私自身、約3ヶ月ぶりのオペラ鑑賞。
そしてこのオペラシリーズを観るのは2018年の「魔弾の射手」以来。
毎年演目・キャストはチェックしていますが、なかなか東京から簡単には遠征出来ません。
ですが、今年の公演チラシを見て
「大西宇宙さんのドン・ジョヴァンニ! 平野和さんのレポレッロ! 妻屋秀和さんの騎士長! 池田香織さんのエルヴィーラ! 城宏憲さんのオッターヴィオ! 観るしかないでしょ!!」
このブログでも度々書かせて戴いている注目、推しの方々が勢揃い、という感じなのですから。
で、何とかやりくりして、行けそうなのは最終日。
というわけで、田舎行きを絡ませ予定を立て、7/23、大千穐楽に行って参りました。
残念だったのは、池田さんが20日の公演から休演されたことです。
というわけで、エルヴィーラはダブルキャストのハイディ・ストーバーさんが歌いました。
ドンナ・アンナは高野百合絵さん、
ツェルリーナは小林沙羅さん、
マゼットは森雅史さん。
音楽面で不満はありません。
演奏がややゆっくりめで、終演予定時間が遅くなったため、帰りのバスを遅い便に買い換えることになったので、困ったことと言えばそれくらい。
この作品を鑑賞するのも久しぶりだったので、ちょっと新鮮な気持ちで鑑賞しました。(METライブビューイングのも観てみたかったけど観られず)
喜劇と悲劇、軽快な楽しい歌、美しいアリア、宗教曲のような荘厳な曲がない交ぜの作品。
私が最初に鑑賞したのは十代のまだ幼い時で、純粋に楽しんだのですが、今回、いろいろ考えるところも多かったです。
ということで主にヴィジュアル面(演出、演技含む)の感想を。
「ヴィジュアルにうるさい」この私も納得、満足のキャストでした。
外国人中心の別キャストの方々の写真を観ても、ヴィジュアルにもこだわったキャスティングとお見受けしました。
ドンナ・アンナの高野さんは、正直なところ、歌唱面は発展途上という印象でしたが、とにかく舞台映えするヴィジュアルで、これから楽しみですね。
ツェルリーナという娘、前から小悪魔だと思っていたけど、小悪魔を通り越してとんでもない魔性の女だな、と今回思いました。そういう色気が小林さんにはありました。
マゼットの森さん、この方もなかなか舞台映えするいい男で、小林ツェルリーナが夫に決めたのもわかる感じ。
騎士長妻屋さんもさすが。出番か少ないながらビシッと締めて下さいました。大柄な方ですから、石像になっても威圧感がありました。
ドン・オッターヴィオ、この役はテノールなのにヒーローではなく、印象薄め、だけど大変なアリアが後半に待ちけているという役。城さんのオッターヴィオだと、ヒーローっぽくなるかな、と思いましたが、なんというか、ジョヴァンニとの対比というか、誠実、だけどつまらない、と思ってしまうオッターヴィオを好演されていました。
平野さんのレポレッロは、2012年の新国立劇場公演以来ですが、あの時と全く印象が違うレポレッロでした。むしろ今回のほうが若々しい。ドン・ジョヴァンニとは主従関係というより、友達みたいにも見えました。
平野さんは今後もいろんな役を観てみたいと思うオペラ役者さんです。
そしてタイトルロール、大西さんのドン・ジョヴァンニ。
いやぁとんでもない下衆野郎でしたわ。(←個人の感想)
ドン・ジョヴァンニって、確かに台本的にも極悪非道の男。
だけど、通常は「悪いやつだけど惹かれちゃう」「憎めないキャラ」だったりするのだけど、とことんヒドイ男でした。
悪役大好きの私ですが、悪い男というよりヒドイ男。
いくらダダ漏れするくらい色気と魅力(肉体と美声)が大西さんにあるからって、好き放題しやがって!
……と思うような演出でした。どこまでが演出家の指示かはわかりませんが。
そして、ドン・ジョヴァンニが下衆なだけに、一層哀れが引き立つのがドンナ・エルヴィーラ。
池田さんのエルヴィーラも観てみたかったですが。
一途にドン・ジョヴァンニを愛する役ですが、ストーバーさん、とにかくおきれいで歌も演技・動きも言うことなし。
今回ストーバーさんに対して拍手が一際大きかったのは納得出来ました。
外国人キャストというだけで、有り難みを感じるという人もいたかとも思いますし、19日から、休演日だった21日を除いて連続で23日まで歌われた労いの拍手というのも上乗せであったかもしれませんが、演技、存在感でも、この公演を牽引する存在でした。
ドン・ジョヴァンニが地獄に墜ちて悲しんでいるエルヴィーラを観てうるッとしてしまったもの。修道院など行かないで、あなたならもっと素敵な男性が現れるわよ、と言ってあげたくなった。
ということで、下衆でダーティな今回の「ドン・ジョヴァンニ」。
面白く観ましたし、希望に満ちた幕切れは、かなり好きでした。
が、このオペラシリーズは結構初心者の方やお子さんも観に来ています。
正直、行動や所作で(特にドン・ジョヴァンニの)、これはちょっと......、と思うところもありました。R15指定並レベルだったかも。
「悪いことをしたら地獄に墜ちる」ということだけでも心に残れば、それはいいのかもしれませんが。
出来ればもっとクリーンで楽しい演出のほうがいいのではないかなあと思ってしまいました。
最終日だったので、売り切れのグッズなどもありましたが、最終日ならではの、こういうカーテンコールも見られました。
とにかく高いレベルの公演をお手頃価格で観られるというのは貴重なことですし、これからも多くの人を楽しませる舞台を作っていって欲しいと思います。