あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

宮本亞門演出 東京二期会「蝶々夫人」

2024-07-20 22:26:40 | オペラ

初日の7月18日に鑑賞しました。

実はプッチーニのオペラは、決して嫌いではないけれど、私の中で優先順位が高くなくて、「蝶々夫人」を生鑑賞したのも何十年ぶりか。
個人的に、「ワルキューレ」、いえ、単独上演がまずない「ジークフリート」の生鑑賞回数のほうが、「全プッチーニ作品」生鑑賞回数より多かったりします。
でも改めて、イタリア人ながらアメリカと日本の音楽も取り入れたこの作品を創ったプッチーニの才能とチャレンジャー精神に感服しました。

「蝶々夫人」に食指が動かないのは、やはりストーリーが悲しいというか腹立たしいから、というところもあるし、西洋人が蝶々夫人を演じるのは違和感しかないし、日本人が演じていても「えっ15歳!?」と思ってしまうし。

 

ですが宮本亞門氏の演出は違和感と不快感を感じさせないものでした。「

蝶々夫人」を観て泣いたのは初めてかも。

宮本亞門氏の演出オペラ、結構観たことになりますが、どれもコンセプトがはっきりしていて、不快じゃないのがいいですね(『ドン・ジョヴァンニ』だけは、ちょっとなあ、だった印象はありますが)。 
今回のプロダクションも以前BSで放映した時に観ましたが、流し見だったので、初見の気持ちで観ていました。

「午後の曳航」もかなり演劇的でしたが、今回の「蝶々夫人」もそうでした。

今回、セットと言えるものは一つだけで、紗幕と映像で情景を表現。バルテック・マシスの映像はどれも、こういう柄の服があったら欲しい、と思うような私好みでした♪

歌手の皆さんも、出番が少ない役の皆さんも含め、歌も演技も良かった。

ダン・エッティンガー指揮の東フィルも、状況(演出)に沿った演奏で、オペラは総合芸術だと改めて感じさせる、舞台作品だったように思います。

 

特にメインキャストの皆さん、歌、演技、ヴィジュアル含め良かったです。

 

まず蝶々さんの大村博美さん。
いやほんとに大村さんが本当に10代の少女に見えました。
「ある晴れた日に」、セットの2階、と言うのでしょうか、すごいところで歌っていました。このアリアをあんなにヒヤヒヤしながら聴いたのは初めてです。吊り橋効果の変形じゃないけど、一層感動した、と言うか。第2幕のラストのハミングコーラスのシーンも、大村さんが涙を流していらして、こちらももらい泣き。

そしてスズキの花房英里子さん。名スズキと言われた永井和子さんが公演監督でしたが、花房さんのスズキもとても素敵でした。演技も声も。

ピンカートンは城宏憲さん。去年からドン・オッターヴィオ、ドン・カルロと観ましたが、聴く度に声も含め印象が違うように思えます。演出のお陰でクソ男でない、同情の余地があるピンカートンでした。

シャープレスの今井俊輔さん。会場のお客さんの会話などからも人気の高さを感じましたが、さすがの演唱でした。深く広い、リアリティのあるシャープレスでした。

ゴローは近藤圭さん。イヤなやつ、という役なんだけど、存在感抜群でした。

青年役のChionさんもでずっぱりですが深い演技を要求される役で、好演、熱演でした。

「坊や」役の大塚稜久くんも、動く場面が多く、大変だったと思いますがブラボーでした。
惜しむらくは「坊や」と青年の顔が似てなかったことかな。

衣装は髙田賢三さん。宮本氏の演出意図に合う素敵な衣装でした。

髙田さんもですが、多くの人を新型コロナウイルスによって失ったということを忘れてはいけません。世の中ちょっと緩んでいるけれど、今また新型コロナが流行っていますが、気をつけましょう!!


二期会創立70周年記念公演 「ドン・カルロ」

2023-10-14 22:55:42 | オペラ

「ドン・カルロ」は私が一番最初に生で観たヴェルディのオペラ(1981年二期会公演)。少女だった私は、カルロとロドリーゴの友情や、ロドリーゴの犠牲死などに感動し、対訳もだけど、シラーの戯曲集を古本屋で見つけて買って読んだりして、しばらく熱を上げていました。音楽も全部好き。
ということで、今、実はめちゃくちゃ多忙な時期なのですが、10月13日、14日と観に行きました。

備忘録的に簡単に感想を書きます。

まず、東京初日、演出のロッテ・デ・ベアさんのプレトークを聴き、プログラムも読んだので、だいたいのコンセプトはわかりました。

逆に言えばそれがないとわかりづらかったかも。

きょとんとするところもありましたが、私は結構楽しみました。


初日の演出家たちへのブーイングは凄まじかった。というか、全体で6、7人くらいと思われるけど、うち二人くらいがものすごく大きく何度もブーしてた。

私も疑問や不満がないわけではないです。

たとえば、近未来の設定なのなら、女性陣の衣装も現代風にすればいいのに、とか思いましたし。

また、昔の私のようなオペラ初心者の少年少女も観ているかも知れないので、あらかじめ「お断り」があったは言え、過激表現や暴力はあまりないほうがいいなあと思いました。兵庫の「ドン・ジョヴァンニ」もそうでしたが。

 

ロッテさんが描きたかった世界はわかりましたが、プログラムも読んでなくて、初めてこのオペラを観る人にはわかりにくいかと思います。

ですが、芝居として見ると面白い。

細部に渡って演技、動きが細やかで、ある意味作品を分かりやすくしていると思いました。

例えばフィリッポの頭髪。
「ドン・カルロ」の公演で有りがちなのが、カルロよりフィリッポのほうが素敵じゃん、と思うこと。
それを考えるとフィリッポは年齢を感じさせるがっかりさせる見た目でなければなりませんから。

 

歌手の皆さんそれぞれ熱演で、特に大事なアリア中でも細かい演技を求められ、大変だったと思います。

 

演奏の感想もはしょらせて頂き、特筆すべきいや特筆したい点だけ書きます。

二日とも楽しみましたが、ヴィジュアル、歌唱、演技、総合的に見て、土曜日は特に満足度が高かったです!

 

初日組ではロドリーゴの小林啓倫さん、多分私は初めて大きな役で聴きましたが、良かったです! いい声だし。「死に方」も良かった。
この演出のロドリーゴはとにかく所作がキザ! しかも「自分に酔ってる」系の男。土曜の清水さんよりキザ男度が高かったです。


そして土曜日のエボリの加藤のぞみさん! 素敵でした! 歌も素晴らしい!
「むごい運命よ」の後、久しぶりに、演奏が終わらないうちに拍手が起こるのを聞きました。
個人的に、「むごい運命よ」と、「衣装をつけろ」と、「オテロ」の2幕幕切れの二重唱の後は、演奏が終わらないのに拍手が起こっても許せます。

 

そして土曜日のカルロ、城宏憲さん。
再三書いているように、このブログを始めたきっかけは城さんだったするので、ずっと注目していて、今回も城さんのカルロを観たいから、用事を投げうって観に行ったのです。


オペラ鑑賞においてヴィジュアルにこだわるワタクシ。
城さんは理想の歌い手さんと言って良いです。
声と見た目が良くても棒演技の人っているけど、城さんはそのままドラマに出たっていけるんじゃない? という感じ。

こういう方にこそメディアにもっと出てオペラファン獲得に一役買って欲しいです。


他の皆さんもほんとに良かったし、他にも感想はいろいろありますが、とりあえずこの辺にしておきます。

 


佐渡裕プロデュースオペラ2023「ドン・ジョヴァンニ」

2023-07-26 11:57:18 | オペラ


私自身、約3ヶ月ぶりのオペラ鑑賞。

 

そしてこのオペラシリーズを観るのは2018年の「魔弾の射手」以来。
毎年演目・キャストはチェックしていますが、なかなか東京から簡単には遠征出来ません。
ですが、今年の公演チラシを見て
「大西宇宙さんのドン・ジョヴァンニ! 平野和さんのレポレッロ! 妻屋秀和さんの騎士長! 池田香織さんのエルヴィーラ! 城宏憲さんのオッターヴィオ! 観るしかないでしょ!!」

このブログでも度々書かせて戴いている注目、推しの方々が勢揃い、という感じなのですから。
で、何とかやりくりして、行けそうなのは最終日。
というわけで、田舎行きを絡ませ予定を立て、7/23、大千穐楽に行って参りました。

残念だったのは、池田さんが20日の公演から休演されたことです。
というわけで、エルヴィーラはダブルキャストのハイディ・ストーバーさんが歌いました。

ドンナ・アンナは高野百合絵さん、
ツェルリーナは小林沙羅さん、
マゼットは森雅史さん。

 

音楽面で不満はありません。
演奏がややゆっくりめで、終演予定時間が遅くなったため、帰りのバスを遅い便に買い換えることになったので、困ったことと言えばそれくらい。

 

この作品を鑑賞するのも久しぶりだったので、ちょっと新鮮な気持ちで鑑賞しました。(METライブビューイングのも観てみたかったけど観られず)

喜劇と悲劇、軽快な楽しい歌、美しいアリア、宗教曲のような荘厳な曲がない交ぜの作品。

私が最初に鑑賞したのは十代のまだ幼い時で、純粋に楽しんだのですが、今回、いろいろ考えるところも多かったです。

 

ということで主にヴィジュアル面(演出、演技含む)の感想を。

「ヴィジュアルにうるさい」この私も納得、満足のキャストでした。
外国人中心の別キャストの方々の写真を観ても、ヴィジュアルにもこだわったキャスティングとお見受けしました。

 

ドンナ・アンナの高野さんは、正直なところ、歌唱面は発展途上という印象でしたが、とにかく舞台映えするヴィジュアルで、これから楽しみですね。

ツェルリーナという娘、前から小悪魔だと思っていたけど、小悪魔を通り越してとんでもない魔性の女だな、と今回思いました。そういう色気が小林さんにはありました。

マゼットの森さん、この方もなかなか舞台映えするいい男で、小林ツェルリーナが夫に決めたのもわかる感じ。

騎士長妻屋さんもさすが。出番か少ないながらビシッと締めて下さいました。大柄な方ですから、石像になっても威圧感がありました。

ドン・オッターヴィオ、この役はテノールなのにヒーローではなく、印象薄め、だけど大変なアリアが後半に待ちけているという役。城さんのオッターヴィオだと、ヒーローっぽくなるかな、と思いましたが、なんというか、ジョヴァンニとの対比というか、誠実、だけどつまらない、と思ってしまうオッターヴィオを好演されていました。

平野さんのレポレッロは、2012年の新国立劇場公演以来ですが、あの時と全く印象が違うレポレッロでした。むしろ今回のほうが若々しい。ドン・ジョヴァンニとは主従関係というより、友達みたいにも見えました。
平野さんは今後もいろんな役を観てみたいと思うオペラ役者さんです。

 

そしてタイトルロール、大西さんのドン・ジョヴァンニ。
いやぁとんでもない下衆野郎でしたわ。(←個人の感想)

ドン・ジョヴァンニって、確かに台本的にも極悪非道の男。
だけど、通常は「悪いやつだけど惹かれちゃう」「憎めないキャラ」だったりするのだけど、とことんヒドイ男でした。

悪役大好きの私ですが、悪い男というよりヒドイ男。

いくらダダ漏れするくらい色気と魅力(肉体と美声)が大西さんにあるからって、好き放題しやがって!
……と思うような演出でした。どこまでが演出家の指示かはわかりませんが。

 

そして、ドン・ジョヴァンニが下衆なだけに、一層哀れが引き立つのがドンナ・エルヴィーラ。

池田さんのエルヴィーラも観てみたかったですが。

一途にドン・ジョヴァンニを愛する役ですが、ストーバーさん、とにかくおきれいで歌も演技・動きも言うことなし。
今回ストーバーさんに対して拍手が一際大きかったのは納得出来ました。

外国人キャストというだけで、有り難みを感じるという人もいたかとも思いますし、19日から、休演日だった21日を除いて連続で23日まで歌われた労いの拍手というのも上乗せであったかもしれませんが、演技、存在感でも、この公演を牽引する存在でした。

ドン・ジョヴァンニが地獄に墜ちて悲しんでいるエルヴィーラを観てうるッとしてしまったもの。修道院など行かないで、あなたならもっと素敵な男性が現れるわよ、と言ってあげたくなった。


ということで、下衆でダーティな今回の「ドン・ジョヴァンニ」。

面白く観ましたし、希望に満ちた幕切れは、かなり好きでした。

が、このオペラシリーズは結構初心者の方やお子さんも観に来ています。

正直、行動や所作で(特にドン・ジョヴァンニの)、これはちょっと......、と思うところもありました。R15指定並レベルだったかも。

「悪いことをしたら地獄に墜ちる」ということだけでも心に残れば、それはいいのかもしれませんが。

出来ればもっとクリーンで楽しい演出のほうがいいのではないかなあと思ってしまいました。

 

       最終日だったので、売り切れのグッズなどもありましたが、最終日ならではの、こういうカーテンコールも見られました。

とにかく高いレベルの公演をお手頃価格で観られるというのは貴重なことですし、これからも多くの人を楽しませる舞台を作っていって欲しいと思います。

 

 


二期会「パルジファル」 その2 音楽編

2022-07-21 09:17:00 | オペラ
「パルジファル」の感想第2弾です。

まずグルネマンツの加藤宏隆さん、「魔弾の射手」のカスパールを観てから私の中の「お気に入りに追加」させていただいていたので楽しみでした。やっぱり好きな声! ワーグナーは初とのことですが、しっかり舞台を牽引していらっしゃいました。今後もいろんなワーグナーで聴きたいです。
山下浩司さんも貫禄のグルネマンツ。安心して聴けました。見た目が布袋さまかヱビス様か、とにかく、福々しいグルネマンツでした。

アムフォルタスの黒田博さん。 10年前の同役も印象的でしたが、今回も苦悩の王を好演! 苦しさが痛いくらいに伝わってきました。
来年のびわ湖「マイスタージンガー」ではベックメッサーを歌われるそうで……。
「ヴァルターよりザックスのほうがいいじゃん!」と思うことはよくありましたが、「ヴァルターよりベックメッサーのほうがいいじゃん!」になる予感。

B組の清水勇磨さんもとても良かったです! 豊かな声で、聴き応えがありました。これからバリトンの主要な役をどんどん歌われるのでしょうね。

ティトゥレルは大塚博章さんと清水宏樹さん。それぞれキャラがあって(といってもほぼゾンビなんだけど)興味深かった。声もいいし存在感を残しました。

ティトゥレルを歌うはずだった長谷川顯さん。
この公演直前に逝去されたとのことで、ショックでした。
トーキョーリングでは主要な役を歌われ、それこそフンディングやハーゲンではワクワクしました。ほんとうに多くの作品で楽しませていただきました。ご冥福お祈りいたします。


クンドリはびわ湖に続き田崎尚美さん。歌だけでなく、うめき声、叫びなど、もう本当にクンドリそのもの、という感じ。母であり魔女であり、最後は天使?
橋爪ゆかさん、10年前の二期会公演も、私が観た日のクンドリは橋爪さんでした。橋爪さんのほうが人間味があり、呪われた女の悲哀を感じました。

クルングゾルの門間信樹さん、パンフ等で名前とお顔は知っていましたが、実際観聴きしたのはたぶん初めて。舞台映えもするし、いいオペラ役者さんという感じ。声もいいし、今後楽しみです。
B組の友清崇さん、悪役マニアの私は一昨年の「フィデリオ」のピツァロからずっと注目していました。いっそう凄みが増してました~。これからもどんどん悪いヤツを歌って下さい!

そして題名役、パルジファル、A組の福井敬さんは、10年前、今春のびわ湖と聴いてきました。ソツがありません。声だけでなく、今回扮装有りだったので若々しく見えたし(1、2幕は錦織健さんに見えて仕方なかった)。
そしてB組の伊藤達人さん! 今回の一番の注目していたと言っていいでしょう。ところどころ若さは感じましたが、そういうところも役柄に合っていたし。これからどんどん経験を積んで、そのうち「ワーグナーと言ったら伊藤さん」と言われるようになるのでしょうね!
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/75c386082c52310e850b7ed59a67746b


その他聖杯の騎士、小姓たち、花の乙女たちで主に若手の方を中心とした実力派の皆さんが出演。
アデーレにオルロフスキー(清野友香利さん、郷家暁子さん)だわー、とか、スザンナにバルバリーナ(宮地江奈さん、雨笠佳奈さん)だわーとか思って観ていました。以前観た役とイメージの違う役で、皆さん好演、熱演。
第1の聖杯の騎士を歌ったお二人、西岡慎介さん、新海康仁さんは、他の役でも観てみたいと思いました。

二期会合唱団(三澤洋史さん合唱指揮)も、相変わらず感動させてくれました。


そしてセバスティアン・ヴァイグレ氏指揮の読響。過去の上演記録を観ても、国内のものは圧倒的に読響なんですね。パルジファル楽団? ヴァイグレ✕読響というだけで安心感がありました。
演奏は初日はちょっと「あれ?」というところもありましたが。2日目が一番良かったかな?

ただ、演奏の陶酔度ではびわ湖の沼尻✕京響が上だったかも。びわ湖ではオケがステージにいたのでダイレクトにその辺の緊張感なども伝わったからかもしれません。

今回、ヴァイグレ氏は胸から上がピットから上に出る高さで指揮していたため、パフォーマンスも込みで、とても楽しませていただきました。
タクトをゆーっくり下ろす様が見える(見せている?)ため、観客も拍手はじーっと我慢。初日のお客さんが一番我慢強かったですね。


今年になって計5日「パルジファル」を鑑賞したので、それまでの生鑑賞歴を(第3幕だけのマリインスキーオペラを含めても)越えたわけで、すっかり「パルジファル」が好きになりました。

https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a432edaf7aa4f9e149908403e6ac8bd2



初日の開演前、読響のメンバーによるファンファーレの演奏がありました!

二期会創立70周年記念公演 「パルジファル」その1 視覚編

2022-07-20 07:33:53 | オペラ
初日、2日目、千穐楽と観に行きました。それぞれ違う位置の席で。
前にも書いたのですが、ワーグナー大好きだけど「パルジファル」は優先順位は高くない作品でした。
基本的に元気な曲、全音階の曲が好きということもあり、FM放送を録音したテープやCDもいくつか持っているけれど、繰り返し聴くことがありませんでした。
上演回数も多くなく、BS等で放送された回数も多くなくないため、鑑賞回数自体も多くありません。

過去に私が生で観たのは2005年の日生劇場(東京シティフィルのオーケストラルオペラだったのか! とパンフの『上演史』を読んで改めて思った)、2012年の二期会、2014年の新国立劇場、今年のびわ湖だけで、完全な舞台公演は2回だけ。
びわ湖で2日間観賞してから、この作品に徐々にはまっていき、その後二つDVDで観てみました。そのうち、レヴァイン指揮、シェンク演出のメトの公演はかなりオーソドックスなものでした。

この作品に今一つ馴染めなかった理由。
「パルジファル」は舞台神聖祝典劇で、音楽も内容も宗教色が強い作品です。
正直、キリスト教に関する知識もなく、無宗教の私は、字幕を読みながら鑑賞しても「そう言われてもピンと来ない」と思うところも多く、別世界の話として観るしかない。リングなどの他の楽劇は別世界の話だけどストーリー性があって引き込まれますが。

今回の宮本亞門氏の演出は、台本を読み込んで「わかりやすく」、と考えられた演出ではないかと思いました。

「魔笛」ではプロジェクションマッピングを使い「舞台感」は薄かったけど、今回は、回り舞台、宙乗り、映像を駆使し、とにかく舞台で出来るいろいろなことを詰め込んだという感じでした。
出演者もですが、大道具係、小道具係、映像担当すべて大変だっただろうな、と。
実際に動かしているスタッフ、裏方さんは大忙しだったでしょう。
(初日のカーテンコールには宮本亞門氏と外国スタッフの皆さんも登場)

ワーグナー作品にありがちな長台詞(歌)の部分、間奏部分も飽きさず見せていたという印象です。

台本にはないサイドストーリーが前奏曲から展開するところ、猿が出てくるところなど、「魔笛」と重なる部分もあります。

夫に自殺された母と、母の女の部分を見てしまった少年の反発、苦悩、成長。 それをパルジファルと母・ヘルツェライデにリンクさせることによって馴染みのない世界が近くなったというか……。
ラストは、想像出来たけど、感動しました(なんと言っても音楽がねー、感動させる音楽だし)。

今回「パルジファル」を初めて観た人は戸惑った人も多かったようですが、 私レベルの鑑賞歴(初めてでないけど聴き込んでもいない)の人間にはヒットしたのかも知れません。

わかりやすい、ということはつまり情報量が多いので、「これはなくてもいいんじゃない?」というところも正直ありました。
例えば、昇天&天使の場面。宙乗りでない見せ方のほうが感動出来たのでは……。

随所に出てくる映像。 地球(宇宙?)に、核戦争を想起させるもの、最後はビッグバン的なもの…… 意味のある意図的なもの(世界の滅びと救済、再生?)なのだろうと思いますが、 そうなるとあまりにも世界が壮大になりすぎてしまって。
まあ、イメージ映像くらいの気持ちで観てもいいのでしょうが。

第2幕はトーキョーリングを彷彿ところが随所にあり、面白かったです。
鏡を使った場面では席によってはヴァイグレ氏だけでなく、プロンプターさんも見えた。

影を効果的に使ったり、装置の使い方も結構好きでした。 ティトゥレルの扱いも、私は納得。

演出に対する感想はそんな感じでしょうか。


並んだところは観ていないけど、初日の少年、福長里恩くんと2日目の近田聖くん(二人とも“くん”でいいんだよね?)、たぶん近田くんのほうがかなり背が高い。クンドリは田崎さんが大柄なのに対し橋爪さんは小柄。橋爪さんと近田くんはそんなに変わらなかった。 パルジファルとの兼ね合いで振り分けられたのでしょう。

観ていて、福長くんは子役時代の濱田龍臣くんを、また近田くんは子役時代の加藤清史郎くんを思い起こしました。
外国語のオペラ作品なんて、キッカケなども難しかったでしょうし、難しい役を演じた二人、本当にブラボー!ですね。 (福長くんは初日、時間の関係かカーテンコールに出られず残念でした)

また、母親役の白木原しのぶさん、複数の役柄で重要な役を演じた重松直樹さんをはじめ黙役の皆さんにもブラボーを言いたいです。

そして、第3幕のパルジファルの姿を観て。
私の記憶が確かならば、ですが、 マリインスキーオペラの来日公演の「リング」で、ジークフリート役の人が筋肉スーツを着ていた気がする。 新国立のジークムントもだったかな?
いやあ、タンクトップ姿になるなら、筋肉スーツもありかなあと思ってしまった。着けても失笑が起こらないくらいのナチュラルなやつ。

字幕は今回、広瀬大介さんと亞門さん監修とのことで、わかりやすくしてるな、と思いましたが、部分的にかえってわかりづらいところもあり……。字数が限られているから大変だと思うんですよ、特にワーグナー作品は。

いろいろと書きましたが、総合的に私はとても楽しみました!

でも10年前のグートの演出もまた見たくなったなあ。