BLロック王子小説「ディスティニーアンダー・グラウンド-ギターとスターに愛され過ぎた王子-」

 ★過去に傷を持つ美貌のロックギタリスト遠藤麻也(まや)。運命の恋人・日向 諒と東京ドームに立つが…

★BLロック王子小説20-19「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 21:27:36 | ★ディスティニー20章
 ややこしくなるので、もう遅いからと女性たちは帰して、諒は男三人を部屋に入れた。
「一体何があったんですか? 鈴木くんまで巻かれてしまって! ひど過ぎますよ!」
と、須藤が怒るのに、諒はケンが色々助けてくれたことと、ポラロイド写真を見せながら王子様の撮影会の顛末を説明した。
「まあ麻也さんが無事にこの部屋に戻ってこれたので良かったです……」
と、疲れも痛々しい様子の鈴木が言えば、
お灸は明日たっぷり据えさせてもらいます、と須藤は言う。
 真樹は周囲への申し訳なさと兄への怒りがないまぜになっているのが諒にも伝わってくる。
 しかし諒にとってはパートナーの問題なので、自分から謝った。
「……ごめん、俺も明日からは二次会に出て、責任持って連れて帰るから」
「いや、俺の方こそ……」
それが聞こえているのが聞こえていないのか麻也はあらぬ方を見たまま、
「諒、服脱がせてぇ~めんどくさい……」
と叫ぶ……
 諒もあきれてしまった。
 しかしとりあえず事故はなかったので、須藤たちは帰っていった……
 二人っきりになると諒は、ベッドの上で麻也のそばに座り込んでしまった。
「麻也さん……」
麻也も横になって眠ってしまいそうな様子である。まあ、麻也もストレスがたまるのだろうが……
 でも、服薬もままならない状態だというのに……は腹が立って仕方がなかった。
 いくらストレスが溜まっているとはいえ、どうしてこんな時に酒なんか飲んだんだろう……
 明日はまだ移動日だからいいようなものの、ライブの打ち上げの度にこの人はまた同じことを繰り返すんだろうか……
(まだツアー前半なのに!)
こんな壊れた姫君を連れてツアーを続けるのか……

 次の日の朝。諒は怒りを押し殺しながら麻也の分も荷物をバッグに詰めていた。よっぽど言ってやりたかった。何考えてんの? バカじゃないの?……
ベッドには二日酔い気味の麻也が毛布にくるまっている。

★BLロック王子小説1-2「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 20:54:26 | ★ディスティニー1章
 バンドが解散してしまえば、諒は本名の「日向(ひゅうが)諒」の名義でソロ活動をすることが決まっている。
 解散に最後まで反対していた麻也の今後は、全くの白紙だった。
 いや、いろいろとオファーはあったし、自分でプロジェクトを立ち上げることももちろんできた。
 しかし、麻也には何も決められなかった。
 とにかく混乱したまま…いや、納得できないまま解散の日を迎えてしまった、そんな感じだった。
 日付が変わり、今日でバンドとしての契約も切れる。
「あと4日で21世紀か…何だか信じられないよね。」
 窓の外の漆黒の闇に目をやって、麻也は何となく言った。
 が、少し寂しくなる。
 他のメンバーは、新しい世紀に、生まれ変わるように華々しく新プロジェクトを展開していくのに、自分は…

★BLロック王子小説20-18「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 20:40:53 | ★ディスティニー20章
 すると、麻也はまたまたウキウキと、
「諒、あんよのアレ、出して」
(あのアンクレット持ってきてのか、ここまで…)
 しかしさすがにこの状況では、諒も喜べなかった。
 それでも、仕方なく諒は麻也のバッグから例の誕プレのアンクレットを取り出して渡した。
 それを勝手に受け取った三田は、
「わー、素敵!…ペリドットなんだ…いやぁ、やっぱり全部本物で麻也ちゃん飾りたかった…」
すっかり出来上がった麻也は得意気に、
「諒がくれた誕プレ。諒の目の色とおんなじなんらよ…」
ペリドットとゴールドの、細いながらも美しいアンクレット。
 三田はますます盛り上がり、
「諒くん凄い!何より麻也さんだけだわ、これ似合うの…諒クンの愛を感じる…」
さらに麻也は得意そうに、
「諒ったら、これつけた俺撮るためこんな立派なカメラ買っちゃって…」
「違うじゃん。麻也さんからのプレゼントだったんじゃん。」
 居合わせたみんながびっくりした。
「麻也さんからのプレゼントなの! すご~い!」
 そんな妙な空気の中、仕方なく諒は麻也の写真を撮り始めた。
 麻也も調子に乗っていつものフォトセッションのようにあれこれとポーズを取り始める。
 まあ酔っているので可愛い瞬間もあるけれど…イマイチ…
 ポーズをあれこれするうちに麻也は、
「疲れちゃった。諒、もう寝ようよぉ~」
 公衆の面前でなんてことを、と諒は焦ってしまったが、
「いやーん、可愛い~」
と女性陣はメロメロだ。
「じゃあ、私たちもアクセサリー外すわね」
 ありがたいことに三田たち女性チームは自分たちがつけたアクセサリーを回収して、ティアラだけは置いていった。
「それじゃあ諒くん、明日写真楽しみにしてるわね。おやすみなさい~」
と、三田たちが部屋を出て行くところで鉢合わせたのが、鈴木と真樹と須藤だった。

★BLロック王子小説1-1「ディスティニーアンダーグラウンド」

2019-06-25 06:25:13 | ★ディスティニー1章
 時計が0時をまわった。

「俺達の魔法がとけちゃったね…」
 麻也(まや)がそう言うと、諒(りょう)は答えに困ったようだったが、シャンパンのグラスをガラスのテーブルの上に置くと、
「ああ、まあね。」
と彼らしくもない歯切れの悪い返事をした。
 イギリス系の血も流れている、研ぎ出されたような美貌と眼力がずば抜けた、カリスマボーカリストの諒。
 そしてその横に立ち、彼の恋人としてステージもプライベートも助け合ってきた中性的な美貌のギタリストの麻也…
 今夜はグラマラスな二人のロックバンド「ディスティニー・アンダーグラウンド」の東京ドームでの解散コンサートの夜だった。
 一次会だけの打ち上げもすませ、2人は今、すっかり疲れてしまって、スーツ姿のまま、ドームホテルのスイートルームのソファの上で脱力していた。
 麻也はぼんやりと諒の茶色の短い髪を眺め、諒は麻也の肩までかかるふわふわの黒髪を見ていた。