奥田英朗作品、初めて読みました。★★★★★
上原二郎、小学六年生。父・一郎は、二郎が物心ついたときから家にいて、母・さくらが喫茶店を営んでいる。二郎は、父親とはそういうものだと思っていて、小学生になって、ほかの家は、そうではないことに気づく。姉の洋子は、22歳。広告会社で働いている。妹の桃子は、小学四年生。父が会社員でなくても、一家は東京・中野で平穏な日常を送っていた。
二郎は、中学生からいじめを受けるようになる。今まで、知らずにいた父や母の過去が、少しずつ明らかになってくる。家に居候がやってくる。アキラというその人は、父や母の過去とつながりのある人らしい。
平穏な暮らしが、変わり始め、気づいたら、事件に巻き込まれ、警察にまで連行されてしまった二郎。そこから、話は急展開をする。
「我が家は、沖縄の西表島に引っ越すことにしました」と母が宣言。一家は、長女・洋子を残して、沖縄へ移り住む。
そして、移住したところは、西表島の森のなかの廃屋だった。これまで働いたことのない父が、畑仕事や漁をする姿をみた二郎は、父を頼もしいと思うのだが。
この廃屋を巡って、一家は、また大きな事件に巻き込まれてしまう。
『過激派集団・革共同』で行動隊長だった父・一郎は、警察からも「伝説の闘士」と呼ばれる存在だった。その父は、二郎にこう言い残す。
「世の中にはな、最後まで抵抗することで徐々に変わっていくことがあるんだ。平等は心やさしい権力者が与えたものではない。人民が戦って勝ち得たものだ。誰かが戦わない限り、社会は変わらない。おとうさんはその一人だ。わかるな」と。
そして、母は、「おとうさんとおかあさんは、人間として何ひとつ間違ったことはしていない」と言う。「人の物を盗まない、騙さない、嫉妬しない、威張らない、悪に加担しない、そういうの、すべて守ってきたつもり」と。
~534ページもの、長い長い作品でした。
家族の話であり、夫婦の話であり、民族の話でもあります。
泣いて、笑って、心に残る場面が幾つもあります。
第一部の東京編も、良かったけれど、第二部の沖縄編が、とてもとても良いです。
東京にいた頃は、型破りな父の言動に、迷惑を被っているとばかり思っていた二郎。
しかし、西表に来てからは、その父が頼もしいと思い始め、誇らしい気持ちも芽生えてきます。
「おとうさんを見習うな。おとうさんは少し極端だからな。けれど卑怯な大人にだけはなるな。立場で生きるような大人にはなるな。」
「これはちがうと思ったらとことん戦え。負けてもいいから戦え。人とちがっていてもいい。孤独を恐れるな。理解者は必ずいる」
こんなに強いメッセージを伝えられるおとうさんは、かっこいいです。
同じようには生きられないかもしれないけど、(なんせ、過激派です)
心の中に、このメッセージがある限り、まっすぐ生きようと思えてきます。
父・上原一郎、母・さくら。
娘・洋子、息子・二郎、娘・桃子。
この家族と、この物語が大好き
2006年、最初の五つ星です