一匹目の神獣は、レインボー・スクラッチと呼ばれた爪から繰り出される技で百万を越える冥界のギデオンを引き裂いた、かつての天界の光の軍団長「光り輝くもの」シリウス。輝く毛並みの銀狼の姿に戻って、崖を飛び降りると、岩から岩へ取り移りながら攻撃を仕掛ける。
現世では、アメリカ人のチャック・ハーベック。額が猿のように張り出し、狼のように細い目をしているが、人なつっこい顔をしている。
もう一匹は、ボールライトニングという技を持ち、半径1キロの敵を全滅させる電撃を発する、かつての天界の雷の軍団長「対抗するもの」アンタレス。ハリネズミのような毛におおわれた雷獣の姿に戻り、シリウスに向けて雷撃を発する。
現世では、アメリカ人のウィリアム・シャルダン。
縦横幅が変わらない太った姿に、ヒッピーの生き残りのような服装を見て、将来ノーベル賞候補になる天才であると見抜いたものはいなかった。
この場にいるはずのかつての天使長で「率いるもの」ペルセリアス、金色の鷲の姿はない。人間の姿では、プラチナブロンドのベルギー人、クリストフ・ボールデン。女たらしのプレイボーイだったが、現在は、ヴァンパイア、ダニエルとなってマクミラと共にニューヨークに暮らしている。
かつての真紅の龍で「舞うもの」コーネリアスは、人間の姿のまま二匹の訓練を見守っている。現世では、中国人の祭孔明だが、聖ローレンス大学ではナオミと日本からの留学生として出会っている。
1991年のナオミたちとマクミラ率いるゾンビー・ソルジャー軍団の闘い後、チャックは目覚めないままでは足手まといになるばかりで、なんとかしたいとずっと考えていた。勉強に専念するようになっていたビルも、チャックの熱意に誘われて、孔明に同様の相談を持ちかけた。
孔明の隣には、白いヒゲをたくわえた祖父、祭青龍が立っていた。
齢百才を越えた身体は筑波下しが吹けば飛ばされそうだが、中国武術界にその人ありと知られた「チンロン」祭青龍と知るものは、ほとんどいない。
チャックとビルを目覚めさせることが目的の修行が、広大な庭で始まった。
すでに目覚めている孔明が竜巻を起こし、その中から脱出したり、流れ落ちる滝に飛び込んで、滝壺から上がったりなど常人であれば生死に関わる訓練に明け暮れた2年間であった。
「二人とも、ようやく目覚めたようじゃ」
「休学して、じいちゃんと眠眠と一緒に修行に励んだかいがあった」孔明が、時々、修行に参加する妹の名前に触れた。
「だが、お前たちのおかげで自慢の庭が悲惨な姿になってしまったよ」青龍は、すっかり形を変えてしまった滝、崖、浮き島を眺めた。「ここ数日、気の乱れを感じる。聖地の結界がゆるみ始めておる。何かの前触れでなければよいが・・・・・・」
1993年夏、聖ローレンス大学4年になった3人はナオミに黙って、日本にいる祭青龍の下で修行をする旅に出かけた。
青龍の父「ヘイロン」黒龍は、明朝(1368-1644)末期から清朝(1644-1912)初期にかけて、武装闘争をおこなったチャイニーズフリーメーソンと呼ばれる秘密結社“洪門”(ホンメン)の殺手(ころしや)であった。
清朝末期に洪門は瓦解が始まっており、各地方における犯罪組織化が進んだ。香港の黒社会“三合会”(トライアッド)大幹部であった黒龍は、太平天国の乱(1853)や、親友孫文と共に辛亥革命(1911)など歴史の裏側で暗躍した英雄の一人であった。清打倒と明復活を目的に、要人を次々、龍神拳で血祭りに上げていたのである。
黒龍は齢60才を前にようやく授かった孫のような息子、青龍には、自分と同じ人生を送らせたくないと考えた。青龍は、父であり武芸の師匠である黒龍との最初の別れの場面を思い出していた。
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現世では、アメリカ人のチャック・ハーベック。額が猿のように張り出し、狼のように細い目をしているが、人なつっこい顔をしている。
もう一匹は、ボールライトニングという技を持ち、半径1キロの敵を全滅させる電撃を発する、かつての天界の雷の軍団長「対抗するもの」アンタレス。ハリネズミのような毛におおわれた雷獣の姿に戻り、シリウスに向けて雷撃を発する。
現世では、アメリカ人のウィリアム・シャルダン。
縦横幅が変わらない太った姿に、ヒッピーの生き残りのような服装を見て、将来ノーベル賞候補になる天才であると見抜いたものはいなかった。
この場にいるはずのかつての天使長で「率いるもの」ペルセリアス、金色の鷲の姿はない。人間の姿では、プラチナブロンドのベルギー人、クリストフ・ボールデン。女たらしのプレイボーイだったが、現在は、ヴァンパイア、ダニエルとなってマクミラと共にニューヨークに暮らしている。
かつての真紅の龍で「舞うもの」コーネリアスは、人間の姿のまま二匹の訓練を見守っている。現世では、中国人の祭孔明だが、聖ローレンス大学ではナオミと日本からの留学生として出会っている。
1991年のナオミたちとマクミラ率いるゾンビー・ソルジャー軍団の闘い後、チャックは目覚めないままでは足手まといになるばかりで、なんとかしたいとずっと考えていた。勉強に専念するようになっていたビルも、チャックの熱意に誘われて、孔明に同様の相談を持ちかけた。
孔明の隣には、白いヒゲをたくわえた祖父、祭青龍が立っていた。
齢百才を越えた身体は筑波下しが吹けば飛ばされそうだが、中国武術界にその人ありと知られた「チンロン」祭青龍と知るものは、ほとんどいない。
チャックとビルを目覚めさせることが目的の修行が、広大な庭で始まった。
すでに目覚めている孔明が竜巻を起こし、その中から脱出したり、流れ落ちる滝に飛び込んで、滝壺から上がったりなど常人であれば生死に関わる訓練に明け暮れた2年間であった。
「二人とも、ようやく目覚めたようじゃ」
「休学して、じいちゃんと眠眠と一緒に修行に励んだかいがあった」孔明が、時々、修行に参加する妹の名前に触れた。
「だが、お前たちのおかげで自慢の庭が悲惨な姿になってしまったよ」青龍は、すっかり形を変えてしまった滝、崖、浮き島を眺めた。「ここ数日、気の乱れを感じる。聖地の結界がゆるみ始めておる。何かの前触れでなければよいが・・・・・・」
1993年夏、聖ローレンス大学4年になった3人はナオミに黙って、日本にいる祭青龍の下で修行をする旅に出かけた。
青龍の父「ヘイロン」黒龍は、明朝(1368-1644)末期から清朝(1644-1912)初期にかけて、武装闘争をおこなったチャイニーズフリーメーソンと呼ばれる秘密結社“洪門”(ホンメン)の殺手(ころしや)であった。
清朝末期に洪門は瓦解が始まっており、各地方における犯罪組織化が進んだ。香港の黒社会“三合会”(トライアッド)大幹部であった黒龍は、太平天国の乱(1853)や、親友孫文と共に辛亥革命(1911)など歴史の裏側で暗躍した英雄の一人であった。清打倒と明復活を目的に、要人を次々、龍神拳で血祭りに上げていたのである。
黒龍は齢60才を前にようやく授かった孫のような息子、青龍には、自分と同じ人生を送らせたくないと考えた。青龍は、父であり武芸の師匠である黒龍との最初の別れの場面を思い出していた。
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