2020年1月24日 (金)
ポンペオ:アメリカ新政策はロシアや中国の指導者に対する無人機攻撃を認可
2020年1月20日
ゴードン・ダフ
New Eastern Outlook
トランプ大統領は、アメリカ法、国際法いずれとも全く相いれない、ウラジーミル・プーチン暗殺を、遠回しにではなく、新政策の一部として「検討対象」にした。これはワシントンが敵とみなすものに対する広範囲の政策ではないが、政権転覆を実現するための最高レベルの暗殺で、ロシアが特に標的としてリストに載ったのだ。
2020年1月13日、マイク・ポンペオ米国務長官は、スタンフォード大学フーバー研究所での政策講演で新政策を概説した。講演題目は「阻止の復活、イランの例」だった。
フーバー研究所はCIAと長いつながりの歴史があり、様々な「奇妙な連中」から秘密裏に民間資金を受け取っている。
- アメリカ・イスラム関係評議会が、イスラム恐怖症と憎悪をまきちらしているとしている、ブラッドリー財団
- アメリカの独立報道機関の創設者スティーヴ・カンガスの死への関与を含め、報道機関メンバーを脅迫するのに使う民間警備員軍団を雇用していた右翼過激派億万長者、故リチャード・メロン・スケイフが長らく運営してきたスケイフ・フミリー財団
- アドルフ・クアーズのフロント組織で、アメリカ合州国の右翼過激派とロシア憎悪に対する最大出資者の一つであるキャッスル・ロック財団
- 石炭産業からの利益で、地球温暖化否定論に対する最大出資者のコッホ財団
フーバー研究所が、その名に由来するハーバート・フーバー大統領は、長年、大恐慌最初の四年間、餓死しそうな国民の要求に対処し損ねたと非難されているが、ヒトラーの対ロシア戦争を可能にし、支援していた可能性さえある、強力な擁護者だった。
50年隠蔽された後、ようやく最近、ハーバート・フーバーの第二次世界大戦分析『裏切られた自由』がフーバー研究所から刊行された。その著作で、「裏切り」というのは、ヒトラーに対して戦争し、ロシアと一緒に参戦したことだ。
おわかりだろう。アメリカの保守主義者にとってのTDC、「上死点」は、常に闇の国家のための、ロシア破壊とロシア国民征服だった。
フーバー研究所演説で、ロシアに対する攻撃、ロシア指導部やプーチン大統領に対する攻撃さえ、彼が率いるアメリカ新政策の重要部分だとポンペオは明確に述べたのだ。
彼はさらにこう明らかにした。「阻止の重要性はイランに限定されない。あらゆる場合に我々は自由を守らなければならない。今までで最強の我が軍にするのがトランプ大統領の仕事の核心だ。」
これは、もちろん、イラン・ミサイルが、アメリカのパトリオット・ミサイル防衛を容易に破った、トランプによれば「死傷者無し」の屈辱的攻撃前のことだ。だが2020年1月16日、国防総省は、アサド空軍基地に勤務していた米兵11人が負傷し、治療のため、ドイツのラントシュトゥールに避難していると発表した。
トランプは嘘をついたが、戦略核兵器が、質的に、圧倒的に、アメリカ合州国の核兵器を大いに見劣りさせる国に対する、ポンペオの狂気じみた恫喝とは比較にならない。
「ソレイマーニー殺害は、敵の阻止を目指すアメリカ新戦略の例だ。これはイランにも、中国にも、ロシアにも等しく当てはまる。
これらの国々は、今我々がイランに対し、今までの中で最強の立場にある可能性を理解している。我々は今のところ自制しているだけだ。だが自由を本当に守るためには、全ての敵を抑止することが重要だ。それがトランプ大統領の仕事の核心だ。それが、我が軍をこれまでで最強にすべく、彼が懸命に努力してている理由だ。」
何カ月もの計画後、ポンペオ国務長官が、ISISに対する地上戦主要計画者、イランのソレイマーニー司令官の無人機暗殺を強行した際、彼はほとんどイランの反撃を予想していなかった。
わずか数日後、イランは、中東におけるアメリカの最大基地を衝撃的な弾道ミサイル攻撃で壊滅させ、アメリカに後退と、更なる制裁を課するよう強いた。
本当に重要な問題はポンペオ言説がどれだけ本物か、ポンペオとトランプがどこまで虚勢を張っているかだ。だが、一つ明確になったのは、トランプも、陸軍士官学校の「陸軍士官学校マフィア」と呼ばれるロシア嫌い過激論者の温床で、悪名高い「1986年クラス」の卒業生ポンペオも、本物の戦争の体験をしていないことだ。
デイリー・ビーストから:
「近刊のA Very Stable Genius: Donald J. Trump’s Testing of America中にある、この会議の説明が、将軍たちが、トランプに戦後アメリカ史の基礎の基礎を教えようとした際に、益々腹を立てる様子を描いている。
本は、トランプ大統領の任期が始まって6ヶ月、将軍たちが、アメリカの重要な同盟諸国に関するトランプの知識の「大きな欠落」を懸念して会議が行われたと書いている。狙いは国防総省のシチュエーション・ルームにトランプを招き、そこで軍幹部連中が、アメリカの同盟諸国が誰で、彼らがなぜ味方にしておく価値があるのか、彼らが一体どこにあるのかについて、彼を集中特訓することだった。(トランプは知らなかった)
だが会議は、ほぼすぐさま混乱に落ち込んだように思われる。ティラーソン国務長官や、当時のジム・マティス国防長官や、ゲーリー・コーン国家経済会議委員長が交互にトランプに彼らの要点を説明しようとした。だが彼が大いに腹を立てる前、そもそもトランプは常軌を逸して退屈なように見えたと言う。
それからトランプは、オバマ大統領のイラン核合意と、アフガニスタン戦争の長さに不平を言ったと言われている。いずれも、将軍たちは、穏やかにこれら複雑な地政学問題に対する彼の考えが、なぜ完全に正確ではないかもしれないかを説明しようとしたとされている。トランプがキレたのは、アフガニスタンに関する会話中だったという。
大統領は、アフガニスタン戦争を「負け戦」と呼び、将官連中にこう言ったとされている。「君たちは全員敗者だ。君たちは勝ち方を知らない。私は勝ちたい。我々はどの戦争にも勝っていない。我々は7兆ドル費やし、他の連中が石油を得たのに、我々は勝っていない。」この時点で、トランプは激怒の余り息も絶え絶えだったと報じられている。
彼の最も刺激的な発言は、想起願いたいが、骨棘障害とされるもののおかげで、ベトナム軍務を避けるのに成功した人物トランプが、居合わせた人々にこう言ったと伝えられている。「君らとは、私は戦争に行かない。君らは間抜けな赤ん坊集団だ。」
この発言に、部屋にいた全員あっけにとられたとされている。「はっきり、はらわたが煮えくり返っていた」ティラーソンは遠慮なく言うと決めた。国務長官は言った。「いいえ、それは間違いです。大統領、あなたは全く間違っている。どれも本当ではない。」それからすぐ会議が終わると、小数の親しい仲間にティラーソンが、こう言ったとされている。「彼は(罵り言葉部分は削除)馬鹿だ。」」
結論
ロシアを憎悪する支配体制にむけたポンペオ発言は、外国指導者に対する露骨な恫喝、軽率さ、思い上がり、それとも狂気だろうか?
悲惨なソレイマーニー暗殺でそうしたように、トランプ大統領はポンペオを支持する用意があるのだろうか?
我々は問わねばならない。このような声明がどうして、議会やマスコミから一言の抵抗もなしですむのだろう? アメリカは自殺願望なのだろうか?
ゴードン・ダフはベトナム戦争の海兵隊退役軍人で、何十年間も退役軍人と戦争捕虜問題に取り組み、安全保障問題で政府に助言もしているベテランズ・トゥデイ編集長、取締役会長。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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2020年1月24日 (金)
米軍支配の終わり:意図しない結果が多極世界秩序を作り出す
Federico Pieraccini
2020年1月20日
Strategic Culture Foundation
ジョージ・W・ブッシュ大統領から始まり、トランプに至るまで、アメリカは世界戦略上重要な地域での影響力だけでなく、戦力を投射して、適切に追従するのを好まない人々に意志を押し付ける能力を減らす、いくつかの失策をしてきた。
近年の若干の例が、一連の戦略上の過ちが、どのようにアメリカ覇権凋落を速めるだけか示すのに十分だ。
ABM + INF = 極超音速の優位
核武装した朝鮮民主主義人民共和国と地域の新進覇権国イランを含む、対決すべき「悪の枢軸」を宣言しながらの、2001年9月11日事件後、アフガニスタン侵略という決定は、アメリカを悩ませている最も重要な戦略問題の多くの理由だと言える。
アメリカはしばしば、当面の短期的脅迫に焦点を合わせることで、中期的、長期的目的を隠すことを好んでいる。それで、弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)からのアメリカ離脱と、NATOミサイル防衛システムの一部としての(海上と陸上用)イージス戦闘システム展開は、イラン弾道ミサイルの脅威からヨーロッパの同盟諸国防衛が目的だと説明された。イランがこのようなミサイルを発射する能力も意図も持っていなかったから、この主張は、ほとんど無理筋だった。
大半の独立評論家たちにも、プーチン大統領にも明確だったように、そんな攻撃用システムの配備は、ロシア連邦の核抑止力能力を無効にすることだけが目的だった。オバマとトランプは、ジョージ・W・ブッシュの例に忠実に倣って、ルーマニアとポーランドを含め、ロシア国境にABMシステムを配備した。
中距離核戦力条約(INF条約)を離脱するトランプの重大な決定に続いて、新START(戦略兵器削減条約)も放棄される可能性が高く、核拡散に関し世界を一層不安定にする。
モスクワは戦略バランスを復活させる新兵器開発のために全力を尽くすことを強いられ、2018年、演説で、プーチンが、ワシントンの先制攻撃妄想を正すのに役立つ極超音速兵器や他の技術的大躍進導入を世界に明らかにした。
ワシントンのプロパガンダが、これら技術上の躍進に引き起こされた世界的なチェス盤上の構造転換を認めるのを拒否しているが、冷静な軍事評価は、ゲームが根本的に変化したことを認めている。
この「恐怖の均衡」が存在する限り、核兵器が決して使われないことを保証するのに役立つ相互確証破壊(MAD)の抑止力理論を復活させるのに役立つアバンガルド 極超音速滑空体のようなロシア・システムに対して防衛はできない。モスクワはそれで、ワシントン自慢のABMシステムに対し、衝撃的核報復攻撃が可能なことを示して、力を通して平和を保証することが可能になる。
核報復能力を保証することに加えて、ロシアはワシントンの侵略をかわすため、世界で最も先進的なABMシステム開発を強いられた。このABMシステムは、パンツィル、トール、ブク、S-400や、まもなく、破壊的なS-500や、A-235ミサイル・システムを含む防衛ネットワークと統合されている。この結合されたシステムは、ICBMや、将来のどのアメリカ極超音速兵器も迎撃するよう設計されている。
ジョージ・W・ブッシュや、オバマやトランプが推進した侵略戦争は、ロシアと中国に対して、アメリカを核劣勢の立場に置くことになっただけだ。モスクワは明らかに、戦略的パートナーと技術革新の若干を共有し、北京に、ロシアのS-400のようなABMシステムや、極超音速兵器保有を可能にしている。
JCPOAはなし? 核保有イラン登場
イランに対して科されている継続的な経済的、軍事的圧力に加えて、(イラン核合意として、より良く知られているJCPOA)共同包括行動計画からのアメリカ離脱の最も早い結果の一つは、テヘランが全ての選択肢の検討を強いられたことだった。イランの指導部や政界実力者が常に、イスラム法に禁じられていると述べて、核兵器開発を望んでいないと主張してきたが、彼らのとって最良の行動方針は、平壌の例に従って、自身をアメリカ侵略から守るため、核抑止力を獲得することだろうと私は思う。
私の提案は、イラン・イスラム共和国指導部の意図とは一致しないかもしれないが、朝鮮民主主義人民共和国が、抑止能力を得た結果、享受している、アメリカに対する防衛能力が、イラン指導部に、それに倣うことの良い点と悪い点を慎重に検討するよう強いて、おそらく、核兵器保有を確認も否定もしない、核のあいまい性、あるいは核の不透明性というイスラエルの姿勢を採用することになるだろう。核兵器のない世界が理想的だが、朝鮮民主主義人民共和国の経験が証明する通り、核兵器の抑止力の価値は否定できない。
イランは戦争を望んでいないが、どのような核兵器の追求も中東での大火を保証しかねない。だが、特に多極環境では、核兵器は不安定化というより、むしろ安定化効果を持っており(核兵器を手に入れた後の)核戦争の危険はないと私はずっと主張してきた。
またしてもワシントンは、うかつにも、地政学上の敵の一つに、狙いと逆の方向で振る舞うよう奨励して墓穴を掘ることになった。アメリカは、地域での核拡散を止めるどころか、JCPOAをぶち壊し、核拡散の可能性を推進しただけだ。
JCPOA離脱というトランプの先見の明のなさは、ジョージ・W・ブッシュのABM条約離脱を思い出させる。ワシントンの動きは、モスクワとテヘランの当然の対応を引き起こし、特定の重要な分野で、競争相手に対して、不利になるだけで終わった。
アメリカの無敵神話に穴を開けたソレイマーニーの死
ソレイマーニー司令官死後、私は事件を検討し、出来事の地域に対する深遠な波及効果を考える二つの記事を書いた。
明白に思えるのは、ワシントンがその無謀な動きの結果を正当に評価する能力がないように見えることだ。ソレイマーニー殺害がイランの反撃を招くのは確実だった。たとえ我々がトランプが戦争を求めていなかったと想定しても(数カ月前に私はその理由を説明した)、アメリカのテロ行為に、イランが反撃するのは、どんな観察者にも明白だった。
反撃は、数日後に行われ、第二世界大戦後初めて、米軍基地が(弾頭火薬700キログラムの22発の)ミサイルの雨を浴びせられた。テヘランは、そう望めば、アメリカがそれを止めることができない、アメリカと同盟諸国の人員を何千人も、数分以内に壊滅させるのに必要な専門的な、作戦上、戦略上の手段を持っていることを示したのだ。
アメリカ・パトリオット防空システムは、数カ月前、フーシ派によるミサイル攻撃に対し、サウジアラビアの石油・ガス施設を防衛しそこねた失敗をまたもや繰り返し、仕事をし損ねた。
我々は、わずか数カ月で、フーシ派や、ヒズボラやイラン・ミサイルなどから自軍や同盟国を防衛する能力がアメリカにないのを確認した。トランプや将官は、どんなイランの反撃も、制御できない地域の大火を引き起こし、米軍基地や、石油インフラや、テルアビブ、ハイファやドバイのようなアメリカ同盟国の都市にも壊滅的打撃を与えるのを知っていて、イラン・ミサイル攻撃への反撃には気が進まなかったのだろう。
地域のアメリカ同盟諸国が、フーシ派のような連中のミサイル攻撃にさえ無防備なのを世界に証明した後、イランは、二つの米軍基地に多層ミサイル攻撃のピンポイント攻撃で、米軍は無敵だという認識と現実とのずれを強調して核心を突いたのだ。
結論
近年のワシントンの外交的、軍事的決定は、アメリカの命令を受け入れる気を益々なくし、ワシントンのいじめに対処するため、軍事的手段を獲得するよう追い込んで、ワシントンに一層敵対的な世界をもたらしただけだ。アメリカは最大の軍事大国であり続けてはいるが、アメリカの愚かさから、一部の重要な分野で、ロシアと中国が、アメリカを上回る結果になり、核報復攻撃に対し、自身を防衛する可能性さえなく、イランさえ、アメリカに成功裏に報復する手段を持つ状態になっている。
私が主張し続けているように、ワシントンの権力は、主にハリウッドの空想の世界が助けてくれる認識管理のおかげなのだ。最近のフーシ派によるサウジアラビア石油施設へのミサイル攻撃や、数日前のイランによるイラク内の米軍基地へのミサイル攻撃(一発も迎撃されなかった)は、ワシントンの軍事的脆弱性を明らかにするためにカーテンを開けたオズの魔法使いに登場する犬のトトのようなものだ。カーテンの背後の男に注意を払わないワシントンが、いくら懇願しても、役には立つまい。
アメリカが攻撃的になればなるほど、益々その戦術的、作戦的、戦略的限界が明らかになり、覇権喪失を加速するのに役立つに過ぎない。
もしアメリカがそのABMシステムのおかげで、報復核攻撃を心配する必要なしで核先制攻撃ができれば、絶え間ない一極覇権追求は現実的であり得るかも知れない。だがワシントンの競争相手は、阻止できない報復核攻撃が可能で、核先制攻撃に対し、自身を防衛する手段を持っていることを示して、相互確証破壊(MAD)の原理が有効であると伝えたのだ。だから、争う相手がいない世界的覇権国という立場を維持しようとするワシントンの努力は徒労なのだ。
アメリカ権益にとって極めて重要な地域で、ワシントンはシリア解放を阻止する作戦能力を持っていない。ワシントンが、軍事的に直接その意志を押しつけようと試みた際、ワシントンのハリウッド・プロパガンダと厳しい軍事的現実の相違を再度強調して、巡航ミサイルの約80%が、迎撃されたり、かわされたりした。
ジョージ・W・ブッシュや、オバマや、トランプの行動は、一極世界から離れ、多極世界へと向かう世界の移行を促進するのに、うかつにも役立っただけだ。トランプが、前任者を見習って、イランに対して攻撃的になるにつれ、アメリカの世界的な立場を弱め、敵を強くするのに役立つだけだ。
Federico Pieracciniは独立フリーランス・ライターで、国際問題、紛争、政治と戦略が専門。
個々の寄稿者の意見は、必ずしもStrategic Culture Foundationのものを意味しない。
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