~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

特発性側弯症早期発見の為に 厚生労働省提出報告書 Part 1

2008-12-27 23:00:31 | VEPTR COM JAPAN
     

     (仮名称)側弯症患者の会より舛添大臣へのお願い
     ― 側弯症早期発見に向けて 提言として ―  平成20年12月25日

VEPTR患者の会の皆さんが、12月25日に舛添厚生労働大臣に最終の署名24235名を
届けさせていただいたおりに、「特発性側弯症早期発見の為に」と題したレポートも
一緒に提出させていただき、受理していただきました。
これは、august03から患者会にお願いして提出していただいたものです。
このレポート一本で何がどう変わるということはないだろうとはわかっておりますが、
行政のどなたかの目に少しばかりでも記憶してもらえるならば、もしかしたら、
何かが変わる契機になってくれるかも.....と、期待だけは持ち続けたいと思います

VEPTRの国内認可の為に、何かができればとこのブログSTEP By STEPを始めました。
それから二年がたち、VEPTR認可が実現しました。
私は直接おもてに出て行動することはできませんが、こうして情報を発信すること
でいつか、少しづつ何かが変わっていくきっかけになれればと願っています。

以下はその報告書の内容になります。

      「特発性側弯症の早期発見の為に」

       目次

    1. 側弯症とは (先天性側弯症と特発性側弯症の違い)
    2. 思春期特発性側弯症の発症率、患者数調査
    3. 早期発見の為に



1. 側弯症とは (先天性側弯症と特発性側弯症の違い)

先天性側弯症
脊椎などに生まれつきの形の異常があるために、成長に左右差が出ることから側弯
症に進展します。脊柱の中を通っている脊髄にも生まれつきの異常があったり、
心臓や泌尿器系にも生まれつきの異常がある場合も少なくありません。
(千葉大学整形外科ホームページより)

特発性側弯症
   乳児期側弯症(0歳~3歳に発症)
   学童期側弯症(4歳~10歳に発症)
   思春期側弯症(10歳以降に発症)
このうち80%~90%は、現在でも原因不明であることから、特発性側弯症と呼ばれているものです。 (日本側弯症学会ホームページより)

奇形した椎骨の存在による側弯ではなく
脊柱全体がねじりをともなってカーブするのが
特発性側弯症の特徴です


2. 思春期特発性側弯症の発症率、患者数調査

引用 :
自治医科大学 大木勳先生
「二分脊椎の周辺疾患としての先天性側彎症の全国調査による統計学的研究」

第一回全国側弯症実態調査1972年 34病院2288名
第二回全国側弯症実態調査1973年 36病院3021名
全国各地の病院を訪れた測わん症患者を側彎症研究会および各大学病院整形外科医
の協力を得て調査集計したものである。
第三回目の調査は、1976年7月1日より1977年6月30日までの一年間に各病院を訪れて
側わん症と診断された患者について主として特発性そくわん症と先天性そくわん症
について調査したものである。
第三回調査は42病院から4696名の患者登録があった。
このように回を重ねるごとに協力病院が増加し、患者総数も急激に増加しているこ
とは側彎症に対する関心が高まりつつあることを示すものと思われる。

1963年に初めて側彎症が日本整形外科総会の主題に選ばれたが、このときに、北海
道大学、千葉大学、徳島大学から発表された症例数はわずか294例であった。このう
ち特発性が127例43.2%、先天性50例17.0%、麻痺性(ポリオ)69例23.5%で麻痺性側彎
症が多いのが目立っていた。
10年後の第一回調査では、先天性側彎症は14.6%で多少の減少あるも大差なかった
が、ポリオが5.3%と著しく減少し、代わりに特発性が64.1%と増加していることが判
明した。
第三回は、ますますこの傾向が強くなり、特発性は75.5%と増加し、ポリオは1.5%と
減少している。先天性そくわん症の占める率は1963年頃から10数%であまり大きな変
動はないが、側彎症の総数が急激に増加しつつあるためにその数も比例して増加し
ていることになる。 (引用終わり)

この文献中で特発性側弯症が年々増加しているというのは、発生が増えている
というよりは、「発見」が増えて病院を「受診」する患者さんが増えていることを
示唆していると考えられます。

30年前の出生数は不明ですが、2000年以降の出生数は約100万人/年です。
東京都のモアレ検診結果(2006年)をベースにしますと、20度以上側彎症と診断され
るこどもは小学生女子約0.3%、中学生女子約1%と報告されています。
思春期特発性側彎症が小学生5年生~中学2年頃に発症のピークがあると推測されま
すことから、全国のこれらの学年(女子のみ)にこの数値をあてはめますと

     小学校5年生 1500人
     小学校6年生 1500人
     中学校1年生 5000人
     中学校2年生 5000人

全国には、約1万人以上の特発性側彎症のこども(女子)がいることになります。
しかし、これはあくまでも机上の計算上の仮説にすぎません。実数調査が行われて
いるわけではなく、全国各地で実施されている学校での脊柱検診もその総計を集計
するシステムになっていない為、いったい全国に何人の思春期特発性側彎症のこど
もがいるのかを把握することは不能というのが現在の統計システムの現実です。
加えて、脊柱検診が実施されていない地区、学校もあるため、患者数はさらに不明
というのが現実の姿です。

発生率および治療を必要とする患者数を予測する為に、さらに下記文献の数値を引
用してみました。


(側弯症学会発表抄録より引用)
札幌市における側弯症学校検診の実態調査―平成元年度から17 年度までの
検討―  北海道大学 医学部 整形外科

平成1年度
小学4 年生~6 年生 女子受検者 33299 名
精査対象             60 名 (0.18%)
特発性側弯症と診断        35 例 (0.11%)
他の側弯症と診断         4 例 (0.01%)
装具治療             13 例 (0.04%)
手術治療を施行された児童はいなかった。

中学生女子 受検者       33557名
精査対象            274名  (0.82%)
特発性側弯症          141例  (0.42%)
装具治療             36例  (0.11%)
手術治療             2例  (0.006%)  (引用終わり)


特発性側弯症はコブ角が25度以上から装具による治療を開始することになります。上記に引用した側弯症と診断された数値(0.11%および0.42%)を用いて、全国に当てはめた場合、
   小学校4年生
   小学校5年生  150万人x0.11%=1650人 (4年~6年) 
   小学校6年生
   中学校女子   150万人x0.42%=6300人
       合計          7950人

また厚生労働省統計データベースの平成17年10月調査「3閲覧第94表総患者数傷病基本分類別」よりM419脊柱側弯症の項目を用いますと、10月のとある
一時点での全国の患者数は6000人ということがわかります。

これら3点の疫学調査のみからの類推が許されるならば、思春期特発性側弯症の女子(小学校4年生~中学生)は全国に6千~1万人の間と推定されます。
しかしこれは単年の推測であり、患者は新たに毎年発症し、また累積されていくことになります。しかも、ここで示した6千~1万人という患者数は、思春期特発性側弯症と診断されたこども達の数であり、実は、この背景にはコブ角20度以下(または25度以下)で経過観察中のこども達は含まない人数として推定しています。これら経過観察中のこども達の数はさらに把握が難しいのですが、中学生女子で1%の要検査のこどもが発見されるという数値を用いますと、その数がいかに多いかを想像することができます。

国内では様々な形で患者数調査が行われています。しかし、その現状はせっかく様々な分野で調査がなされているにも関わらず、それらを縦横に串刺しにするシステムが構築されていないことから、個々の調査結果が生かされていない。という課題も垣間見えてきます。

脊柱側弯症患者の推定数を得られるソース
-  厚生労働省 (人口統計)
-  文部科学省 (学校保険統計調査-都道府県別疾病被患率)
-  一部自治体
-  予防医学協会等の団体
-  日本側弯症学会、日本脊椎脊髄病学会等の医学会
-  臨床医師等による研究調査 など

患者数をできるだけ正確に把握することができれば、病気の自然経過の把握と治療によるアルゴリズム、そしてその次の段階として医療コスト等の分析も可能になるはずであり、ぜひとも上記に掲げた調査実施団体は、統一データベースの構築に向けて取り組んでいただければと願っております。少なくとも患者区分をコブ角何度で区切るか、というような基礎的な面での統一基準、統一定義を用いて調査していただければ、データを相互活用することが可能になると考えます。

(Part 2 に続く)

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ブログ内の関連記事
「祝 ! 先天性側弯症用医療機器 VEPTRの認可が本日発表されました」
 http://blog.goo.ne.jp/august03/e/e3bed6cf84d0dfbe0997dc2bf6f2b847

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