~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

側弯症手術 金属棒なしの固定術はありません Part.3

2009-04-11 00:18:56 | 側弯症手術について

 側弯症手術 前方固定術の「見え方」についての続きです
 
 レントゲン写真だけではわかりにくいと思いましたので、実際に患者さんの
体内に使用されるインプラント(インスツルメンテーションと先生がたは呼びます)
の写真を提示してみました。

 左側が「前方固定術」に使用するタイプ。右側が「後方固定術」に使用される
タイプです(脊柱側弯症の場合は写真よりももっと長いロッドが使用されます。
ここに掲示したのは変性疾患での腰椎固定で使用している例です)

タイプと表記しましたが、ここに提示したものが代表例でもなければ、これに限ったものでもありません。世界中には数十品目では数えきれないほどの様々なインプラントが臨床現場で用いられています。ここで皆さんにご理解していただきたかった
のは、側弯カーブの脊柱を固定する為には、それが前方固定であろうと、後方固定
であろうと、物理原理は、椎体に打ち込んだスクリューを支柱として、その柱と柱
を金属ロッドで連結して、カーブを矯正し、あるいはさらに曲がろうとする力への
対抗力を働かせる。という“力学”についてです。
ボルト(と呼んでもいいですしスクリューと呼んでも、この場合は大差ありません)
を椎体に打ち込むだけで、カーブが矯正できるはずがありません。そのようなインプラントは存在しません。
以前、このStep by stepのなかで「側わん症 壮大なる実験の国 米国発の新しい手術法の紹介 (国内未認可)」(2009年1月11日)というタイトルで、ステープルだけ
を用いた手術手技をご紹介しましたが、これとても、椎体と椎体のあいだを固定するという方式であって、曲がろうとする力への反作用を考慮しているわけです。

医学を語る場合は、正確でなければいけません。私august03はこのような医学に直結したブログを発信していく上で、もっとも注意を払っていることは「私がいま
書いたことは正確か ?」ということです。書き終わり、アップした後でも、しばらくすると、あの表現だと誤解を招くと気付けばすぐに修正したり、ある意味では
寝てても落ち着かない毎日です。それだけの責任を感じた上でこのブログを書かせていただいております。

最初にこの話題を持ち出された患者さんはきっと気持ちの落ち着かない心理状態で
はないかと推察します。あなたの責任ではありませんから、気になさらないでいいんですよ。
誤解はすでに解消され、正しい形に訂正されて皆さんに伝わっていると思います。

問題なのは、医学的裏付けもなく情報を拡大させるひとがいるということ。しかも
断定的な物言いで流布して、それを修正しようともしない。その誤解にもとづく
発言を訂正するなり、あるいは削除もせずに、そのまま公開掲示板にのせたままの
管理者不在の側わん掲示板の存在が問題なのです。

情報というものは一人歩きします。さらには尾ひれはひれがつくものです。いわゆる伝言ゲームのような側面をもっています。
何か政治向きのこととか、芸能ニュースで、好きとか嫌いとかいう範疇のことで
あれば、多少の誤解や間違いがあったとしても、たいしたことではありません。
しかし、ことが人の命に関わることであれば、情報の発信ということには慎重で
あらねばならず、しっかりとした裏付けなり、判断しうる根拠、あるいは自分の中
の知識の引き出しと照合するなりの作業が必要となります。そういう作業をした上
で引用するなり、追加するなりして発信をすることが責任ある態度だと私は考えて
います。

間違った情報が流布することの怖さは、医者と患者さんとの間に不信感を生じさせる、という事にも繋がるがゆえに、私は声を大にして「正しい知識」「正しい情報」
ということを訴えかけさせていただいてきました。

今回の件を例にとるならば、もしも患者さんが「金属ロッドを使用しない/ボルト
だけでカーブを矯正できる手術があると聞いたのですが、手術をするならその方法
でお願いします」と医師に話をしたとします。
医師は、「そのような手術方法はありませんよ」と答えるでしょう。

患者さんはそれでも手術を選択するかもしれませんが、でも心の中にはその医師に
対する「不信感」を抱いて手術にのぞむことになるかもしれません。

手術を受けるうえで、もっとも大切なことは、医師と患者さん(その両親)との間の
信頼関係です。信頼関係を築けないままで手術を受けてはいけません。その後の
様々な場面で、お互いに不幸な場面が発生することになります。
その不信感の芽が、このような些細な誤解に基ずく誤情報だったとしたら、なんと
哀しいことでしょうか。

追記 : くらら@さん、コメントありがとうございました。


参照サイト 
 http://www.spineuniverse.com/displayarticle.php/article614.html



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