~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

新規投稿 6/29追加あり : 特発性側弯症手術考

2007-06-28 12:07:27 | 側弯症手術について
(しばらくのあいだ新規投稿はこの第三段目になります)

(H19年6月29日追加記載)
(H19年6月27日追加記載)
(H19年6月26日追加記載)
(H19年6月25日記載中。この項目は後日追記し続けることになりますので、読まれた
記載日をご記憶ください)

どのような病気であれ、できるなら手術は避けたいものです。でも、避けることが
できない場合もあります。

           基本は装具療法

       ではどの段階で手術を検討するか?

考慮すべき要素(数字は順位を表すものではありません)
 1. 成長期 ....すでに身長の伸びは止まったか/まだ伸びるのか
 2. 進行度 ....カーブ進行のリスクファクターを幾つ持っているか
 3. 装具治療に抵抗を示すカーブの進行/カーブ進行を止められない
 4. 50度を超えるカーブ

 これらにプラスして、個人的見解ですが、幾つかの文献を引用させていただき
 ますと、美容面に対する考え方(精神的要素)も大切だと思います。

手術に何を期待するか ?
第一義的には、カーブの進行を防止することによる「健康面での障害防止」が
あげられると思います。
第二には、「変形を矯正することによる」容姿面での改善があげられると思います

特発性側弯症は、一般的には命に関わる病気ではありません。しかし、重度変形は
呼吸器系、循環器系等の内臓器官へ悪い影響を与えます。適切な治療を怠っていた
ことによる死亡例も報告されています。治療を怠ることは、生命予後(寿命)に対し
て、影響がないとは決して言えないのは当然かと思います。

第二の理由は、付随的に思えるものですが、しかし、美容効果がこころに与える
影響は決して小さなものではありません。容姿を気にして、引っ込み思案、消極的
、社会にでていくのが怖い....このような影響が残ることは無視できるものでは
ないと思います。

手術を考えるとき、第一の目的=健康が主体なのか、第二の目的=美容効果が主体
なのかによって、手術に踏み切るべきタイミングは変わってくると思います。
例えば、健康への悪影響だけを避けたい、というのであれば、そして、手術が
怖いからしたくないというのなら、70度~80度までがまんしてもよいかもしれませ
ん.....決して勧められるものでもありませんし、また責任の持てる内容ではありま
せんが。

しかし、第二の美容効果を求めるのなら、その実施時期はもっと早いものでなけれ
ば、効果は減少することも手術成績の文献から見えてきます。つまり、重度カーブ
になれば、なるほど、手術による矯正力も劣ってくるようなのです。


いかなる手術を受けるときもそのリスクとベネフィットを考慮することが大切
だとおもいます。

最初に、医療は安全である / 完璧である、というのは 喩えて言えば
医師は神様であるから、完全無欠である、ということを要求しているのに似ている
と思います。
巷には「医療ミス」「医療過誤」等々という本が氾濫し、マスコミ等でも
あたかも医師は悪者的な扱いをされるきらいがありますが、これらはあまりに不等
な取扱に見えます。.....医療へのひとりごとでまた述べさせてもいますが。

手術には、なんらかの合併症、偶発症はありえます。リスクゼロの手術を求める
のであれば、それは手術を受けないのがもっとも安全安心ということになります。
手術を受ける限りは、なんらかのイベントもありえることを前提に、それをおして
でも、この先生に自分を(我が子を)預ける、という気持ちになれない限り、その
医師の手術を受けないほうが良いと思います。手術は、医師が行います。でも
病気を治すのには、自分自身の精神も大きく影響していることを忘れないで欲しい
と思います。医師を信頼すればこそ、医師の指示にも素直に従えるものです。
立てると言われれば、立てる気持ちにもなり、歩けると言われれば実際歩けるもの
です。

医師が自分の病気を治してくれるという熱意が伝われば、病気の半分は治ったも
同然です。また、患者さんは、そのような先生に巡りあうまで、医師を探しても
良いと思います。誰の身体でもありません、自分自身(我が子)の身体なのですから
そのことに遠慮をしてはいけないと思いますし、患者さん自身も、主体的に動く
ことが求められている時代だと思います。

[ 手術によるリスク ] には、どういうものがあるか.....

1. 手術にともなう不具合 (手術関連のなんらかのトラブル、健康被害)
   例えば、感染、肺塞栓、血腫、神経障害等々
 2. 手術創(傷口)が残る (どの程度かは医師に問い合わせして下さい)
 3. 体内に埋め込んだインプラントの不具合
例えば、スクリューが緩む、金属ロッドが折損する等
   (発生率については、医師に問い合わせ下さい....ゼロコンマだと思いますが)
 4. 脊柱の骨癒合が得られなかった等による再手術
 5. 術後半年~1年はスポーツ等のアクティビテイができない
 6. 手術時の身長にもよるが、固定によりそれ以上の身長の伸びは得られない
 7. インプラント固定した部位の、その上位椎体や、下位椎体での隣接椎間変性
   が進行する確率
8. また、その治療のための手術が必要になることもある
   (老化現象の一種なので、確率は健常人でも同様だと思いますが)
 9. 将来、腰痛に悩まされる確率
10. 3週間~4週間ほど、学校を休まなければならない
11. 手術後の痛みや不快感を経験することになる

[ 手術を受けないことによるリスク ]
1. 側弯カーブの進行による、健康障害 
 2. 側弯カーブの進行による、容姿への影響
 3. 側弯カーブの容姿が与える「こころ」への影響

 受けるリスク、受けないリスクは、上記のような比較になると思います。
 同様にベネフィットを書き出してみて、それらリスクとベネフィットを比較考慮
 して、手術に踏み切るかどうか、そのタイミングをいつにするかなどを
 考えてみると良いと思います。


.............................................................
(H19年6月27日追記)

手術」の安全は、医師が守ってくれます。
ここでは手術後の「安全」を維持するために、皆さん自身ができることについて、
.....augus03の私見を述べさせていただきます。


手術後の「安全」、つまり健康で長生きをする為には ……発生率は小さいが手術後
に起こりうる合併症をいかに予防するか。と言い換えていいと思います。

起こりうる合併症の代表格としては、◇隣接堆間変性≒腰痛または局部の痛み
と◇体内に埋め込まれた金属インプラントの不具合発生を避ける、の2種類があると
思います。

隣接堆間変性の発生起序については、後日別項を作成しますので、そちらを参照く
ださい。

堆間変性とは、これは、側彎症手術をしたから発生するのではなく、いまは何
の病気もない健康な人たちも歳をとるに従って発生してくる「老化現象」のひとつ
です。ただ、物理的作用による影響が関係してくるために、インプラントでがっちり強固に固定している場合は、その固定部位と固定していない部位の境目にある椎体/椎間板等で変性(時間の経過とともに、骨や組織に老化が現れる、というイメージでとらえて下さい。お年寄りが、膝が痛い、というときの主原因です) が現れることがあります。「隣接(隣と接している)」というのは、このような部位で発生することから名付けられています。
老化現象物理現象の一種ですから、これ自体の発症を防止することは、「老化」を
防止できないのと同様にそれは無理といわざるえないでしょう。ただ、この疾患
は、老化が誰にでも発症するように、側彎症だから発症するのではない。というこ
とは十分にご理解ください。同様に、腰痛が誰にでも発症するように、側彎症ゆえ
に必ず腰痛持ちになるのでもありません。

従いまして、これら老化に伴う体調不良を「側彎症」だから、という形で決め付け
て、不要な精神的負担を感じたり、自分を欠陥品のように感じる必要はありません
また、適宜、整形外科を受診し検査をしてもらい、必要な治療を求めることは大切
です。痛みの感じ方は人により様々です。「自分」の痛みは、誰にも理解できませ
ん。子の痛みも親は理解できません。親の痛みも子は理解できません。あなたの痛
みを医師も真の意味では理解できません。痛みには客観的に検査して数値化するよ
うな、そのような検査機器も存在しません。痛みとは、「わたし」だけが感じてい
る不快感であり、不調なのです。

ですから、自分の痛みを医師が理解してくれないからといって、医師にやつあたり
しても何も解決しないことを、心にとめおいて下さい。

現代医療において実施されている「痛み」に対する治療方法にどういうものがあ
り、どういうステップを踏んで実施されていくか、そのことを知識として得たうえ
で、自分で痛みをコントロールする方法を思索していくこと……ではないかと
思うのですが。

そして、その基本となるのは、やはり整形外科にいき、検査してもらうことが
スタートラインです。ここで、もし受診した整形外科が検査もせずに、「側彎症だ
からでしょう」という診断をくだすようであったなら、即刻別の病院を受診しても
いいと思います。金属インプラントが埋入しているとMRI検査やCT検査は画像が乱れ
るために正確な診断には不向きですが、少なくともレントゲン写真を様々な角度で
撮影したり、必要に応じて別の検査を組み合わせたりして、原因を追及はして欲し
いと思うのは当然のことだとおもいます。
健康を維持する、という意味でこのような検査での最大の目的は、腫瘍のような悪
い病気が発症していないか、ペディクルスクリューが骨から外に突出して神経に
当っているようなことがないか、ということに重点が置かれると思います。インプ
ラントがあるために、レ線の読影は簡単ではありませんが、安易にインプラントを
抜去することも避けたいと思います。インプラントを抜くのは本当に最後の最後の
手段だと思います。

検査により、痛みの原因が、腫瘍でもスクリューの突出でもないことがわかれば、
残る原因としては、椎間板ヘルニアや隣接堆間変性などの物理的障害が発生してい
ることが考えられます。本人にとってはつらいのは当然ですが、しかし悪い病気、
緊急性を有する病態ではありませんから、じっくりと対策を練っていくことができ
ると思います。

治療はふたつに分類されます。保存療法と外科療法(手術治療)です。保存療法に
は、シップ(温、冷)、牽引、投薬、神経ブロック、物理療法、電気刺激、etc 。
整形外科の先生が実施してくれるもの、理学療法士さんが実施してくれるもの、
そして麻酔科の先生が実施してくれるもの等、様々あります。....ときには、
心療内科や神経科にみてもらうことで、緩和することもあるようです。
少しづつ、試してみながら、自分の症状を緩和してくれる治療方法を探してみると良いと思います。
そして、半年以上すぎても、どうしても痛みが消えず、しかもどんどんとその痛みが増悪し、仕事や生活に支障がでてくるようであったら、そろそろ手術による治療
を考慮する時期かもしれません。我慢のできないほどの痛みであれば、半年も待つ
必要もないでしょう。時期を決定するのは、あくまでも患者さんご自身です。
先ほども書きましたように、医師にはあなたの痛みは見えません。痛みだけが原因
で、痛みだけを治療したいという場合は、手術するかどうかは患者さん以外に決断
を下せる人はいません。


手術方法は、疾患の特定、部位の特定に応じて、何種類かありますが、ごく一般的
に実施されているものですから、大きな心配をする必要はないと思います。ただ、
ここで最も悩ましいのは、すでに埋入しているインプラントの存在です。これを抜
かないと、新しい治療ができないのか、どうか……..できれば、抜かなくても手術
ができる状態であれば、患者さんの負担は小さくてすむのですが。これは個々の
ケースによって状況が違うので、一般論としては何も言えない部分です。
万一、脊椎インプラントを抜去する必要がある場合は、どこで手術をしてもらうか
については、よく検討されたほうが良いと思います。もしお近くに側彎症専門医師
のいる病院があるならば、その病院にいかれることをお勧めします。いわば、症状
の軽いときは、近所の整形外科等で治療を受け、手術を受けざるえない状態にまで
進行した場合は、専門医のいる病院へ。というコースを最初の段階から、治療コー
スとして検討しておいてはいかがでしょう。そのような考えであることを、ご近所
の整形外科の先生にも最初からお話されておいてはいかがでしょうか。患者さんが
しっかりとご自分の治療に対する意見を持っていれば、先生はその意思を尊重され
て、適確なアドバイスをされると思います。

......................................................
(H19年6月29日追記)

体内に埋め込まれた金属インプラントの不具合発生を避ける。という面から。


体内に埋め込まれるインプラント(主にチタン製)の手術後のトラブルとして
あげられることは、材料自体に起因するトラブルと手技に起因するもの、そして
患者さん自身の活動に起因するものの3種類に分類されると思います。ただし、
これらは明確に原因を分類特定できるものではなく、相互に関連しあって発生する要素の高いもののようです。

材料自体に起因 : インプラント折損
         組み立てた部品の分離

発生率は非常に小さいようですが、発生した場合、再度手術をやりなおさなければ
ならない、という意味で、一番やっかいなものだと思います。
チタンは非常に生体親和性にすぐれ、柔軟でありながら、疲労強度も高い、という
材料ですが、材料とて「モノ」ですから、破損することもありえます。
一般に金属の破損を減少させるには、「大きくする、厚くする」等の物量をあげる
方法がありますが、体内/骨内に埋めるモノ、という入る側の容量が決まっている
ために、単純に物量を大きくする/厚くするということには限界があります。

技術に起因 : ペディクルスクリューの椎弓からの逸脱と神経損傷

発生率は非常に小さいですが、発生した場合、患者がわにとって、もっとも障害が
大きいのが、このトラブルだと思います。先生からもこの点についての説明が必ず
なされると思いますし、説明のなかでも、このことが側弯症手術における一番の
怖さとして感じられるはずです。

患者の活動に起因 : インプラントの折損等

手術後半年から1年はスポーツ活動が禁止されるはずです。脊柱の骨癒合を待つ
という意味と、体内に埋めこんだインプラントが骨になじんで、しっかりと固定
されるまだの待機期間という感じです。
手術後のスポーツ活動の内容とどの程度、ということも気になることだと思います
一般的には、選手同士がぶつかりあうようなスポーツは危険なので避けるように、
指導されています。格闘技は禁忌です。
この理由は、スクリューが椎弓を逸脱して神経を傷つけることを避ける、というこ
とが理由となっています。拡大解釈して、より安全であることを求めるならば、
背中を思い切り床や地面にぶつけるようなトラブルのあるスポーツも避けるか、
そのリスクをつねに念頭にいれて、背中の保護、衝撃からの保護ということに注意を払うことで、安全が確保できると思います。

その他として :
手術後の定期検診も医師から指示されると思いますが、必ず定期的に検査して
もらうことはとても大切です。その場合、医師はどうしても移動、転勤がつきもの
ですから、手術をしていただいた先生がどこか別の病院に移ってしまうことが
起こりがちです。その医師を捜して、遠くの病院まで出向くか、それとも近所の
病院で診てもらうか、悩みです。

現実的には、難題かもしれませんが、私ならば、手術してくれた先生を捜して
でかけたい派です。毎年は不要だと思いますので、3年か4年にいちど、診てもらい
たいと思います。日本は幸いにも、全国どこでも健康保険が使えますので、
先生の異動先と、予約さえ押さえることができれば、受診は理論的には可能です
ので。異動先を知る手段としては、年に一度、現在勤務する病院に電話して在籍を
確認することを習慣づけしておけば、たとえ、異動されていても、外来看護婦さん
に聞けば、新しい勤務病院を教えてもらえるはずです。

(この項、終了)


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1 コメント

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初めまして。 (Unknown)
2007-08-06 02:10:41
初めてこのページを拝見し、論文を基に側わん症について詳しく書かれていて驚きました。これからも参考にしたいと思っています。

側わん症患者にとって非常に有益なブログだと思います。



しかし、非常に神経質で申し訳ないのですが、本文の中の自分が欠陥品である、という表現をもっと別のものに変えることはできませんか?

私は特発性側わん症患者です。確かに体に欠陥があるのは事実だと思いますが、この文章を読んで少し気になってしまいました。



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