~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

子どもの背骨の病気を治す(著者:NTT関東病院下出先生)

2017-09-19 02:01:04 | 側弯症専門医師


著者:下出真法(しもでまさのり)先生 1973年東京大学医学部卒。東京女子医科大学整形外科講師、社会保険中央総合病院整形外科部長を経て、1997年よりNTT東日本関東病院整形外科部長。専門は小児脊柱変形の治療をはじめとした脊椎外科。(現在、NTT東日本の脊椎脊髄病センター長は山田高嗣先生-1994年東京大学医学部卒)

先天性側弯並びに思春期特発性側弯症の知識については、この本がその全てを網羅しています。表現として穏当でないことはわかっているのですが、いまだに側弯症をカネ儲けのネタとして利用している整体がインターネット上を跋扈しているのを見て、こういう一言が言いたくなってしまいました。「皆さんは、東大の先生の言うことと、整体の言うことと、どちらを信じるのですか?」と。

同書より引用します。
「整体やカイロプラクテック治療は有効か」
背骨の変形がなおるという宣伝をしている民間療法はたくさんあります。カイロプラクティック、整体療法、マッサージ、気功、牽引
、...これらの治療に興味をもたれ、その効果について質問される方は少なくありません。結論からいいますとこれらはいずれも背骨の変形をなおす効果はありません。これらによつて背骨の変形がなおるというのは医学的にはまったく根拠のないことです。そしてそのような方法で治療費が支払われていることは憂慮すべきことです。背骨の変形を手術以外の方法でなおす確実なものは装具だけです。しかし装具も窮屈なもので楽な治療ではありません。背骨は曲がっているけど装具を子どもに着けさせるのはかわいそうだし、何かいい方法はないだろうかという親心はよく理解できます。かといって効果のない民間療法に走るのは賛成しかねます。.....効かなくてもともとだから民間療法を受けてみようという考えにも賛成しかねます。だめでもともとではないからです。.....お金が無駄になるだけではなく、子供の心に大きな傷を残します。....そして、必要以上に自分の体への自信をなくすことにもなります。....背骨の変形の治療に関するかぎりでは、まったく否定的です。」

昨今の側弯整体はなかなかにビジネスに長けているようで、「医者Medical doctor」を引き込むことで側弯整体の有効性を医学面からも支持されていると見せかけるのがうまいようです。でも、その医者はどちらの大学の出身です? 医者にも様々なレベルがあることは皆さんもよくご存じです。医師免許を持っていますから、医学学会にも参加できますし、そういう場で最新知識や情報を得ることもあるでしょう。ちょうど、昨今の新聞を賑わしている再生医療治療で逮捕された医師たちが再生学会の会員として学会にも参加していたのと同じです。でも、脊椎学会が民間療法/側弯整体を認めているでしょうか? 認めてなどはいません。

ビジネスの世界では「権威付け」という手法がよく用いられます。方向付けは異なりますが、芸能人が広告塔になるのも、一種の権威付けという販売手法です。医療の世界では、Medical doctorが権威付けそのものになります。かの整体はいっとき自らを権威付けするために、米国の大学から博士号を取得した的な宣伝をしていたものですが、最近はどうなのでしょう。その手が通じなくなって、いよいよホンモノの医師を取り込んだということなのでしょうか。ホンモノの医師であることは否定できませんが、本物の医師かどうかはいかがなものでしょう?

スクリーニングで発見されて、経過観察となって通院している子供たちのおよそ半分は、カーブ進行することなく胸をなでおろすことになるわけですが、その何もしなくても良い子供たちも整体施術をうけて「治った」ということになるのでしょう。なにしろ、進行することがあれば、医師が診察して装具の手配をしてくれるわけですから、まさにダメもと、ということになるのでしょうか。
でも、皆さんはおかしいとは思われませんか? 治ると言っいる整体で、ではどうして「治らない」こどももいるのでしょう? そんなことはない、整体が提示している写真ではみんな治っている、とおっしやるのですか? 治らないこどもなんていないと整体は言ってるのでしょうか? 治らない子どもはいなとその医者は言っているのでしょうか? つまり整体施術を受ければ100%全員が治るのだと?

人は自分の見たいもの(だけ)を見て、知りたいことを真実だと思い込む動物です。病気のひとは、病気のこどもを持つ親御さんは、治ることを願い、そして治ると言ってるものを信じたいのは当然です。いわばそれは宗教の勧誘とある意味通じるものがあります。それを欲している人に、それを与えると言われたら、誰だって騙されます。そこにホンモノの医者が関与してきたら、ますます騙されるのは当然です。
お金が無駄になるから問題だと主張しているわけではありません(もちろんそれもありますが)。ウソの再生産に関与することで、ウソがさらに拡大して、騙されなくても良い子供たち、親御さん達が増えるリスク・危険を私は憂えているのです。都市伝説を作ってはいけないのです。笑ってすまされる都市伝説ではありません。一歩間違えたら、子どもの命を奪ってしまう都市伝説だ、ということをどうか忘れないで欲しいのです。


(そくわん整体に関する記事は、左欄カテゴリーより「特発性側弯症と民間療法」を参照ください)


august03


☞august03は、メディカルドクターではありません。治療、治療方針等に関しまして、必ず主治医の先生とご相談してください。
 医学文献の拙訳を提示しておりますが、詳細においてはミスが存在することも否定できません。もしこれらの内容で気になったことを主治医の先生に話された場合、先生からミスを指摘される可能性があることを前提として、先生とお話しされてください。
☞原因が特定できていない病気の場合、その治療法を巡っては「まったく矛盾」するような医学データや「相反する意見」が存在します。また病気は患者さん個々人の経験として、奇跡に近い事柄が起こりえることも事実として存在します。このブログの目指したいことは、奇跡を述べることではなく、一般的傾向がどこにあるか、ということを探しています。
☞原因不明の思春期特発性側弯症、「子どもの病気」に民間療法者が関与することは「危険」、治療はチームで対応する医療機関で実施されるべき。整体は自分で状況判断できる大人をビジネス対象とすることで良いのではありませんか?




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 側弯症とゴルフ -プロゴルフ... | トップ | 側弯症にまつわる都市伝説の害 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

側弯症専門医師」カテゴリの最新記事