星が瞬く夜が明けると快晴の空が広がっていた。陽射しを受けた前穂高岳が眩しい。さてと、出発。
歩きだすとすぐに残雪が現れる。今年の雪解けは遅い様子。
暗い森の先には屏風岩が顔を覗かせる。
槍見河原に差し掛かる。小さく槍の穂先が見える。
五月というのに肌寒い朝。水溜りには薄っすらと氷が張っている。
行き先を阻むデブリ。ガチガチに凍っていなくて助かった。
せせらぎに朝日が当たりキラキラと輝く。このコースの中で一番心癒される場所。
段々と川の流れが細くなって来る。対岸の岩肌にはまだ雪が付いている。
デブリに覆われた灌木帯。普段はガラガラの崩壊地だが、雪のおかげで歩きやすい。
槍沢ロッヂを過ぎ、しばらく行けば槍の穂先がはっきりと見えて来た。
木々が疎らな斜面を行く。槍はまだ彼方。
開けた斜面をゆったりと登る。足元はサクサクした雪のおかげで歩きやすい。
普段は足元の悪い岩が出ている樹林帯も雪の登山道となっていた。
疎らなダケカンバを抜ければ間もなくババ平となる。
ババ平から先。今年は川がまだ厚い雪の下。
次第に前方の山が迫ってくる様に感じる。
聞こえるのはザクザクと軋む自分の足音のみ。ゆっくりと風景が移っていく。
まだ先は谷底を歩いて行く。人の小ささをまざまざと感じる。
(続く)