2020年1月30日 (木)
アメリカは非合法駐留維持を通じて、イラクで一体何を実現しようとしているのか?
2020年1月24日
Salman Rafi Sheikh
New Eastern Outlook
2019年に、アメリカがシリアからの軍隊「撤退」を表明した際、私が当時書いていた通り、アメリカは、結局、イランやロシアや中国に対する、地域における米軍陣地確立の主要地域にするイラクに、軍隊を配置転換したに過ぎなかった。これはアメリカがシリア内の事態を、作戦行動し、あやつれる空間が急速に縮小する中、決定された。イラク内から飛来したアメリカ無人機攻撃によるソレイマーニー暗殺は、まさしくイラクでのアメリカ軍事駐留の目的が、イラク軍の「訓練」とイスラム国に対する、いわゆる「対テロ」作戦より、むしろイラン「封じ込め」である事実を強調するだけだ。
ISISは、もはやイラク領土を支配しておらず、その活動が見られるのは、ごくわずかな地域でしかない事実にもかかわらず、アメリカ軍撤退に関するイラク議会の決議の尊重を、マイク・ポンペオが拒絶したことで、アメリカの本当の狙いに、非常に多くの障害を生じている。そこで、今アメリカは、より従順で、アメリカ権益により敏感な人物をイラクのトップにつけようとしている。
ダボスでの世界経済フォーラムの際、アメリカ大統領は、イラク指導者たちとの会談に特別な注意を払った。アメリカ大統領は、イラクのサレハ大統領とイラクのクルド自治区政府指導者ネチルバン・バルザニと会談した。バルザニ/イラク・クルド人とアメリカのつながりは、イラクでの終わりのない無限のアメリカ軍事駐留のための懸け橋であるのみならず、中東で益々弱まりつつあるアメリカの立場を安定させる上で、重要な要因なのだ。イラク大統領は彼自身クルド人で、アメリカの手の者というだけでなく、イラクでの長期的軍事駐留にも役立つのだ。
ソレイマーニーに目標を定めた同じアメリカ攻撃で殺害された、アブ・マハディ・アル・ムハンディスの人民動員隊として知られている約100,000人強の準軍事部隊と対抗する立場を強化するのに使える唯一の支柱なのだから、彼らは当然アメリカ駐留を支持するだろう。人民動員隊は、主に様々なシーア派民兵で構成され、ISISと戦うだけでなく、イラク内にイランの影響力も投射している。人民動員隊が、ソレイマーニー/イランに支持されていた事実は、またもや、なぜ決定的攻撃で、アメリカが、ソレイマーニーとムハンディスの二人に標的を定めたかの説明になる。これら勢力は、アメリカの「イラクでの任務」にとって既に大きな問題で、アメリカを国外に押し出す上で役立ったかもしれない。
それゆえ、シリアのような敗北を避けるため、対抗勢力の指導部の首を切って、自身の立場と、イラク親米分子の立場の強化は、アメリカにとって常に必須だった。
だが、アメリカ軍撤退に対するイラク議会決議に留意するのを、アメリカが露骨に拒否した事実は、アメリカが持っていたどんな正当性も既に失ったことを意味している。イラクにおける米軍駐留は、既にイラクでの不法占拠になった。シリア政府がロシア軍隊を承認したのと異なり、アメリカ軍駐留を一度も認可したことがなかった、シリアでのアメリカ駐留の性格に非常に似ている。ポンペオが、アメリカは米軍事駐留の条件を再交渉する準備ができていると言ったが、それでこの駐留の性質が変わることはあるまい。ポンペオが言及した合意は、行政府対行政府の合意であって、実際は、決して議会に批准されない協定だ。イラクにおける米軍駐留の完全な違法性は、イランに対し、ワシントンが一体どこまで拡張できるかを示している。
アメリカ軍撤退問題に関するアメリカ国務省声明は、アメリカとイラクの行政協定によれば、この駐留の目的は、本来はISISと戦うことだったが、この目的が変化したことを明確にした。声明は「現時点では、イラクに送られるあらゆる派遣団は、中東からの軍隊撤退ではなく、どうすれば再び、我々の戦略的提携に最も良く貢献できるかという、我々の正しい適切な軍事態勢の議論をもっぱら行う予定だ」と述べた。
アメリカは、明らかにイラクを通して、中東におけるその存在感を強化する方法と手段を検討しているのは明らかだ。言い換えれば、2011年に、イラクがアメリカと交渉した、イラクにおける限定された駐留は、既に、戦略的駐留へと変わったのだ。
このような駐留は、人民動員隊がアメリカ軍に対する攻撃を開始する道も開くだろうが、アメリカが、反アメリカ分子を打倒して、彼らを親アメリカ党派で置き換えるため、イラクで、スンニ派分子に火をつけることも可能にするだろう。
言い換えれば、既にイラクは、石油事業支配、クルディスタン支援、イランに対する追い込みを含めアメリカがその権益を投射し守るための新たな発射基地に変わったのだ。
この駐留と撤退に関する譲歩のない拒絶は、今イラクが、アメリカ中東戦略の目玉であることを示している。ここから、アメリカは、イランとの緩慢な長期戦争を戦うだろう、ここから、アメリカがロシアと中国を監視するだろう。差し迫ったアメリカとタリバーン間協定ゆえに、これはおそらく事実だ。タリバーンとの合意後のアメリカ撤退で、イラクが、アメリカが独断的に、不法にさえ軍隊を維持できる唯一の国として残るだろう。
Salman Rafi Sheikhは国際関係とパキスタンの外交、国内問題専門家。オンライン誌New Eastern Outlook独占記事。
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櫻井ジャーナルには下記記事がある。
2020年1月30日 (木)
ダボスでトランプと会ったのを非難されたイラク大統領
Stephen Lendman
Global Research
2020年1月23日
水曜日、元イラク・クルディスタン地域首相で、現イラク大統領のバルハム・サリフはダボスの世界経済フォーラムの際に、トランプと会った。
彼は、ドナルド・トランプと会ったら帰国した時に歓迎されないという国内シーア派民兵の警告を無視したのだ。
イラクの大統領職は、通常クルド人に保持され、ほとんど象徴的だ。イラクのクルディスタン当局は、国におけるアメリカ部隊の継続的駐留を望んでいる。マハディ首相や過半数の議員や大半のイラク国民は反対で、外国軍による駐留占領終わらせたがっている。
トランプ政権のイランのソレイマーニー司令官とイラク人民動員隊PMU/ カタイブ・ヒズボラ創設者ムハンディス暗殺後、反米感傷が高まっている。
この集団の幹部アブ・アリ・アル・アスカリが、サリフがトランプと会うことに警告し、「民意に違反し、流された聖なる血を無視した」と彼を非難し、こう付け加えた。
「我々はバルハム・サリフが、愚かなトランプと彼の殺人者部隊と会わないという誓約を守る必要性を強調したい。」
「だから我々は言いたい。「あなたは歓迎されない。我々の自由な子供たちは、あなたを高潔な力強いバグダッドから追い出すことに尽力するだろう。」
カタイブ・ヒズボラ報道官ムハンマド・モヒは、サリフがトランプと会ったことは「イラク人の血の損失に対して大いに屈辱的で思いやりがない」と言い、付け加えるた。
「トランプはイラク国民に対し許せない罪を犯した。イラクの主権とその殉教者の血に対して敬意を持っていない人物と、サリフは一体どうして協力できるのか?」
「彼はイラク国民に敵対した。我々は彼に辞任し、バグダッドに戻らないよう要求する。彼は、我々には、もう歓迎されない。」
別のPMU集団ハラカット・ヒズボラ・アル・ヌジャバは、もしサリフがトランプと会うたら「イラクとイラク国民は、その手がイラク人の血で濡れている犯罪者、テロリストと協力した人物を受け入れたり歓迎したりしない」と言って、こう付け加えた。
「大半のイラク人は、この会談を危険と考えている。我々はもはや(サリフ)を我々の代表として受け入れず、彼がイラク議会の意志に反した責任を負うまで止めない。」
「彼は辞任し、バグダッドから追い出されるべきだ。」
他のイラク当局者はサリフとトランプとの会談はイラク「主権」を侮辱していると述べた。
会談後、彼は国民の反米感傷に逆らい、偽って両国関係を「非常に良い」と言い、こう付け加えた。
彼とトランプは「会話は非常にはずみ、我々は基本的に事態を抑制し、落ち着かせる必要性について、非常に率直に話し合った。」
「今とは更なる対立の時ではない。地域の多くの当事者と私の会話で、皆、ほとんど全員が言っている「事態は手に負えなくなっている。何とか収拾してくれ。自制だ。」
ダボスでの演説で、彼は挑戦的に「イラクは、ISILに対する戦いで(原文のまま)アメリカ率いる連合が提供し続ける軍事的、経済的援助の世話になっている。」と述べた。
ジハード集団に対するアメリカの支援で、以前、ワシントンに指揮された戦士によって、とりわけ、モスルやアンバール県で行われた破壊を彼は無視した。
トランプ政権は、何千人ものダーイシュ・ジハード戦士を、シリアからイラクに移動させていると言われている。それは、アメリカによるイラクの継続的占領を認めるようバグダッドに圧力をかけるための口実として、以前と同じように、仕掛けるのを計画しているのだろうか?
トランプは、マハディ首相とイラク国会議員がアメリカと同盟諸国の軍隊がイラクからの撤退を望んでいることについては何も言わず、彼の政権は「(自分たちの条件で)物事をすすめる」つもりだと挑戦的に述べた。
しかも代わりに、こう付け加えた。「我々は様々なことについて、あなた方に話をしており、あなた方は、何であれ我々がすることを聞いているのだ。」
「我々がしていることのようにおい、我々は(彼・それ)らが好きだ、我々は(原文のまま)非常に良い関係を(これまでに)持っている。」
「何が起きるか見ようではないか。語るべき多くの非常に前向きなことがある(原文のまま)。」
イラクが望まれてない/広く嫌われているアメリカと同盟諸国の軍隊によって占領されたままでいる限り、主権は名ばかりで、安全保障は損なわれたままだ。
バグダッドはこれら軍隊の駐留を終わらせたいと望んでいる。トランプとポンペオは挑戦的にイラクの国民感情を無視している。
影響力のあるシーア派聖職者ムクタダ・アル・サドルによる、イラク駐留アメリカ軍隊に反対する「百万人行進」の呼びかけに応え、金曜日にバグダッドで大規模集会が計画されており、サドルは、こう言っている。
もしトランプ政権が「アメリカ軍を追いだすというイラクの政治的、国民的意志を無視し続ければ」トランプ政権は報いを受けることになる。
以前トランプは、もしバグダッドが米軍撤退を要求し続けるなら、「これまで一度も見らたことがないような」制裁をイラクに課すと脅した。
トランプ政権によるバグダッドでの、ソレイマーニーとムハンディス暗殺の後、マハディ首相は電話でポンペオに「議会決定を実施する仕組みを設定するため、イラクからの外国軍隊の確実な撤退のために(アメリカ)代表団をイラクに送るよう要請した」
「アメリカ軍がイラクに入り、イラク当局の許可なく、無人機がイラク領空を飛行しており、これは二国間条約の違反だ。」
ポンペオは、アメリカ軍は撤退しないと答え、トランプ政権は、イラクでの、より大規模なNATO軍の駐留と、国防総省の関与の再構成をイラクと議論するだけだと補足した。明らかに、バグダッドには受け入れない内容だ。
水曜、イラクPMUのカイス・アル・ハザリは「我が最愛の国家が特別な、例外的な状況を経験している」と言って、こう付け加えた。
「米国攻撃が、ハシド・アッ・シャービ(PMU)と対テロの指導者の息子たちを標的にした後、アメリカ軍事駐留の真実が、とうとう明らかになり、アメリカ軍隊はイラクを助けるために派遣されているのではなく、イラク政府が彼らにそうするよう要請した時に、即座に撤退しないことが明らかになった。」
「我が国は、今占領状態で暮らしている。」
「イラク国家は、屈辱、恥、占領や攻撃を拒絶する。」
「トランプはイラク石油を支配したいと言った。」
「イラク国民はアメリカのダーイシュ、タクフィール・テロ・シナリオを阻止した。」
「我々はアメリカに我が国からの撤退を強い、我が国からアメリカ駐留を一掃する」。
この目標達成がアメリカ侵略と占領に破れたイラクが主権を取り戻す唯一の方法だ。
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受賞した著者Stephen Lendmanはシカゴ在住。彼はlendmanstephen@sbcglobal.netで連絡できる。彼はグローバリゼーション研究センター(CRG)研究員
編集者・寄稿者としての最新本は「Flashpoint in Ukraine: How the US Drive for Hegemony Risks WW III (ウクライナの発火点:アメリカの覇権衝動が、いかに第三次世界大戦の危険を冒しているか」という書名。
http://www.claritypress.com/LendmanIII.html
彼のブログは、sjlendman.blogspot.com。
写真: 水曜日、記者会見でアメリカとイラクが「非常に良い関係」(AFP)を持っていたと記者団に語った、左 サリフ、右 トランプ。
本記事の初出はGlobal Research
Copyright Stephen Lendman、Global Research、2020