あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

二期会「パルジファル」 その2 音楽編

2022-07-21 09:17:00 | オペラ
「パルジファル」の感想第2弾です。

まずグルネマンツの加藤宏隆さん、「魔弾の射手」のカスパールを観てから私の中の「お気に入りに追加」させていただいていたので楽しみでした。やっぱり好きな声! ワーグナーは初とのことですが、しっかり舞台を牽引していらっしゃいました。今後もいろんなワーグナーで聴きたいです。
山下浩司さんも貫禄のグルネマンツ。安心して聴けました。見た目が布袋さまかヱビス様か、とにかく、福々しいグルネマンツでした。

アムフォルタスの黒田博さん。 10年前の同役も印象的でしたが、今回も苦悩の王を好演! 苦しさが痛いくらいに伝わってきました。
来年のびわ湖「マイスタージンガー」ではベックメッサーを歌われるそうで……。
「ヴァルターよりザックスのほうがいいじゃん!」と思うことはよくありましたが、「ヴァルターよりベックメッサーのほうがいいじゃん!」になる予感。

B組の清水勇磨さんもとても良かったです! 豊かな声で、聴き応えがありました。これからバリトンの主要な役をどんどん歌われるのでしょうね。

ティトゥレルは大塚博章さんと清水宏樹さん。それぞれキャラがあって(といってもほぼゾンビなんだけど)興味深かった。声もいいし存在感を残しました。

ティトゥレルを歌うはずだった長谷川顯さん。
この公演直前に逝去されたとのことで、ショックでした。
トーキョーリングでは主要な役を歌われ、それこそフンディングやハーゲンではワクワクしました。ほんとうに多くの作品で楽しませていただきました。ご冥福お祈りいたします。


クンドリはびわ湖に続き田崎尚美さん。歌だけでなく、うめき声、叫びなど、もう本当にクンドリそのもの、という感じ。母であり魔女であり、最後は天使?
橋爪ゆかさん、10年前の二期会公演も、私が観た日のクンドリは橋爪さんでした。橋爪さんのほうが人間味があり、呪われた女の悲哀を感じました。

クルングゾルの門間信樹さん、パンフ等で名前とお顔は知っていましたが、実際観聴きしたのはたぶん初めて。舞台映えもするし、いいオペラ役者さんという感じ。声もいいし、今後楽しみです。
B組の友清崇さん、悪役マニアの私は一昨年の「フィデリオ」のピツァロからずっと注目していました。いっそう凄みが増してました~。これからもどんどん悪いヤツを歌って下さい!

そして題名役、パルジファル、A組の福井敬さんは、10年前、今春のびわ湖と聴いてきました。ソツがありません。声だけでなく、今回扮装有りだったので若々しく見えたし(1、2幕は錦織健さんに見えて仕方なかった)。
そしてB組の伊藤達人さん! 今回の一番の注目していたと言っていいでしょう。ところどころ若さは感じましたが、そういうところも役柄に合っていたし。これからどんどん経験を積んで、そのうち「ワーグナーと言ったら伊藤さん」と言われるようになるのでしょうね!
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/75c386082c52310e850b7ed59a67746b


その他聖杯の騎士、小姓たち、花の乙女たちで主に若手の方を中心とした実力派の皆さんが出演。
アデーレにオルロフスキー(清野友香利さん、郷家暁子さん)だわー、とか、スザンナにバルバリーナ(宮地江奈さん、雨笠佳奈さん)だわーとか思って観ていました。以前観た役とイメージの違う役で、皆さん好演、熱演。
第1の聖杯の騎士を歌ったお二人、西岡慎介さん、新海康仁さんは、他の役でも観てみたいと思いました。

二期会合唱団(三澤洋史さん合唱指揮)も、相変わらず感動させてくれました。


そしてセバスティアン・ヴァイグレ氏指揮の読響。過去の上演記録を観ても、国内のものは圧倒的に読響なんですね。パルジファル楽団? ヴァイグレ✕読響というだけで安心感がありました。
演奏は初日はちょっと「あれ?」というところもありましたが。2日目が一番良かったかな?

ただ、演奏の陶酔度ではびわ湖の沼尻✕京響が上だったかも。びわ湖ではオケがステージにいたのでダイレクトにその辺の緊張感なども伝わったからかもしれません。

今回、ヴァイグレ氏は胸から上がピットから上に出る高さで指揮していたため、パフォーマンスも込みで、とても楽しませていただきました。
タクトをゆーっくり下ろす様が見える(見せている?)ため、観客も拍手はじーっと我慢。初日のお客さんが一番我慢強かったですね。


今年になって計5日「パルジファル」を鑑賞したので、それまでの生鑑賞歴を(第3幕だけのマリインスキーオペラを含めても)越えたわけで、すっかり「パルジファル」が好きになりました。

https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a432edaf7aa4f9e149908403e6ac8bd2



初日の開演前、読響のメンバーによるファンファーレの演奏がありました!

二期会創立70周年記念公演 「パルジファル」その1 視覚編

2022-07-20 07:33:53 | オペラ
初日、2日目、千穐楽と観に行きました。それぞれ違う位置の席で。
前にも書いたのですが、ワーグナー大好きだけど「パルジファル」は優先順位は高くない作品でした。
基本的に元気な曲、全音階の曲が好きということもあり、FM放送を録音したテープやCDもいくつか持っているけれど、繰り返し聴くことがありませんでした。
上演回数も多くなく、BS等で放送された回数も多くなくないため、鑑賞回数自体も多くありません。

過去に私が生で観たのは2005年の日生劇場(東京シティフィルのオーケストラルオペラだったのか! とパンフの『上演史』を読んで改めて思った)、2012年の二期会、2014年の新国立劇場、今年のびわ湖だけで、完全な舞台公演は2回だけ。
びわ湖で2日間観賞してから、この作品に徐々にはまっていき、その後二つDVDで観てみました。そのうち、レヴァイン指揮、シェンク演出のメトの公演はかなりオーソドックスなものでした。

この作品に今一つ馴染めなかった理由。
「パルジファル」は舞台神聖祝典劇で、音楽も内容も宗教色が強い作品です。
正直、キリスト教に関する知識もなく、無宗教の私は、字幕を読みながら鑑賞しても「そう言われてもピンと来ない」と思うところも多く、別世界の話として観るしかない。リングなどの他の楽劇は別世界の話だけどストーリー性があって引き込まれますが。

今回の宮本亞門氏の演出は、台本を読み込んで「わかりやすく」、と考えられた演出ではないかと思いました。

「魔笛」ではプロジェクションマッピングを使い「舞台感」は薄かったけど、今回は、回り舞台、宙乗り、映像を駆使し、とにかく舞台で出来るいろいろなことを詰め込んだという感じでした。
出演者もですが、大道具係、小道具係、映像担当すべて大変だっただろうな、と。
実際に動かしているスタッフ、裏方さんは大忙しだったでしょう。
(初日のカーテンコールには宮本亞門氏と外国スタッフの皆さんも登場)

ワーグナー作品にありがちな長台詞(歌)の部分、間奏部分も飽きさず見せていたという印象です。

台本にはないサイドストーリーが前奏曲から展開するところ、猿が出てくるところなど、「魔笛」と重なる部分もあります。

夫に自殺された母と、母の女の部分を見てしまった少年の反発、苦悩、成長。 それをパルジファルと母・ヘルツェライデにリンクさせることによって馴染みのない世界が近くなったというか……。
ラストは、想像出来たけど、感動しました(なんと言っても音楽がねー、感動させる音楽だし)。

今回「パルジファル」を初めて観た人は戸惑った人も多かったようですが、 私レベルの鑑賞歴(初めてでないけど聴き込んでもいない)の人間にはヒットしたのかも知れません。

わかりやすい、ということはつまり情報量が多いので、「これはなくてもいいんじゃない?」というところも正直ありました。
例えば、昇天&天使の場面。宙乗りでない見せ方のほうが感動出来たのでは……。

随所に出てくる映像。 地球(宇宙?)に、核戦争を想起させるもの、最後はビッグバン的なもの…… 意味のある意図的なもの(世界の滅びと救済、再生?)なのだろうと思いますが、 そうなるとあまりにも世界が壮大になりすぎてしまって。
まあ、イメージ映像くらいの気持ちで観てもいいのでしょうが。

第2幕はトーキョーリングを彷彿ところが随所にあり、面白かったです。
鏡を使った場面では席によってはヴァイグレ氏だけでなく、プロンプターさんも見えた。

影を効果的に使ったり、装置の使い方も結構好きでした。 ティトゥレルの扱いも、私は納得。

演出に対する感想はそんな感じでしょうか。


並んだところは観ていないけど、初日の少年、福長里恩くんと2日目の近田聖くん(二人とも“くん”でいいんだよね?)、たぶん近田くんのほうがかなり背が高い。クンドリは田崎さんが大柄なのに対し橋爪さんは小柄。橋爪さんと近田くんはそんなに変わらなかった。 パルジファルとの兼ね合いで振り分けられたのでしょう。

観ていて、福長くんは子役時代の濱田龍臣くんを、また近田くんは子役時代の加藤清史郎くんを思い起こしました。
外国語のオペラ作品なんて、キッカケなども難しかったでしょうし、難しい役を演じた二人、本当にブラボー!ですね。 (福長くんは初日、時間の関係かカーテンコールに出られず残念でした)

また、母親役の白木原しのぶさん、複数の役柄で重要な役を演じた重松直樹さんをはじめ黙役の皆さんにもブラボーを言いたいです。

そして、第3幕のパルジファルの姿を観て。
私の記憶が確かならば、ですが、 マリインスキーオペラの来日公演の「リング」で、ジークフリート役の人が筋肉スーツを着ていた気がする。 新国立のジークムントもだったかな?
いやあ、タンクトップ姿になるなら、筋肉スーツもありかなあと思ってしまった。着けても失笑が起こらないくらいのナチュラルなやつ。

字幕は今回、広瀬大介さんと亞門さん監修とのことで、わかりやすくしてるな、と思いましたが、部分的にかえってわかりづらいところもあり……。字数が限られているから大変だと思うんですよ、特にワーグナー作品は。

いろいろと書きましたが、総合的に私はとても楽しみました!

でも10年前のグートの演出もまた見たくなったなあ。