あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

びわ湖ホールプロデュースオペラ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 その2

2023-03-09 17:57:18 | 日記

今回の公演、ステージングは粟國淳さん。

セミステージと言っても、オーケストラがステージにいて、装置がないだけで、普通にお芝居が展開されていました。
まず幕が開いて(幕はないんだけど)、今回「扮装あり」だったのでほっとしました。
昨年もさんざん書きましたが。それならパルジファルもローエングリンもサムソン(これは二期会公演)もそうして欲しかったと思う私。

もうこれだけ、普通にオペラが上演されるようになったので、フルステージで観たかったと思いますが、セミステージで良かったこと、それは、京響のハープ奏者・松村衣里さんが個人購入したというベックメッサーハープが演奏されるところがしっかり観られたところでしょう。

ベックメッサー黒田さんにいざなわれ、松村さんも一緒にカーテンコールに出ていらっしゃいました。
味わいがあるのですが、本当になんというか、ちょっと残念なベックメッサーにぴったりな音色で、今回の公演の肝だったと言えるでしょう! Brava!



演出の話に戻りますが、とてもわかりやすいものでした。
マイスターたちがそれぞれの仕事着で集まって来るのとか、シンプルでわかりやすい。

ただ、一つだけちょっと不満だったのが、第2幕の最後、大騒動の場面、合唱と親方達が舞台後方、オケの後ろで歌っていたけど、徒弟達と親方達は一緒に暴れて欲しかった。じゃないと、単にダーフィットがベックメッサーをやっつけているのをみんなが観ているだけ、という感じになってしまう。

でも不満と言えばその辺だけ。
ラストも王道で、良かったです。


演奏は、沼尻さんと京都市交響楽団。ちょっとだけ気になるところがなくもありませんでしたが、やはりレベルが高いです。
合唱はびわ湖ホール声楽アンサンブル(+客演)の皆さん。人数が少なめ+マスク有りだったこともあってか、「目覚めよ」のところとフィナーレの場面では正直物足りなさも感じました。

私が最初に観た1981年の二期会公演、字幕もない、知識もない、大筋しかわからなかった中で観た初めてのワーグナー作品でしたが、ものすごく感動しました。特に幕切れ、涙が出るくらい感動したのを覚えています。
あの時は合唱の人数も多く、本当に迫力ある大合唱で、ドーン!! と圧倒されたものです。

それに比べるとちょっと物足りなさは感じましたが、十分満足いたしました。

 

個人的なマイナス点。


びわ湖ホールは、サイドの席も、斜めに舞台側に向いていて、新国立劇場のように見にくくない。以前書いたように、フェンスからもかすかにではあるけれどステージも見える。初日(2日)はサイドの席だったのですが、見やすかった。いいホールだなあ、と思ったのですが。

2日目(5日)は1階席後方の席でした。

1階席の客席は、日生劇場等のように座席がずれているわけではありません。きれいに揃って配置されているし、段差もそんなにはありません。つまり、前の席に座高の高い人が来たら悲劇です。

小柄な人が座りますように、と祈りましたが、開演直前、前の席に座ったのが、座高が高く、大きな頭の人。

「指定席に座る時はそういうこともある」と受け入れようと思いましたが、その人がよく動く。

前半は何度も寝落ちしていて、そのまま寝てて! と願ったものの細かく目覚めて動く。そして傾く。

位置的に、大事なところが見えない。私も後ろの人を気にしながらも、見えないので傾かずにいられませんでした。席運的には最悪でした。消しゴムマジックで消したかった・・・。
おまけにその人、終演するなりカーテンコールも観ずに帰りました。下に配布されたパンフ等を置いたまま。本当に腹立たしかったけれど、おかげでカーテンコールだけは邪魔がなく見えました。


気を遣いながら変な姿勢をしたせいか、おかげで翌日、体の変なところが筋肉痛になっていました。
長いオペラ鑑賞歴の中でも最悪の経験でした。

にも関わらず公演に対する印象、感想は変わることはありません。素晴らしかったです。


来年同じ時期に、阪芸術監督指揮の「ばらの騎士」が予定されていて、これも魅力的なキャストなのですが、二期会「タンホイザー」と日程がかぶっており、辛いところ・・・。
もちろん両方行こうと思えば行けますが、いつもこの時期、田舎に行く用事と絡めていて予定を立てていたので、来年どうしようか、と悩んでいます。

ですがいずれにしても、びわ湖ホールにはまた絶対行きます!



会場で売っていた対訳を購入。
対訳は持っているけど、お安かったので買いました。資料的写真も載っていて、かなりお買い得でした♪

改めて読むと、とにかくセリフ量が多い。歌手の皆さんも大変だったでしょう。

しかしこれだけのセリフを書いて音楽をつけたワーグナーって・・・。天才というか変態というか・・・。


びわ湖ホールプロデュースオペラ「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 その1

2023-03-07 23:41:06 | 日記

沼尻竜典芸術監督のワーグナー10作品目、びわ湖での最後のオペラ指揮ということで、プログラムにも過去の上演記録が載っています。

3月の私のびわ湖遠征も今年で7年目。

以前描いたように、沼尻さんのワーグナー指揮作品は「トリスタンとイゾルデ」以外観ていましたが、それは同じプロダクションの公演が神奈川でもあったからです。
しかしリングからはびわ湖のみの公演となったので、「ラインの黄金」から遠征を始めたというわけです。


「マイスタージンガー」はもともと好きな作品だし、絶対行こうと決めていたので、発売初日にチケットを取ったのですが、公演日が近づいて改めてキャストを見てあまりの豪華キャストにビックリ。

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配役

ハンス・ザックス
青山貴

ファイト・ポーグナー
妻屋秀和

クンツ・フォーゲルゲザング
村上公太

コンラート・ナハティガル
近藤圭

ジクストゥス・ベックメッサー
黒田博

フリッツ・コートナー
大西宇宙

バルタザール・ツォルン
チャールズ・キム

ウルリヒ・アイスリンガー
チン・ソンウォン

アウグスティン・モーザー
高橋淳

ヘルマン・オルテル
友清崇

ハンス・シュヴァルツ
松森治

ハンス・フォルツ
斉木健詞

ヴァルター・フォン・シュトルツィング
福井敬

ダフィト
清水徹太郎

エファ
森谷真理

マグダレーネ
八木寿子

夜警
平野和

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特に、夜警が平野和さんって! なんて贅沢な!
平野さんは、新国立劇場でレポレッロを演じられたのを観て、日本人離れしたスケール感の演唱に衝撃を受け、それ以来注目していました。
少しの登場でしたが、存在感抜群でした。

マイスターたちもなんて豪華!

公演前の動画で各出演者がそれぞれの役について語っておられましたが、それらが感じられる役作りがかいまみえ楽しかったです。
特にモーザー役・高橋淳さん。演技派、個性派の高橋さん、今回も目が離せなかったです。

ポーグナーの妻屋さん、ほんとにもう、間違いない! 「エーファのお父さん」をやや存在感を消して演じていらっしゃいました。

大西さんのコートナー、思った通りよく通る声で歌われ、茶目っ気もあるコートナーでした。1981年の二期会公演でコートナーを歌われた大島幾雄さんも朗々とした声で印象深いですが、大島さんを思い出しました。初日(2日)は歌の教則のところでおまけ歌唱も。

ヴァルターは福井さん。理想のヴァルターかというと、うーん、となってしまいますが、今日本でこれだけ歌えるテノールはそうはいないでしょう。日本人でなくても、本当に満足できる(=そりゃあエーファが惚れちゃうよねえ、と思える)ヴァルターは、そうはいない。私が観た限り、2013年東京春祭のフォークト様くらいでした。

2021年にローエングリンを歌う予定だったチャールズ・キムさんが今回ツォルン役。ちょっともったいない感じ。ヴァルターのカヴァーだったそうですが、彼のヴァルターも聴いてみたかったです。

エーファの森永さん、やっぱりすごい。夜の女王とはうって変わって、かわいい「乙女な」エーファを好演。世界に誇りたいソプラノです!

マグダレーネの八木さん、私はびわ湖で初めて聴いたのですが、聴くたびステージが上がっている印象ですね。

ダーフィットの清水さん、まさにびわ湖の一番星という感じですが、今回もチャーミングなダーフィットを好演。
ただ、ですね、一昨年の新国立劇場の伊藤達人さんが風貌から何からピッタリはまっていたので、若干印象は薄くなってしまいました。

そしてザックス・青山さん。第1幕、多士済々のマイスターたちが入ってきて目を奪われている時に最後に入って来る姿は、正直影が薄く見えたけと、一声発したら存在感抜群。包容力あふれるザックスの声!
慈愛に満ち、時に意地悪に、時にヤケになる人間的なザックスでした。
登場シーンも多く、大変だったと思いますが、本当にブラボー! でした。

そしてその難役を21年前に歌った黒田さんが今回はベックメッサー!
黒田さんがベックメッサーを演じると知り、「ヴァルターよりザックスがいいじゃん」と思うことはよくありますが、「ヴァルターよりベックメッサーがいいじゃん!」になるんじゃないかと思いました。が、そう思わせないところがさすが。
見た目ではないかっこ悪さ。イタい、残念なおじさんを好演されていました。
ザックスの時はとってもかっこ良かったんですよ! とみんなに知らせたい。
カーテンコールでも、ザックスの後輩、青山さんを「先に行け」というように背中を押したり、主役ではないけれど、黒田さんがステージを牽引している印象でした。

 

休憩中、琵琶湖の向こう側にかすくに見えた虹。ラインの黄金を思い浮かべました。