あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

佐渡裕プロデュースオペラ2023「ドン・ジョヴァンニ」

2023-07-26 11:57:18 | オペラ


私自身、約3ヶ月ぶりのオペラ鑑賞。

 

そしてこのオペラシリーズを観るのは2018年の「魔弾の射手」以来。
毎年演目・キャストはチェックしていますが、なかなか東京から簡単には遠征出来ません。
ですが、今年の公演チラシを見て
「大西宇宙さんのドン・ジョヴァンニ! 平野和さんのレポレッロ! 妻屋秀和さんの騎士長! 池田香織さんのエルヴィーラ! 城宏憲さんのオッターヴィオ! 観るしかないでしょ!!」

このブログでも度々書かせて戴いている注目、推しの方々が勢揃い、という感じなのですから。
で、何とかやりくりして、行けそうなのは最終日。
というわけで、田舎行きを絡ませ予定を立て、7/23、大千穐楽に行って参りました。

残念だったのは、池田さんが20日の公演から休演されたことです。
というわけで、エルヴィーラはダブルキャストのハイディ・ストーバーさんが歌いました。

ドンナ・アンナは高野百合絵さん、
ツェルリーナは小林沙羅さん、
マゼットは森雅史さん。

 

音楽面で不満はありません。
演奏がややゆっくりめで、終演予定時間が遅くなったため、帰りのバスを遅い便に買い換えることになったので、困ったことと言えばそれくらい。

 

この作品を鑑賞するのも久しぶりだったので、ちょっと新鮮な気持ちで鑑賞しました。(METライブビューイングのも観てみたかったけど観られず)

喜劇と悲劇、軽快な楽しい歌、美しいアリア、宗教曲のような荘厳な曲がない交ぜの作品。

私が最初に鑑賞したのは十代のまだ幼い時で、純粋に楽しんだのですが、今回、いろいろ考えるところも多かったです。

 

ということで主にヴィジュアル面(演出、演技含む)の感想を。

「ヴィジュアルにうるさい」この私も納得、満足のキャストでした。
外国人中心の別キャストの方々の写真を観ても、ヴィジュアルにもこだわったキャスティングとお見受けしました。

 

ドンナ・アンナの高野さんは、正直なところ、歌唱面は発展途上という印象でしたが、とにかく舞台映えするヴィジュアルで、これから楽しみですね。

ツェルリーナという娘、前から小悪魔だと思っていたけど、小悪魔を通り越してとんでもない魔性の女だな、と今回思いました。そういう色気が小林さんにはありました。

マゼットの森さん、この方もなかなか舞台映えするいい男で、小林ツェルリーナが夫に決めたのもわかる感じ。

騎士長妻屋さんもさすが。出番か少ないながらビシッと締めて下さいました。大柄な方ですから、石像になっても威圧感がありました。

ドン・オッターヴィオ、この役はテノールなのにヒーローではなく、印象薄め、だけど大変なアリアが後半に待ちけているという役。城さんのオッターヴィオだと、ヒーローっぽくなるかな、と思いましたが、なんというか、ジョヴァンニとの対比というか、誠実、だけどつまらない、と思ってしまうオッターヴィオを好演されていました。

平野さんのレポレッロは、2012年の新国立劇場公演以来ですが、あの時と全く印象が違うレポレッロでした。むしろ今回のほうが若々しい。ドン・ジョヴァンニとは主従関係というより、友達みたいにも見えました。
平野さんは今後もいろんな役を観てみたいと思うオペラ役者さんです。

 

そしてタイトルロール、大西さんのドン・ジョヴァンニ。
いやぁとんでもない下衆野郎でしたわ。(←個人の感想)

ドン・ジョヴァンニって、確かに台本的にも極悪非道の男。
だけど、通常は「悪いやつだけど惹かれちゃう」「憎めないキャラ」だったりするのだけど、とことんヒドイ男でした。

悪役大好きの私ですが、悪い男というよりヒドイ男。

いくらダダ漏れするくらい色気と魅力(肉体と美声)が大西さんにあるからって、好き放題しやがって!
……と思うような演出でした。どこまでが演出家の指示かはわかりませんが。

 

そして、ドン・ジョヴァンニが下衆なだけに、一層哀れが引き立つのがドンナ・エルヴィーラ。

池田さんのエルヴィーラも観てみたかったですが。

一途にドン・ジョヴァンニを愛する役ですが、ストーバーさん、とにかくおきれいで歌も演技・動きも言うことなし。
今回ストーバーさんに対して拍手が一際大きかったのは納得出来ました。

外国人キャストというだけで、有り難みを感じるという人もいたかとも思いますし、19日から、休演日だった21日を除いて連続で23日まで歌われた労いの拍手というのも上乗せであったかもしれませんが、演技、存在感でも、この公演を牽引する存在でした。

ドン・ジョヴァンニが地獄に墜ちて悲しんでいるエルヴィーラを観てうるッとしてしまったもの。修道院など行かないで、あなたならもっと素敵な男性が現れるわよ、と言ってあげたくなった。


ということで、下衆でダーティな今回の「ドン・ジョヴァンニ」。

面白く観ましたし、希望に満ちた幕切れは、かなり好きでした。

が、このオペラシリーズは結構初心者の方やお子さんも観に来ています。

正直、行動や所作で(特にドン・ジョヴァンニの)、これはちょっと......、と思うところもありました。R15指定並レベルだったかも。

「悪いことをしたら地獄に墜ちる」ということだけでも心に残れば、それはいいのかもしれませんが。

出来ればもっとクリーンで楽しい演出のほうがいいのではないかなあと思ってしまいました。

 

       最終日だったので、売り切れのグッズなどもありましたが、最終日ならではの、こういうカーテンコールも見られました。

とにかく高いレベルの公演をお手頃価格で観られるというのは貴重なことですし、これからも多くの人を楽しませる舞台を作っていって欲しいと思います。

 

 


二期会「パルジファル」 その2 音楽編

2022-07-21 09:17:00 | オペラ
「パルジファル」の感想第2弾です。

まずグルネマンツの加藤宏隆さん、「魔弾の射手」のカスパールを観てから私の中の「お気に入りに追加」させていただいていたので楽しみでした。やっぱり好きな声! ワーグナーは初とのことですが、しっかり舞台を牽引していらっしゃいました。今後もいろんなワーグナーで聴きたいです。
山下浩司さんも貫禄のグルネマンツ。安心して聴けました。見た目が布袋さまかヱビス様か、とにかく、福々しいグルネマンツでした。

アムフォルタスの黒田博さん。 10年前の同役も印象的でしたが、今回も苦悩の王を好演! 苦しさが痛いくらいに伝わってきました。
来年のびわ湖「マイスタージンガー」ではベックメッサーを歌われるそうで……。
「ヴァルターよりザックスのほうがいいじゃん!」と思うことはよくありましたが、「ヴァルターよりベックメッサーのほうがいいじゃん!」になる予感。

B組の清水勇磨さんもとても良かったです! 豊かな声で、聴き応えがありました。これからバリトンの主要な役をどんどん歌われるのでしょうね。

ティトゥレルは大塚博章さんと清水宏樹さん。それぞれキャラがあって(といってもほぼゾンビなんだけど)興味深かった。声もいいし存在感を残しました。

ティトゥレルを歌うはずだった長谷川顯さん。
この公演直前に逝去されたとのことで、ショックでした。
トーキョーリングでは主要な役を歌われ、それこそフンディングやハーゲンではワクワクしました。ほんとうに多くの作品で楽しませていただきました。ご冥福お祈りいたします。


クンドリはびわ湖に続き田崎尚美さん。歌だけでなく、うめき声、叫びなど、もう本当にクンドリそのもの、という感じ。母であり魔女であり、最後は天使?
橋爪ゆかさん、10年前の二期会公演も、私が観た日のクンドリは橋爪さんでした。橋爪さんのほうが人間味があり、呪われた女の悲哀を感じました。

クルングゾルの門間信樹さん、パンフ等で名前とお顔は知っていましたが、実際観聴きしたのはたぶん初めて。舞台映えもするし、いいオペラ役者さんという感じ。声もいいし、今後楽しみです。
B組の友清崇さん、悪役マニアの私は一昨年の「フィデリオ」のピツァロからずっと注目していました。いっそう凄みが増してました~。これからもどんどん悪いヤツを歌って下さい!

そして題名役、パルジファル、A組の福井敬さんは、10年前、今春のびわ湖と聴いてきました。ソツがありません。声だけでなく、今回扮装有りだったので若々しく見えたし(1、2幕は錦織健さんに見えて仕方なかった)。
そしてB組の伊藤達人さん! 今回の一番の注目していたと言っていいでしょう。ところどころ若さは感じましたが、そういうところも役柄に合っていたし。これからどんどん経験を積んで、そのうち「ワーグナーと言ったら伊藤さん」と言われるようになるのでしょうね!
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/75c386082c52310e850b7ed59a67746b


その他聖杯の騎士、小姓たち、花の乙女たちで主に若手の方を中心とした実力派の皆さんが出演。
アデーレにオルロフスキー(清野友香利さん、郷家暁子さん)だわー、とか、スザンナにバルバリーナ(宮地江奈さん、雨笠佳奈さん)だわーとか思って観ていました。以前観た役とイメージの違う役で、皆さん好演、熱演。
第1の聖杯の騎士を歌ったお二人、西岡慎介さん、新海康仁さんは、他の役でも観てみたいと思いました。

二期会合唱団(三澤洋史さん合唱指揮)も、相変わらず感動させてくれました。


そしてセバスティアン・ヴァイグレ氏指揮の読響。過去の上演記録を観ても、国内のものは圧倒的に読響なんですね。パルジファル楽団? ヴァイグレ✕読響というだけで安心感がありました。
演奏は初日はちょっと「あれ?」というところもありましたが。2日目が一番良かったかな?

ただ、演奏の陶酔度ではびわ湖の沼尻✕京響が上だったかも。びわ湖ではオケがステージにいたのでダイレクトにその辺の緊張感なども伝わったからかもしれません。

今回、ヴァイグレ氏は胸から上がピットから上に出る高さで指揮していたため、パフォーマンスも込みで、とても楽しませていただきました。
タクトをゆーっくり下ろす様が見える(見せている?)ため、観客も拍手はじーっと我慢。初日のお客さんが一番我慢強かったですね。


今年になって計5日「パルジファル」を鑑賞したので、それまでの生鑑賞歴を(第3幕だけのマリインスキーオペラを含めても)越えたわけで、すっかり「パルジファル」が好きになりました。

https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a432edaf7aa4f9e149908403e6ac8bd2



初日の開演前、読響のメンバーによるファンファーレの演奏がありました!

二期会創立70周年記念公演 「パルジファル」その1 視覚編

2022-07-20 07:33:53 | オペラ
初日、2日目、千穐楽と観に行きました。それぞれ違う位置の席で。
前にも書いたのですが、ワーグナー大好きだけど「パルジファル」は優先順位は高くない作品でした。
基本的に元気な曲、全音階の曲が好きということもあり、FM放送を録音したテープやCDもいくつか持っているけれど、繰り返し聴くことがありませんでした。
上演回数も多くなく、BS等で放送された回数も多くなくないため、鑑賞回数自体も多くありません。

過去に私が生で観たのは2005年の日生劇場(東京シティフィルのオーケストラルオペラだったのか! とパンフの『上演史』を読んで改めて思った)、2012年の二期会、2014年の新国立劇場、今年のびわ湖だけで、完全な舞台公演は2回だけ。
びわ湖で2日間観賞してから、この作品に徐々にはまっていき、その後二つDVDで観てみました。そのうち、レヴァイン指揮、シェンク演出のメトの公演はかなりオーソドックスなものでした。

この作品に今一つ馴染めなかった理由。
「パルジファル」は舞台神聖祝典劇で、音楽も内容も宗教色が強い作品です。
正直、キリスト教に関する知識もなく、無宗教の私は、字幕を読みながら鑑賞しても「そう言われてもピンと来ない」と思うところも多く、別世界の話として観るしかない。リングなどの他の楽劇は別世界の話だけどストーリー性があって引き込まれますが。

今回の宮本亞門氏の演出は、台本を読み込んで「わかりやすく」、と考えられた演出ではないかと思いました。

「魔笛」ではプロジェクションマッピングを使い「舞台感」は薄かったけど、今回は、回り舞台、宙乗り、映像を駆使し、とにかく舞台で出来るいろいろなことを詰め込んだという感じでした。
出演者もですが、大道具係、小道具係、映像担当すべて大変だっただろうな、と。
実際に動かしているスタッフ、裏方さんは大忙しだったでしょう。
(初日のカーテンコールには宮本亞門氏と外国スタッフの皆さんも登場)

ワーグナー作品にありがちな長台詞(歌)の部分、間奏部分も飽きさず見せていたという印象です。

台本にはないサイドストーリーが前奏曲から展開するところ、猿が出てくるところなど、「魔笛」と重なる部分もあります。

夫に自殺された母と、母の女の部分を見てしまった少年の反発、苦悩、成長。 それをパルジファルと母・ヘルツェライデにリンクさせることによって馴染みのない世界が近くなったというか……。
ラストは、想像出来たけど、感動しました(なんと言っても音楽がねー、感動させる音楽だし)。

今回「パルジファル」を初めて観た人は戸惑った人も多かったようですが、 私レベルの鑑賞歴(初めてでないけど聴き込んでもいない)の人間にはヒットしたのかも知れません。

わかりやすい、ということはつまり情報量が多いので、「これはなくてもいいんじゃない?」というところも正直ありました。
例えば、昇天&天使の場面。宙乗りでない見せ方のほうが感動出来たのでは……。

随所に出てくる映像。 地球(宇宙?)に、核戦争を想起させるもの、最後はビッグバン的なもの…… 意味のある意図的なもの(世界の滅びと救済、再生?)なのだろうと思いますが、 そうなるとあまりにも世界が壮大になりすぎてしまって。
まあ、イメージ映像くらいの気持ちで観てもいいのでしょうが。

第2幕はトーキョーリングを彷彿ところが随所にあり、面白かったです。
鏡を使った場面では席によってはヴァイグレ氏だけでなく、プロンプターさんも見えた。

影を効果的に使ったり、装置の使い方も結構好きでした。 ティトゥレルの扱いも、私は納得。

演出に対する感想はそんな感じでしょうか。


並んだところは観ていないけど、初日の少年、福長里恩くんと2日目の近田聖くん(二人とも“くん”でいいんだよね?)、たぶん近田くんのほうがかなり背が高い。クンドリは田崎さんが大柄なのに対し橋爪さんは小柄。橋爪さんと近田くんはそんなに変わらなかった。 パルジファルとの兼ね合いで振り分けられたのでしょう。

観ていて、福長くんは子役時代の濱田龍臣くんを、また近田くんは子役時代の加藤清史郎くんを思い起こしました。
外国語のオペラ作品なんて、キッカケなども難しかったでしょうし、難しい役を演じた二人、本当にブラボー!ですね。 (福長くんは初日、時間の関係かカーテンコールに出られず残念でした)

また、母親役の白木原しのぶさん、複数の役柄で重要な役を演じた重松直樹さんをはじめ黙役の皆さんにもブラボーを言いたいです。

そして、第3幕のパルジファルの姿を観て。
私の記憶が確かならば、ですが、 マリインスキーオペラの来日公演の「リング」で、ジークフリート役の人が筋肉スーツを着ていた気がする。 新国立のジークムントもだったかな?
いやあ、タンクトップ姿になるなら、筋肉スーツもありかなあと思ってしまった。着けても失笑が起こらないくらいのナチュラルなやつ。

字幕は今回、広瀬大介さんと亞門さん監修とのことで、わかりやすくしてるな、と思いましたが、部分的にかえってわかりづらいところもあり……。字数が限られているから大変だと思うんですよ、特にワーグナー作品は。

いろいろと書きましたが、総合的に私はとても楽しみました!

でも10年前のグートの演出もまた見たくなったなあ。


新国立劇場「ニュルンベルクのマイスタージンガー」・本編(感想)

2021-11-23 22:34:51 | オペラ
前置きが長くなりましたが、初日と2日目を観た感想です。

とにかく豪華なマイスターたち!
日本が誇る主役級の歌手の皆様。
役不足、という言葉はこういう時に使うんじゃない?
と思うくらい。

村上公太さん、与那城敬さん、秋谷直之さん、鈴木准さん、菅野敦さん、大沼徹さん、長谷川顯さん、妻屋秀和さん!
その他大勢的な役ですが、皆さんそれぞれに役作りされていたようでした。

聴かせどころも多いコートナーはびわ湖のヴォータン・青山貴さん! 朗々とした声でぴったりでした。

夜警は2005年公演と同じ志村文彦さん。出番は少ないけど、しっかり爪痕を残してらっしゃいました。

エーファの林正子さん、19年前もこの役を聴いていますが、容姿も含め殆どお変わりないのが素晴らしい!
ただ、これは演出の問題なのだけど、衣装はあまり好きではなかった。
エーファの小悪魔性を強く、はっきり魔性の女的に描いたためかもしれないけど。
そのためザックスと、歌詞にあるような年齢差は感じられずより生々しい感じに(時折壇蜜に見えた)。
純だからこそ小悪魔、という感じに描いたほうが、ラストがもっと効いたんじゃないかな。と個人的意見。

マグダレーネの山下牧子さん、歌も演技も安定感! 素敵なマグダレーネでした。
なので、ダーヴィットとも「ちょっと年上のカップル」くらいに見え、違和感なかったです。
2日目、第1幕で椅子ごと倒れたのはハプニング?
ヴァルターとエーファが直し、ナイスフォローでした。

そして、ダーヴィットの伊藤達人さん!
とっても良かったです。歌もキャラも。とてもチャーミングなダーヴィットでした。
伊藤さん、一昨年、神田明神の「EDOCCO」でのミニコンサートで聴いたことがあり、よく覚えていたのですが、それからこんな短期間で大出世を果たすとは!
ダーヴィットに、夏にはパルシファルですからね。
今後楽しみです!
(たつんど、という名前もいいですね!)


そして外国の方々。

ギド・イェンティンスはエーファパパを好演。ザックスのカバーもしていたというので大変だったろうな。

ヴァルターのシュテファン・フィンケは、もっとなんというか、輝かしさみたいなものを欲しいなと思いましたが、ヴィジュアル含め、これ以上を望んだらバチが当たりますよね。

過去実際に観た中で最高のヴァルターは、2013年、東京春祭のフォークト様よねぇ。燕尾服でも、騎士感たっぷりでした。

その春祭でもベックメッサーを歌っていたのはアドリアン・エレート。

正直、新国立劇場公演に限らず、ですが、海外からわざわざ呼ばなくても、もっと歌える日本人もいるのに・・・と思うこともあるのですが、このエレートとか、ザックスのマイヤーとかを観ると、歌唱云々以前に日本人は太刀打ち出来ないものがあるって思いますね。
ヴィジュアルももちろんありますが、こなれている、というか余裕とというか、本場感、というか(エレートはウィーン出身ですが)。
演じる、でなく体現している、というか。

エレートのベックメッサーは、役作りをしている、を超えて、ベックメッサーに見えた。憎めない、ラブリーなベックメッサーでした。

そして、ザックスのトーマス・ヨハネス・マイヤー、素晴らしかった。
もう、ザックスそのもの!
声も見た目も風格と色気があり、役にぴったり。
終幕、「親方、私じゃだめ?」と寄り添いたくなりました(ダメだろう! と自主ツッコミ)。

イエンス=ダニエル・ヘルツォークの演出は、現代の劇場に置き換えられていたけど、読み替えというほどではなく、違和感なく観られました。
歌っている人以外にも人が出て来て動きがあるので、チェックするのが大変。

話題になっているラストシーン、私は有りだと思います。
2回観て、ラストシーンとファーストシーンとつながっていることに気づきました。

ただラストの感動感はやっぱりちょっと減っちゃったかな。

コロナ禍で合唱の人数が抑えられていたこともあるかと。

演出的にも不自然な「距離」がありましたが、それは仕方ないでしょう。
でも第2幕終幕は群衆にもっとドタバタが欲しかったな。

オケは大野和士氏指揮の都響、合唱は新国立劇場と二期会合唱団。

私にとっての原点である1981年公演は、とにかく舞台から凄まじい熱量が発せられ圧倒されたけれど、今回は正直なところ、オケも合唱も、ガツン! とくるものはなかった。
それはひょっとしたら、単に私が成長(老化?)したせいなのかもしれないけど。

でも、延期・中止になった分の思いもこもった、熟成された公演で、総合的にとっても満足でした♪




二期会「メリー・ウィドー」を観て

2020-11-29 15:47:35 | オペラ
仕事が忙しく鑑賞出来なかった間に、オペラも規制有りの中ではありますが、かなり通常に近い形で上演されるようになって来ました。
11月26日、「メリー・ウィドー」を見ました。「フィデリオ」以来のオペラ鑑賞です。

訳詞上演。
オペレッタはミュージカルに近いもの、と考えると、日本語上演であるべき、と思っていました。
しかも「聴き慣れた」訳詞だったので、嬉しくなりました。
演出の都合上、あずまやがクロークになるなどしていたけど。
訳詞の上に字幕も(歌唱部分のみ)あったので、特に重唱の時はわかりやすくて良かったです。

二期会は以前からオペレッタにも力を入れており、立川清登さんや島田祐子さんが活躍されていたのは知っていました。

私が最初にこの作品に触れたのは、ウィーンフォルクスオーパーの来日公演をテレビで観て、です。

ペーター・ミニッヒとジークリット・マルティッケによる、ちょっとオトナのやりとりと、ヴァランシェンヌのメラニー・ホリディが鮮烈でした。

生で初めて観たのは1984年の二期会公演。
ちょうど立川さん島田さんたちからの“世代交代”の時期で、ダブルキャストの2日目、ハンナ役でデビューしたのが、「椿姫」のヴィオレッタ役も決まっていた佐藤しのぶさんでした。
待望のニュースターの登場、ということで、オペラ公演では異例ですが、ハンナが登場したシーンでは「待ってました」とばかりに、客席からも拍手が起こっていたのを覚えています。
「待ってました!」という声も上がったような気もする……定かではありませんが。



佐藤さんにはやはり圧倒的な“華”がありました。不世出のスターだったと思います。

その後佐藤さんがハンナを歌った88年の公演でカミーユを歌ったのが(デビューではなかったかもしれないけどデビューに近い感じだったと思います)、錦織健さんでした。
パリの色男を楽しそうに演じていたのを覚えています。
錦織さんはオペラ歌手を超えたエンターテイナーだと思います。

前の世代の立川さん島田さんもですが、佐藤しのぶさんと錦織健さんは、“オペラ歌手”をオペラファン以外に身近に感じさせた功労者だと思います。

今回の公演でダニロを演じた宮本益光さんは、言わば立川さん路線を継承するエンターテイナーと言っていいと思います。
様々な活動をされているし、歌も演技も達者!

今回他のキャストも全体的に若い世代の方が多く出演されていました。
ハンナの腰越満美さんはもはや貫禄。
ヴァランシェンヌの盛田麻央さんは来年のパミーナも決まっていると言うし、今後が楽しみですね。
カミーユの金山京介さん、タミーノも以前観ましたが、見栄えのいいテノールはいいですね~(朝ドラ『エール』のミュージックティーチャー御手洗に見えて仕方なかった)。

若手の方が多い中、ツェータ男爵の池田直樹さんを始め、加賀清孝さん峰茂樹さんなど、私が見始めた頃から歌っておられる方々も健在でいらして、嬉しくなりました。

ニェーグシュは俳優の山岸門人さん。なんとなく「おじさん」のイメージがあったニェーグシュですが、若い秘書官でコメディ要素をオーバー過ぎずに演じていました。

演奏は東京交響楽団、指揮は沖澤のどかさん。話題の沖澤さんの指揮ぶりを観聴き出来たのも良かったです。

演出は眞鍋卓嗣さん。
全体的に楽しめましたが、ヴァランシェンヌが扇子に書いた言葉を2幕と3幕の幕間に明らかにしたのは何故なのでしょう。
時間短縮のため?
扇子の件が、ストーリーの一つの肝でハラハラ部分要素なのに。
敢えてドタバタコメディ要素を捨て、主役二人のラブコメに焦点を合わせたかったのでしょうか?
「私は貞淑な人妻です」とヴァランシェンヌが読み上げる時のカミーユの表情も見どころ、と私は思っているので。
ロロとカミーユをくっつける感じも、しっくりこない。
「大人の事情」があったのかと邪推してしまいます。

「フィデリオ」から比べると、だいぶソーシャルディスタンス的に緩和された印象ですが、べったりくっついたり近距離で見つめ合って歌ったり、というのは極力避けられており、その代わりをダンサーカップルが表現しているという印象でした。

レハールの音楽とストーリーは本当に素晴らしいし(それだけに扇子のくだりの演出は納得いかないけれど)、「定番のオペレッタ公演」はあっていいと思うし、芸達者な歌手も多くいるので、定番化して定期的に上演して欲しいと思います。