あおこのぶろぐ

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二期会「メリー・ウィドー」を観て

2020-11-29 15:47:35 | オペラ
仕事が忙しく鑑賞出来なかった間に、オペラも規制有りの中ではありますが、かなり通常に近い形で上演されるようになって来ました。
11月26日、「メリー・ウィドー」を見ました。「フィデリオ」以来のオペラ鑑賞です。

訳詞上演。
オペレッタはミュージカルに近いもの、と考えると、日本語上演であるべき、と思っていました。
しかも「聴き慣れた」訳詞だったので、嬉しくなりました。
演出の都合上、あずまやがクロークになるなどしていたけど。
訳詞の上に字幕も(歌唱部分のみ)あったので、特に重唱の時はわかりやすくて良かったです。

二期会は以前からオペレッタにも力を入れており、立川清登さんや島田祐子さんが活躍されていたのは知っていました。

私が最初にこの作品に触れたのは、ウィーンフォルクスオーパーの来日公演をテレビで観て、です。

ペーター・ミニッヒとジークリット・マルティッケによる、ちょっとオトナのやりとりと、ヴァランシェンヌのメラニー・ホリディが鮮烈でした。

生で初めて観たのは1984年の二期会公演。
ちょうど立川さん島田さんたちからの“世代交代”の時期で、ダブルキャストの2日目、ハンナ役でデビューしたのが、「椿姫」のヴィオレッタ役も決まっていた佐藤しのぶさんでした。
待望のニュースターの登場、ということで、オペラ公演では異例ですが、ハンナが登場したシーンでは「待ってました」とばかりに、客席からも拍手が起こっていたのを覚えています。
「待ってました!」という声も上がったような気もする……定かではありませんが。



佐藤さんにはやはり圧倒的な“華”がありました。不世出のスターだったと思います。

その後佐藤さんがハンナを歌った88年の公演でカミーユを歌ったのが(デビューではなかったかもしれないけどデビューに近い感じだったと思います)、錦織健さんでした。
パリの色男を楽しそうに演じていたのを覚えています。
錦織さんはオペラ歌手を超えたエンターテイナーだと思います。

前の世代の立川さん島田さんもですが、佐藤しのぶさんと錦織健さんは、“オペラ歌手”をオペラファン以外に身近に感じさせた功労者だと思います。

今回の公演でダニロを演じた宮本益光さんは、言わば立川さん路線を継承するエンターテイナーと言っていいと思います。
様々な活動をされているし、歌も演技も達者!

今回他のキャストも全体的に若い世代の方が多く出演されていました。
ハンナの腰越満美さんはもはや貫禄。
ヴァランシェンヌの盛田麻央さんは来年のパミーナも決まっていると言うし、今後が楽しみですね。
カミーユの金山京介さん、タミーノも以前観ましたが、見栄えのいいテノールはいいですね~(朝ドラ『エール』のミュージックティーチャー御手洗に見えて仕方なかった)。

若手の方が多い中、ツェータ男爵の池田直樹さんを始め、加賀清孝さん峰茂樹さんなど、私が見始めた頃から歌っておられる方々も健在でいらして、嬉しくなりました。

ニェーグシュは俳優の山岸門人さん。なんとなく「おじさん」のイメージがあったニェーグシュですが、若い秘書官でコメディ要素をオーバー過ぎずに演じていました。

演奏は東京交響楽団、指揮は沖澤のどかさん。話題の沖澤さんの指揮ぶりを観聴き出来たのも良かったです。

演出は眞鍋卓嗣さん。
全体的に楽しめましたが、ヴァランシェンヌが扇子に書いた言葉を2幕と3幕の幕間に明らかにしたのは何故なのでしょう。
時間短縮のため?
扇子の件が、ストーリーの一つの肝でハラハラ部分要素なのに。
敢えてドタバタコメディ要素を捨て、主役二人のラブコメに焦点を合わせたかったのでしょうか?
「私は貞淑な人妻です」とヴァランシェンヌが読み上げる時のカミーユの表情も見どころ、と私は思っているので。
ロロとカミーユをくっつける感じも、しっくりこない。
「大人の事情」があったのかと邪推してしまいます。

「フィデリオ」から比べると、だいぶソーシャルディスタンス的に緩和された印象ですが、べったりくっついたり近距離で見つめ合って歌ったり、というのは極力避けられており、その代わりをダンサーカップルが表現しているという印象でした。

レハールの音楽とストーリーは本当に素晴らしいし(それだけに扇子のくだりの演出は納得いかないけれど)、「定番のオペレッタ公演」はあっていいと思うし、芸達者な歌手も多くいるので、定番化して定期的に上演して欲しいと思います。