![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/70/b9/95b29ac0356cb6764ebacc703829caf3.png)
(添付画像は、レポートに使用したもので、右&中央は先天性側弯症、左が特発性
側弯症患者さんのレントゲン写真となります)
Par1 からの続き:
例えば、文部科学省(学校保険統計調査-都道府県別疾病被患率)だけをベースに
しても、次のような考察をすることができます。
◇ 脊柱側弯検診で、女子の年齢別全国平均で疑いがあるとされる年齢のピークは
12歳~15歳に現れている。
9歳 0.27 %
10歳 0.40
11歳 0.47 小学校5年生
12歳 0.71
13歳 0.79 中学1年生
14歳 0.81
15歳 0.70
16歳 0.51
17歳 0.42
しかし、11歳、16歳でも約0.5%が検査により精密検査必要という指導がくだされて
います。
現在、学校検診が行われている地域でも、その実施は、5年生(または6年生)と中学
1年生(または2年生)の二回のみというところが多く、これでは早期発見のかけ声は
かけ声だけで終わってしまっていることになります。
つまり、学校または家庭や地域における脊柱側弯検診が、11歳~16歳の6年間で、
なんらかの形で継続的に実施してもらえるならば、かなりの割合でコブ角のまだ
比較的小さいマイルドカーブの段階で早期発見に繋がる可能性が高くなる、という
ことが言えます。
さらにこのデータからは、次のような地域格差らしきものも垣間見えてきます。
◇検出率の高い地域
12歳 12歳 13歳
男女 女子 女子
広島 1.6 1.7 2.5
千葉 1.3 2.3 2.0
静岡 0.8 1.2 1.7
奈良 0.5 1.6 1.7
東京 0.8 1.1 1.0
神奈川 0.8 1.0 1.1
熊本 1.1 1.0 0.7
新潟 0.9 0.7 1.6
◇検出率の低い地域
秋田 0.3 0.5 0.3
山形 0.3 0.3 0.1
福島 0.3 0.3 0.3
富山 0.1 0.1 0.5
石川 0.3 0.4 0.4
福井 0.2 0.2 0.1
愛知 0.2 0.2 0.2
滋賀 0.2 0.1 0.1
山口 0.4 0.3 0.2
徳島 0.3 0.4 0.2
香川 0.2 0.3 0.3
高知 0.3 0.4 0.3
大分 0.1 0.2 0.1
宮崎 0.4 0.4 0.3
鹿児島 0.2 0.1 0.3
沖縄 0.3 0.3 0.3
このように検出率で2グループに分けてみた場合、仮説としては次のような
ことが考えられます。
1. 脊柱検診に熱心に取り組んでいるかどうかの差?
2. 脊柱検診でのスクリーニングシステムの構築の差?
3. 都市部と地方の検診にかける予算の差?
さらに深刻な仮説をたてるならば、
5. 検出率の低い地域では、側彎症の発見が遅れる可能性が高い
このような仮説を検証し証明することは個人の力ではかないません。
しかし、もしも、都市部と地方では、発見されたときのコブ角の大きさ
(進行)が違うとしたら、それは患者個人の持つ運命の差ではなく、医療行政の差に
よる犠牲という見方をすることもできます。
あるいは、地域の大学を中心とする医療機関の取り組みの差なのかもしれません。
いずれであるにせよ、統計データの有する意義は大きく、ぜひとも利用価値の高い
データベースの構築に向けた努力を期待してやみません。
part 3に続く