あおこのぶろぐ

オペラ、テレビ、日常など、気が向いたときに書いていきます!

22年ぶり・二期会「タンホイザー」その2

2021-02-22 22:39:28 | 日記
二期会の「タンホイザー」は88年、99年も観ています。
22年振りですか……。
22年前は、ストーリーとリンクするようなことが実生活であったので、感慨深く思い出しています。

「タンホイザー」を観る度起こる、「何故エリーザベトはウォルフラムを選ばなかったのか?」問題。今回はあまりそう思わなかったです。

というのも初日、大沼ウォルフラムは冴えない、下手するとストーカー? みたいで、魅力的過ぎないウォルフラムを好演していました。
そして2日目。清水ウォルフラムは典型的な「いやあ、いい人なんだけどねぇ」という感じで(堤下敦に見えてしまった……)、そういう意味ではピッタリでした。

歌の印象。
初日はなんといっても大沼徹さん。安定していました。やっぱり、ピツァロよりウォルフラムのほうが合ってると思う。

タンホイザーの片寄純也さん、最初はちょっと堅いというか不安定な感じでしたが、第3幕は良かった!(時折野田クリスタルに見えて仕方なかったけど)

田崎尚美さんのエリーザベトは、とにかくタンホイザーが好きで好きで仕方ない、という乙女の表情が良く出ていて、歌合戦の場も、タンホイザーの声にだけに心を開くという感じでした。歌も役にピッタリで良かったです。

板波利加さんのヴェーヌスも、魔母感たっぷり。
余談ながらヴェーヌスの髪の毛を見てナポリタンを食べたくなり、2日目の開演前、上野の純喫茶でナポリタンを戴きました!
(純喫茶巡りも好きなのです)


2日目。
タンホイザーは、初タイトルロールという芹澤佳通さん、いい声だし、健闘していたのだけれど、個人的には、タンホイザーってちょっと粘り気のある声のイメージなので、私はちょっと違和感を覚えました。

エリーザベトの竹多倫子さんもとても豊かないい声なのだけど、発音的にも主役二人のシーンは「イタリアオペラ」っぽい気がしてしまいました。
竹多さんは、第3幕の巡礼の合唱の時の必死感~絶望感はよく現れていて、「祈り」も胸を打ちました。 

ヴェーヌスがの池田香織さん、私の印象では、「母感」のあった板波さんに比べ、「女感」が強かったように思いました。歌唱はさすがの圧倒的な存在感! 魅せて聴かせてくれました。 来月のブリュンヒルデも楽しみです。

ウォルフラムの清水勇磨さん、歌はものすごく2枚目で、とても良かった! 私は初めて聴きましたが、一声で惹きつけられました。今後注目です。

ヘルマンは初日の狩野賢一さんは、いい声でしたが、若過ぎる印象、2日目長谷川顯さんはいい感じの枯れ感を醸し出していて、役にピッタリ。

男くさいのが好きな私は、第1幕の後半は好物ですが、騎士の皆さん(初日・・・大川信之さん、友清崇さん菅野敦さん、河野鉄平さん、2日目・・・高野二郎さん、近藤圭さん、高柳圭さん、金子慧一さん)両日とも良かったです(特に初日ビテロルフ・友清さん、2日目ヴァルター・高野さんは声が好きなので、注目してました♪)。

牧童のお二人(吉田桃子さん、牧野元美さん)も良かったし、合唱の聴かせどころの多いこの作品、二期会合唱団(特に男声)、素晴らしかったです!

しばらくは、カーテンコールで「ブラヴォー!」を聞くことはないのでしょう。残念、としみじみ思いましたが、一部の人の執拗なブーイングもないのは、いいのかな、とも思ったりして。

最後のカーテンコールでは、「もう一人のエリーザベト」も登場されていました。
ラストシーン、皆さんの書き込みを読むと、二人(天に昇るタンホイザーと迎えにいくエリーザベト)が手を握るのは2日目だけだった?
手を握らないほうがオリジナルなのかな?

ちなみに以前ブログに書いたヴェーヌスの最後の一声、
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/a90f8f9ccc07b9b4e32448233b33af42
今回の字幕は岩下久美子さんということで、「私の負けね」でした♪
やっぱりこちらのほうがしっくり来るなあ。


キース・ウォーナー原演出 二期会「タンホイザー」その1

2021-02-20 21:32:01 | 日記
二期会「タンホイザー」、初日(2/17)と2日目(2/18)に行きました。

東京文化会館に行ったのは、去年の春祭が中止になったので、考えてみれば一昨年6月の「サロメ」以来。
公園口があんなふうになっていたなんて! びっくりでした。


まず演出。
「トーキョー・リング」が大好きな私にとって、楽しみだったウォーナーの演出。

いくつかトーキョー・リングを彷彿とさせる場面がありました。
映像の使い方や、登場人物がスクリーン・舞台を見ているところとかもそうだし、
ヴェーヌスベルクの場面、ソファーベッドを持って動き回る場面などは、ヴァルハラ、つまりストレッチャーを動かすワルキューレたちを想起させられました。

トーキョー・リングに嫌悪感を抱いた人もおられたようだけど、装置と衣装は結構ぶっ飛んでいても、演出そのものは、台本・ストーリーと音楽に忠実だったと思います。
時代設定こそ、フィルムや電子レンジが出てくるなど現代風だったけど、いわゆる流行りの「読み替え」演出とは違う。
ストーリーの、結構細かいところまで具体化しているというか。

今回の「タンホイザー」もとてもわかりやすく、ある意味台本通りに作られていたと思います。

ラストシーンは「そう来たか!」と思いました。
初日は二人の手があと少しで届きそうなところで終わったけど、2日目はがっちり握って終わった。
握るほうが本来の演出だったのかな。

椅子の使い方は印象的だし、鏡の使い方もうまい。全体的にきれいな舞台でした。
出て来た子供は誰? というのが謎のままだけど、私は深く考えず、ヴェーヌスの母性を示すアイテムと解釈しています。

舞台in舞台が奥のほうにあったため、歌手の方々は大変だっただろうと思うけど、うまく使われていました。

余談ながら、ヴォルフラムが舞台で歌う時、譜面台をどかすシーンがあったのだけど、春祭のラング姐さんを思い出しちゃいました。https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/ab0f66c5ec119041df97e93aba5ffe97

全体的に好きな演出でした。
難点を言えば、ホモキの「フィガロ」と違い、おそろく席によっては死角があり、見えない部分があったと思われることですね(今回私は一階席だったから良かったですが)。

コロナがなくても、ウォーナーは来なかったのかな?
演出補のドロテア・キルシュバウムさんのリモートカーテンコールも良かったです。

舞台上も大いに気に入りましたが、つい目が行っちゃったのは、指揮のセバスティアン・ヴァイグレですね。
アクセル・コーバーを聴けなかったのは残念ですが、読響との安定感もバッチリで音楽面は文句なし!
な上に、長身でいらっしゃるから肩から上がピットから見えており、時々笑顔を見せながら振る様がよく見え、癒やされました。
指揮中はマスクしておられなかったけど、エアロゾルは大丈夫かしら。どうかご安全に!

 

オペラを観られる幸せ 緊急事態宣言下の新国立劇場「フィガロの結婚」

2021-02-12 23:42:14 | 日記
約1年ぶりの新国立劇場の主催公演鑑賞です(2月9日鑑賞)。
アンドレアス・ホモキのこのプロダクションは何度も上演されていますが、私は初めて観ました。
(自分でもびっくり)

これだけ何回も上演されるのは、シンプルなセットで低予算ということもあるのかな?
どの席からも死角がほぼないのはとてもいいと思います。
影の使い方や舞台前方の、いわゆる装置の箱の外の使い方など、「なるほど」と思うところはあり、興味深くはありましたが、これは「上級編の演出」という気がしました。

多くの観客はこのオペラを「何度も」か「何度か」は観ていてストーリーを知っていると思いますが、初心者にはわかりにくいのでは?
装置(セット)が段ボール箱のみで、「隠れてるのか見えているのかわからない」というようなところもあり、ドタバタしているわりに笑えないというか。
(コメディは、「わかっていても笑いたい」タイプなので)

ソーシャルディスタンスの関係で今回変わったところもあるのかも知れませんが。
第一幕のケルビーノが隠れるシーン、伯爵が見つけるところがまず笑いどころだけど、ちょっと無理があったし。

それと字幕。
原語上演なら字幕+演技で笑わせるところは笑わせられるはずなのに、少なかった。

字幕はずいぶんはしょってるなという印象。
それに、プログラムには「初夜権」と書いてあるのに字幕では「領主権」となっている。領主権ってどういう権利か少々わかりにくい。
U-25のお客さんを意識して? など、色々な制限はあるのでしょうが。

私は以前書いたウィーン国立歌劇場の来日公演をテレビで観たのが人生初フィガロだったので、それがベースになっています。
https://blog.goo.ne.jp/aokohime/e/7b0ed672100e71840f09eade619ef280

とてもオーソドックス、古典的と言ってもいい演出でした(ヘルゲ・トマ演出)。
今でも忘れられないのが、第二幕、出てくるのがケルビーノだと思ったのにスザンナが出て来た時の伯爵夫人(ヤノヴィッツ)の、驚きをごまかしたリアクション。面白かった!

考えてみれば当時は劇場での字幕もなかったので(イヤホンガイドみたいのはあったかも知れないけど)、同じ時の来日公演の「セヴィリアの理髪師」にしても、場内から笑いが結構起きていたので、「見せて笑わせ」ていたのはすごことだなと改めて思いました。
歌手の方々も何度となく歌っていて「こなれて」いたのでしょう。

その後邦人による公演は数々観ましたが、私が印象に残っているのは、バス歌手の池田直樹さん演出による公演です。
具体的にどこがどうだったとは言えないのですが、非常に無理のない自然な演出で、歌い手さんならではの視点というか、演じていて感じた不自然な点を解消したのかも、と思った記憶があります。
可能ならもう一度観てみたい。

で、今回の公演ですが、歌手陣は素晴らしかったです。

まず外人男性お二人。
お二人とも背が高い! 脚が長い! スタイル良い!

フィガロのダリオ・ソラーリはトスカのスカルピアで来日しており、急遽連投で登板、とのことでした。
えー、こんなスカルピアならいいじゃん一晩くらいトスカ!
と思ってしまいました♪

伯爵のヴィート・ブリアンテは、イタリア人らしい色気で好色な伯爵にぴったりでした。
日本で歌って下さってありがとう!
どうか帰国されてもお元気で!


日本人のみなさんも良かったです。
スザンナの臼木あいさんは、おきゃんというか少々蓮っ葉にも見えるこのプロダクションのスザンナを好演。
伯爵夫人の大隅智佳子さんは、確か私は、東京オペラプロデュース公演のワーグナーの「妖精」以来かと……。こちらも急遽の出演だったそうですが、声も役に合っていました。
(日本人のブロンドに違和感がなくなってきたのは、ひょっとしてローランドのせい?)

そして一際大きな拍手を浴びていたケルビーノの脇園彩さん。歌だけでなく容姿、演技も文句なく世界レベルですね。
“少年”というより立派な“ドンファン”でした。

バルトロ&マルチェリーナペアも流石。
竹本節子さんは、東京シティフィルやびわ湖のエルダが印象的で、好きな歌い手さんです。
そして妻屋秀和さん。まるで追っかけをしているように、私が観る作品への登場率が高いですが、それだけバスの第一人者ということでしょう。サービス精神も◎。

また、バルバリーナの吉原圭子さんも良かった。そのうちスザンナに昇格しそう。

考えてみれば一年前の「セビリア……」でロジーナを歌った脇園さんがケルビーノ、そして昨年バジリオだった妻屋秀和さんがバルトロ。
感慨深いです。

演奏は東京交響楽団を、こちらも代打・沼尻竜典さんが指揮しました。
日本人率が高くなりましたが、決してレベルは下がっていませんでした。

世界ではまだまだオペラが上演出来ないでいる国も多いようです。
そんな中、オペラを観られる幸せを感じました。

次の「ワルキューレ」もキャスト変更が発表され、残念ではありますが、仕方ないですね。

早く感染拡大が収まって、安心出来る世の中になりますように。 

圧巻! 森谷真理さんの夜の女王 びわ湖ホール 「魔笛」

2021-02-02 23:25:56 | 日記
1月31日、びわ湖ホールの「魔笛」を有料配信で、鑑賞しました。

まず、聞き慣れた鈴木敬介さん訳詞による日本語での上演だったので嬉しかったです。
ちょっと文語調が気になる部分もあり、そこは変えても良かったのでは、とも思いましたが。

「オペラへの招待」という、入門編的上演で、お子さんも多数いらしていたそうなので、訳詞は賛成。
喜劇作品や魔笛のような作品は訳詞で上演して欲しいと常々思っているので。
ドイツ語のほうが飛沫が飛ぶと言うし、そういう意味でも良かったのでは?

中村敬一さんの演出はわかりやすく、入門編として打ってつけでした。

出演者の皆さんは若い方が多く、こうやって若手が実際の舞台で経験を積める劇場があるというのは、本当にいいことだな、と思いました。

皆さん良かったですが、まず、タミーノの山本泰寛さん、見た目のいいテノールは本当にいいですね!
弁者の市川敏雅さん、パパゲーナの熊谷綾乃さんなど印象に残りました。

でも圧巻だったのは、夜の女王の森谷真理さんですね!

6年ぶりの夜の女王とのこと。

私自身、最初に森谷さんを聴いたのは、2015年の二期会公演の夜の女王でした。

が、その時よりグレードアップした感じでした。

夜の女王はコロラトゥーラの割と軽い声の人が演じることが多く、「パミーナの母親に見えない」と思うことも多かったのですが、森谷さんの夜の女王は、迫力がありました。
第一幕のアリアでは母親の苦悩を、第二幕のアリアでは女王の怒りを、まさに体現していて、引き込まれました。

このご時世、観客は声を挙げることが出来ませんが、アリアの後、長くて力強い拍手が続きました。心の「ブラヴォー(ブラーヴァ)」が聞こえるような拍手でした。

サロメの時も思ったけど、なんて言うか、うまいとかテクニックがあるとか以上の、オペラ歌手としての“凄さ”を感じました。

アーカイブ配信もあるので、是非多くの人に観てもらいたいですね。