アメリカ軍・基地
2020年1月19日 (日)
アメリカ合州国が自発的にイラクから撤退すると期待するのは夢想
2020年1月14日
ジェームズ・オニール
New Eastern Outlook
1990年、サダム・フセイン大統領支配下のイラクは、隣国クウェートと論争していた。イラクはイラクの石油埋蔵を枯渇させるような形で、石油を掘削していると言ってクウェートを非難していた。イラクは、彼らが自分たちの資源の盗みだと考えたものに対して立腹し、行動すると決意した。だが、サダム・フセインは、彼が意図する行動に関して、まずアメリカの意見を求め、当時の駐イラク・アメリカ大使から、アメリカ合州国は論争に対して中立だとを知らされた。サダム・フセインは、それを承認と見なして、クウェートを侵略した。
アメリカ合州国の対応は、サダム・フセインが信じるよう仕向けられていたものとは対照的だった。大規模軍隊が素早く召集され、イラクはクウェートから即座に追い出された。当時のアメリカ合州国大統領ジョージ・H・W・ブッシュは、イラクを占領しなかった。その代わり、大規模制裁が科された。そうした制裁は、女性や子供を含め、少なくとも50万人のイラク民間人の死をもたらした。
当時のアメリカ国務長官マデレーン・オルブライトは、連合軍イラク封鎖によるこれら民間人犠牲者について質問されると、破廉恥にも、代償は「価値があった」と応えた。
10年後、アメリカ合州国と同盟国は、サダム・フセインが、欧米とその全てに対する最終的脅威である「大量虐殺兵器」を持っているという明白に偽りの口実で、イラクを侵略した。当初の犯罪的侵略と占領から20年後、アメリカ合州国は同盟諸国とともに、まだそこにいる。
イラクでの最近の展開を評価する上で、この短い歴史は想起する価値がある。アメリカ大統領ドナルド・トランプは、いつも通り、地域におけるアメリカ合州国の意図について、あいまいな言説を弄している。一部の報道は、トランプがイラクからの米軍撤退を望んでいることを示唆している。そうした報道は、大いに疑ってかからなければならない。アメリカ合州国は、それが占領したどの国からでも、自発的に撤退した歴史的先例は事実上ない。強制された撤退の典型的な例は、1975年のベトナムからだったが、それは何十年もの戦争で何百万人ものベトナム人を殺した後で、45年後の今も、ベトナムの人々のために生物学的な時限爆弾を残し、いまだにベトナムと国民に不幸と障害をもたらしている。
イラクから引退するという、あらゆるアメリカの意図に対する懐疑心(そして、国際法下で、もう一つの違法占領であるシリアから)は最近の展開によって強まった。イラク政府は最終的に十分勇気をだして、イラク議会は満場一致で、全ての外国軍隊がイラクから撤退すべきだという決議を通過させた。
国際法の下で、主権国家は、このような要求をする権利がある。駐留はイラク軍隊を「訓練する」ためだと主張するオーストラリア政府(同じ口実がアフガニスタンでも使われている)は彼らを排除するイラクの権利を受け入れるのを拒否した。全てのオーストラリア軍要員が外交パスポートでイラクにいるという事実、オーストラリア・マスコミに、入念に無視された事実が、彼らの駐留に対するイラクの態度について、軍隊を訓練するとい見かけの好意より、遥かに多くを物語っている。どんな場合であれ、オーストラリアが独立して活動していると想定するほど浅はかなことはない。ほとんど全ての外交政策同様、これに関しても、オーストラリア、単にアメリカが望むからそうしているのだ。
イラクの要求に対するアメリカの対応も教訓的だ。欧米マスコミが無視している、イラク・マスコミの複数の報道によれば、イラクから米軍は撤退して欲しいというイラクの要求に対するアメリカ合州国の対応は、非常に教訓的だ。そもそも、それは単に無視された。それからトランプは、アメリカはイラクに何十億ドルも投資した言う公式演説をした。アメリカ軍兵士が撤退せねばならないのであれば、アメリカはイラクへの「投資」に対する金銭的補償が欲しいと要求したのだ。
欧米マスコミのどれも、アメリカ合州国のイラク介入の歴史や、まして、もし補償が支払われるべきだとすれば、アメリカ占領の残虐さと、不法行為に対し、アメリカ合州国によるべきであることを指摘し、報じているものは皆無だ。
あからさまな恐喝に対するイラクの弱みは、彼らがアメリカに何十億ドルも抑えられていることだ。最近のベネズエラの経験が示している通り、アメリカ合州国は、紛争中の相手国の資産を没収することに良心の呵責がないのだ。
願わくは、イラク資産に対する最近の恫喝が、より多くの国がアメリカの行動のあからさまないじめと違法性を見て、他の国に、早く資産を移動して欲しいものだ。
イラクによる主権の主張に対するアメリカの対応について、更なる意外な事実が表面化している。一つは、もちろん、アメリカ合州国が、イラク石油生産の50%を、アメリカ合州国が支配するのを要求しており、つまり石油収入の維持だ。トランプはアメリカ合州国が石油は自給自足だと自慢しているのだから、その石油販売は、おそらくイラクには恩恵のない第三国だろう。
二つ目の事実は、イラク政府が、イラクの更なる発達に投資をしている中国に石油を売ろうとしていることだ。欧米マスコミはこの進展を全く報じず、イラク・マスコミが報じているトランプの対応に対する配慮もほとんどない。イラクのアーディル・アブドゥルマフディー首相によれば、トランプは、中国との合意を進めないようイラクに要求した。
更に、再びイラクの説明によれば、イラクがトランプの要求に従うのを拒否することで、イラク首相が殺される結果になるという。報じられているアメリカの対応を「拒絶することができない申し出をする」悪名高いマフィア戦術、つまり「言うことを聞かなければ、我々はお前を殺すぞ」と同等扱いしても、決して誇張ではない。
イラク政府のこうした報告を、欧米マスコミが報じないのは、ほとんど驚きではない。いわゆる「自由世界指導者」がギャング連中のように振る舞うのは驚きではない。しかしながら、欧米マスコミが、読者から隠そうと努めているのは現実だ。
オーストラリアを含め、どの欧米諸国も、このようなギャング行為と結び付けられることを望んでいる理由は、下記以外に説明がつかない。(a)彼らが、このような行動を認めているか、(b)各国指導者が、どんな反対意見でも、トランプが、イラク首相を殺すと脅したと言われているのと全く同じ方法で、彼らを次の目標にするのを恐れているかだ。いずれの選択も啓発的ではないが、連中の「法による統治」の厳守とされるものやら、他の許し難い行動に対する見え透いた弁解にもかかわらず、多くの欧米諸国の行動の良い説明になる。
執筆の時点で、既に本質的に、こう着状態になっている。アメリカ合州国は、挑発者に武器を与え、資金供給し、支援し、イラク政府に反対するデモを開始しているが、イラク首相はまだ生きている。
賞賛に値することに、イラクは、アメリカ合州国の要求に屈するのを拒否し、中国との契約への誓約を守った。この状況で、興味深い潜在的に重要な展開は、中国による、この地域の国々への関与増大だ。
もしアメリカ合州国が、法規に基づく国際秩序に本当に忠実な国だったら、彼らがその領土を占拠し、資源を盗んでいるイラクの独立政府の願望に従って、荷物をまとめて去っているはずだ。
だが、上記のとおり、アメリカ合州国は、決して自発的に、どんな国から、特にイラクほど貴重な資源に富んだ国から去っていないことを歴史が示している。この長編歴史物語は完結からはほど遠い。
ジェームズ・オニールは、オーストラリアを本拠とする法廷弁護士で地政学専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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2020年1月20日 (月)
アメリカ/中国「貿易協定」について
2020年1月18日
Paul Craig Roberts
まず理解すべきは、それは貿易協定ではないことだ。関税が、中国ではなく、アメリカ商品とアメリカ人消費者の負担になるのに彼が気づいて、トランプが関税から後退したのだ。トランプは、それを貿易協定と呼んで、彼が引き下がったのをごまかしているのだ。中国の取り引き部分は元々購入するつもりだったアメリカ商品購入に同意したことだ。
関税の目的は、輸入品価格を引き上げて、国内生産者を対外競争から守ることだ。トランプと彼の閣僚と経済マスコミが理解し損ねたのは、中国とのアメリカ貿易赤字の少なくとも半分が、アップルやナイキやリーバイのような企業の中国への海外移転で生産された商品であることだ。そうした海外移転生産による商品は、アメリカ国内で、アメリカ人に販売される場合、アメリカ・グローバル企業による輸入として扱われる。だから、関税の経費は、アメリカ企業と、アメリカ人消費者が負担するのだ。
関税は、海外移転生産の痛みをアメリカ企業に感じさせる効果的な方法ではない。もしトランプや、アメリカ政府が、海外移転した場所からアメリカに企業に戻したいと望むなら、そういう結果を実現する方法は、アメリカが企業に課税する方法を変えることだ。もしアメリカ企業がアメリカ市場のために、アメリカ人労働で、アメリカで生産したら、企業の利益に対し低率で課税するのだ。もし企業が外国人労働者で、外国でアメリカ市場のために商品を生産した場合、労働コスト節約分を無効にするだけ税率を高くするのだ。
私が何年もの間強調しているように、アメリカの製造業を海外移転することは、アメリカ合州国に大規模な外部コストをもたらしている。中産階級の雇用が失われ、良い仕事がなくなり、アメリカ製造業の労働者だった人々や家族の生活水準が低下した。都市や州の課税基盤が縮小し、公共事業を削減させ、都市や州の年金基金を損ない、減った。このリストには、いくらでも追加できる。これらの経費が、より低賃金の外国人労働者や、法律遵守のためのより安価な経費による利益増益の本当の経費なのだ。比較的少数の経営者と株主は、膨大な人数のアメリカ人に負担させるという代償で、利益を得ているのだ。
これは対処し、修正すべき問題だ。
Paul Craig Robertsは元経済政策担当財務次官補で、ウオール・ストリート・ジャーナルの元共同編集者。ビジネス・ウィーク、スクリップス・ハワード・ニューズ・サービスとクリエーターズ・シンジケートの元コラムニスト。彼は多数の大学で教えた。彼のインターネット・コラムは世界中の支持者が読んでいる。彼の新刊、The Failure of Laissez Faire Capitalism and Economic Dissolution of the West、HOW AMERICA WAS LOST、The Neoconservative Threat to World Orderが購入可能。
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記事原文のurl:https://www.paulcraigroberts.org/2020/01/18/remarks-on-the-us-china-trade-deal/
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