になればやることはひとつ…
 
…さわさわ…
 
 最初のうちは麻也も無視していたが、あまりに続くので、商品からは目を離さず、
「諒、やめないと怒るよ。」