あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

もどかしい! セリフなしの神奈川県民ホール「魔笛」(3月18日)

2017-03-19 08:34:53 | 日記
昨年も書きましたが、神奈川県民ホールでのオペラはお安く楽しめるので今年も観に行きました。

勅使河原三郎演出、川瀬賢太郎指揮で、装置無し、舞台上からぶら下がった環と照明、それにダンサー(東京バレエ団)の動きにより場面を表現、原語上演、セリフ無し、ダンサー(佐東利穂子)による日本語ナレーションで舞台が進行されます。
ドイツ語のセリフじゃ伝わりにくいと思ったのかもしれないけど、原語上演で日本語セリフという公演も過去にあったし、ナレーションにしないほうが良かったのでは、と私は思いました。
観客にはオペラ初心者の方も多かったと思われ、ビギナーにはわかりやすかった部分もあるかもしれませんが、魔笛という作品の魅力が充分伝わったかどうかはちょっと疑問です。

「魔笛」はジングシュピール(音楽劇)。セリフがないと、なんてもどかしいことか!
コメディ要素を引き受けるパパゲーノ役の宮本益光さんは、セリフ無しでその役割を動きと表情で表現していましたが、全体的にもの足りなさを感じてしまいました……。
歌手陣のヴィジュアルと歌は悪くなかったのですが……。

過去に生や映像で古今東西、様々な「魔笛」を観てきたけれど、私が今まで観た中で一番好きなのは、BSプレミアムで観たバーデンバーデン復活祭のサイモン・ラトル指揮、ロバート・カーセン演出のものでした。
「魔笛」のストーリーの疑問点 をうまくまとめた設定、細やかな演出で、出演者のヴィジュアルも申し分なく、ラストは感動しました。
今でも時々観ています。

その次のお気に入りの「魔笛」は、宮本亜門演出、リンツ州立劇場との共同制作の二期会公演です。
宮本演出のオペラはいくつか観ていますが、必ずしも私の好みではなかったのですが、これは気に入りました。
序曲からワクワクさせてくれました。

それらに比べると、私は今回の公演はフラストレーションが溜まりました。
バレエとオペラの融合、演技付き演奏&演舞会というなら良かったのですが、総合芸術としてオペラを楽しみたい私の好みでは、ありませんでした。
モーツァルトの音楽は素晴らしいけど、セリフがあっての「魔笛」だな、と再認識した公演でした。

びわ湖ホールプロデュースオペラ「ラインの黄金」 3月5日

2017-03-06 21:33:32 | 日記
びわ湖ホールの公演には惹かれるものが多く、いつか行きたいと思っていましたが、スケジュールの都合で今まで機会がありませんでした。
今回無理矢理「ついで」を作って、大津まで行って来ました。

ワーグナー好きの私、中でも「ニーベルングの指環」は特に好きで、東京で行われる公演には可能な限り観に行ってました。
ワーグナー作品の中でも一番「観たい」、つまり「どんな演出なのか観てみたい」のが「リング」だからです。
その中でも、侏儒の世界や巨人族、川中を泳ぐ乙女たちが登場する「ラインの黄金」は、特にどんな演出になるのか興味津々の作品です。
プログラムによると、演出のミヒャエル・ハンペ氏は「不思議で超自然的な場面に、何とか適切な解決策を見つけようと格闘するのは、われわれ『びわ湖』の演出チームが最初でも最後でもない」と語ったそうで、苦労を重ねたことが伺われます。

実際、これほど台本に忠実に視覚化した舞台は珍しいかもしれません。多少無理があるところもありましたがそれはある程度仕方ない(ミーメ、デカいじゃん、なんて思ってはいけないのです)。

最新の技術を使っているのですが、「初演の時はこんな感じだったのではないか」と思わせるクラシカルな舞台(美術・衣裳、ヘニング・フォン・ギールケ氏)、台本と 楽譜が読み込んだことがよくわかる演出でした。ノートゥングが出て来たところなんか、「ほう」と思いました。

リングの演出と言うと、私はキース・ウォーナーの「トーキョーリング」が大好きなのだけど、王道の中の王道を行くこの演出もかなり気に入りました。
リング初心者の人にもわかりやすかったんじゃないかな。
2日間の公演で終わるなんてもったいない!

一つだけ残念に思ったのは、ラストの場面で曲が終わる前に幕が降りるため、幕が降り初めてから拍手が始まってしまったこと。
音楽が終わってから暗転、のほうが余韻を楽しめたような気がします。
(昨年のティーレマン指揮のドレスデンの来日公演は本当に素晴らしく、ティーレマンが動くまでの静寂、その後の喝采にはゾクゾクしたものです)

歌手の方々も皆さん良かったです。
ヴォータンの青山貴さん、今までニアミス(?  Wキャストの別の組を観たりしていた)で初めて聴きましたが、いい声でヴォータンらしかったです。
黒田博さん(ドンナー)、福井敬さん(フロー)というベテランが安心と信頼の演唱を聴かせてくれました。
昨年二期会の「トリスタンとイゾルデ」で素敵なイゾルデを聴かせて下さった池田香織さんのエルダ、すっかり貫禄が出て来た谷口睦美さんのフリッカもお見事でした。
ミーメの高橋淳さんもクセ者をやらしたら日本一!?
ローゲの清水徹太郎さんもいい味出してました(カズレーザーに見えて仕方なかったけど)。
ファゾルトの片桐直樹さん、ファーフナーのジョン・ハオさんの巨人族、カーテンコールでは「分裂」して登場したけど、下半身のお二方も含め皆さん本当にお疲れ様でした。
関西二期会の片桐さん、初めて聴きましたが、存在感ありました。
アルベリヒ(志村文彦さん)も健闘、フライア(森谷真理さん)、ラインの乙女たち(小川里美さん、森季子さん、中島郁子さん)も好演。

指揮の沼尻竜典さん、京都市交響楽団も素晴らしかったです。
去年ティーレマンの「ライン・・・」を聴いちゃったからなあ、と思っていましたが、視覚的・聴覚的トータルで満足度は高く、とても楽しむことが出来ました。

これだけの公演を作り上げるびわ湖ホールに、改めてブラヴォーと言いたいです。
びわ湖リングに30万円以上寄付した人にギールケ氏お手製のリング(限定10個)プレゼントという試みもとてもいいと思います。
お金があったら寄付したいですが、残念ながら無理……(>_<)