~step by step~[ 側弯症ライブラリー]患者の皆さんへ

側弯症(側わん症/側湾症/そくわん)治療に関する資料と情報を発信するためのブログです

先天性側わん症 : 病気に対するネット情報の功罪 (私的考)

2009-03-20 17:49:34 | 先天性側弯症
添付画像は下記URLより引用しております。

   文献
   Congenital scoliosis in a neonate: can a neonatologist ignore it?
   http://pmj.bmj.com/cgi/content/full/78/922/469

出典 :Postgraduate Medical Journal 2002;
   
「新生児における先天性側わん症 :新生児生理学者はこれを無視できる ?」
 
 (今回は全文ではなく、その一部を特にご紹介させていただきます)

Nattural History and Progression :
Until 1960 it was thought that congenital scoliosis was non-progressive
and thus did not require treatment. McMaster and Ohtsuka and Winter et al
refused the theory about the benign nature of congenital scoliosis.7,34
They reviewed a combined total of 485 patients, most until skeletal
maturity and found out that almost 75% of patients required treatment and
84% of patients who were untreated developed curves greater than 40 degree
by maturity. Progression and prognosis were related to type of anomaly and
anatomical site of the curve. Children with clinical deformities in the
first year of life had the worst prognosis and had early progression. If
the curve was present before the patient was 10 years old, it usually
increased, in particular during the adolescent growth spurt.7 All curves
present during infancy and associated with an unsegmented bar deteriorated
very rapidly with advancing age as the bar became more ossified.7
Similarly other researchers have reported hemivertebra as the most common
type and unilateral unsegmented bar with contralateral hemivertebra as the
most severe and most progressive pattern of deformity.2 Increasingly
severe scoliosis may also develop when an asymmetric block vertebra, a
wedge vertebra or one or more lateral hemivertebra is present.
Thoracolumbar curves tend to have worst prognosis and the greatest
progression followed by lower thoracic curves and upper thoracic curves.

先天性側わん症の自然経過とその進行 :

1960年以前は、先天性側わん症は進行することはないと信じられていた。従って
治療も不要であると言われていた。 McMaster博士等は彼らの研究によりその定説
を否定した。彼らは485症例を患者が骨成熟に至るまでレビューし、その結論として
75%の患者は治療を必要とし、治療しなかった場合の84%は骨成熟に至るまでにカー
ブが40度以上に進行することを発見した。進行状態と患者の予後は、脊柱変形の形
態や解剖学的異常と相関していた。誕生から1年以内で臨床上の変形が現れた患者の
場合、その後の経過は悪化をたどり早期から進行をはじめる。もし変形が10才前に
発現した場合は、多くの場合、カーブは進行する。幼児期に変形が発現し、椎体配
列に異常がある場合は、進行度は速く、年齢とともに変形したカーブがそのままに
骨化(訳者注:硬くなっていく)していくことになる。他の研究者による発表にもある
ように、多くの場合、患者の脊柱には半椎体(訳者注:椎体の形状が普通の半分)が存
在し、unilateral unsegmented bar with contralateral hemivertebra の場合が
もっとも悪化するパターンとなる。

Non-Surgical Treatemnt :
Bracing can treat <10% of cases of congenital scoliosis.37 However the A brace may not arrest or correct the development of curve, but may slow
progression and maintain flexibility, allowing surgery at a later stage.

保存治療法(装具療法) :
先天性側わん症患者の10%程度で装具療法の試行性もありえるが、どの程度の期間
装着しているべきなのか、またどの程度効果があるかは、いまだに試行錯誤の状態
である。装具によってカーブ進行を停止することはできないが、抑制はできるかもしれない。
また手術時期をさらに先に延ばすことができるかもしれない。

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(august03より)
 今回は私的考察を述べさせていただきます。
 ネットの普及により社会の様々な面でその功罪が指摘されています。病気治療に
おいても、かつては孤立し前途に悲観しか見ることのできなかった患者さんがネット
により治療法にたどり着いたり、仲間を得ることで、病気と向きあう勇気を得る事
ができた、というニュースもしばしば見聞きすることがあります。同時に、ネット
には誤った情報も掲載されていれば、薬事法違反(誇大広告等)の宣伝も氾濫して
おり、決して患者さんにとって「安全な道具」というわけでもありません。
以前このStep by stepの中でも述べたことですが、ネット特有の「掲示板」という
世界はさらにその功罪をいかに考えるべきか ?  という面で悩ましいといわざる
えません。皆さんご自身がご自分を振り返って考えていただきたいのですが、皆さんは
ネット情報を信じるタイプでしょうか? それとも一応は疑ってかかるタイプでしょうか ? 
もちろんそれはその情報の中身にもよるわけですから、あくまでもケースバイケース
というのが正解かもしれません。

ときおり、ネット掲示板で私august03を側わん整体に執着した変質的性格の持ち主
である。という表現を目にすることがあります。それが正しいかどうかは別のこと
として、私にひとつだけ貢献できたことがあるとすれば、それは「ネット掲示板」
から患者のフリをした整体による誘導発言がかなり減少したことだと思っています
少なくとも、皆さんの中に、ネット掲示板にはそのような「サクラ」が存在する。
という認識は持っていただけたと思います。ことが病気についてのことなのだから
発言する人はみな善意の人である。という「思い込み」はとても危険です。

ネット掲示板のもうひとつの功罪は、発言者は匿名であり、発言に責任をもった
存在ではない、という点です。悩みを打ち明け、その悩みに対して精神的に支えよ
うという行いを取り上げているのではありません。医学的裏づけ(根拠)のないまま
に他人からの伝言情報や、自分の経験のみにもとづく発言が聞き手にどういう
「思い込み」を植えつけることになるか、ということに配慮することなく、一方的
な意見を述べることの危険性に気づいていない、ということです。ときおり、掲示板で
意見交換の枠を飛び越えて、議論からさらに非難応酬、そして掲示板閉鎖へと
追い込まれるケースもあります。

私自身も管理者となり掲示板を運営していますが、そこにはおのずと限界が存在し
ています。またこのStep by stepにも限界があります。その限界を踏まえたうえで
どうすることが皆さんにとってお役に立てる方法なのか....悩みつつ2年という年月
を過ごしてきました。

話を「先天性側わん症」に戻します。
相変わらず、大塚整体のホームページには「先天性側わん症のこども」も自分なら
治せる的な記述が掲示されているようです。このStep by stepで何度もその事を
取り上げてきていますが、なんら変わる様子も見えません。
ネットの功罪がここにもあります。私august03は自分が100%正しいと言うつもりは
ありません。なぜならば、私は医学を勉強はしていますが、医師という資格を持った
者ではないからです。私は患者さんの命に責任を持つことができません。仮に言葉
の上で「持つ」と言ったところで、それは何の意味もないことであり、さらには
医師法に抵触することにも繋がりかねません。私にできることは、医学情報を皆さんに
提供することだけしかありません。そして、その医学情報は、誰でもがその内容を
検証することができる形で提供することに努めています。医学の世界も日進月歩です。
ですから、もしかすると二年前にここに記載した内容がすでに古い知識になって
しまうこともありえると思います。ゆえに、つねに知識と情報を新しいものに
アップデートすることが大切だと考えています。

そして、もうひとつ、もし私august03にアドバンテージ(能力)があるとすれば、
それは皆さんよりも「医学/医療」の背景を持っており、その知識・情報に対する
理解力はある。という点かと思います。

ネットに掲示された宣伝がいかに医学的に誤ったものであり、いかに危険なもので
あるか、ということは私が患者自身という立場でなく、患者家族(親)という立場で
もないがゆえに、冷静に客観的に、そして医学的に検証する力があると思っています。

藁(わら)にすがりたいというお気持ちは十分に理解できます。
しかし、藁は藁にすぎません。

先天性側わん症のこどもを持つ皆さんは、「側弯症患者の会」に加入されて
そこで顔と顔を見合わせた形で、仲間を見つけてください。正しい知識と正しい
情報のもとでお子さんの治療に立ち向かってください。そして、どの先生のもとで
治療を進めるのが良いかについて検討されてください。こども達が10年後、20年後
にも、「仲間」と一緒に歩んでいる姿を想像されてください。
私たちには、この病気を治療する医学的ちからはありませんが、こども達にどういう
未来を与えられるか、という選択する力は持っています。
その力は、誰かの手の中にあるのではなく、皆さん自身の中にあります。
その力をどうか信じて、欲しいと思います。


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