自民党の政治家の肩書を使って、5月にセミナーを開き、持続化給付金の不正受給を指南していたとして、男ら4人が詐欺容疑で逮捕されました。

 

持続化給付金は、本来、新型コロナの影響を受けて、売り上げが減った事業者へ国から支給されるものです。しかし受給資格がない者が、ウソの確定申告書を税務署に提出して、不正受給を行う事件が後を絶ちません。そこには必ず不正受給を指南する人物がおり、それを広めてしまう構図になっています。

 

今回、中心的な立場で不正受給の方法を教えていたのは、加藤裕容疑者です。

 

この男は、実際に自民党の熊田裕通総務副大臣の事務所スタッフを、昨年秋の10月頃までしており、名刺も持っていたということですので、政治家の肩書を使って犯行に及んでいたとみて間違いないでしょう。

 

この加藤容疑者が指南役として、書類の偽造を・申請する行政書士の男とつるみ中心的な立場となり、勧誘者に指示して、名義を貸して不正受給をする者を募って行う。

 

まさに3者が一体となった形で100万円の不正受給が数多く行われており、絵にかいたような組織的な持続化給付金詐欺の構図になっています。

 

菅総理と握手の写真で「抜け道」信じた男も…自民党衆議院議員の元スタッフ 持続化給付金詐取の疑いで逮捕 (東海テレビ)によると、

 

加藤容疑者は、名古屋市内でセミナーを開いた際に「グレーゾーンのところをグレーゾーンにしない方法」「自民党という立場を使って、抜け道を知っている」などと言い、不正受給を持ち掛けていました。

 

すでに逮捕された大学生らは、この男から「菅氏とも握手している写真を見せられた」ゆえに信じてしまったとも言っているそうです。

この男が起点となって、どれだけの不正受給の広がりなったかわかりません。

 

詐欺では、肩書を使って相手を信用させようとします。自分の経歴を高く偽ったり、政治家などの著名な名前を使うのは、詐欺における常とう手段です。

 

実は、昨年8月の 騙した者はダマされる。持続化給付金詐欺に仕掛けられた二重の罠。真の狙いとは!?の記事内で、次のような事例をあげました。

 

知人のもとに「個人事業者としてコロナ補助金を申請代行します」というメッセージが届き、申請の際の必要書類に「お金を受け取る際の銀行口座の通帳、運転免許証、マイナンバーカードのコピー」とありますので、持続化給付金の不正受給の可能性は極めて高い。

不正受給の情報が、私たちの身の回りに広く出回っていることを話し、注意喚起したのですが、実は、これには続きがあります。

メッセージには「政治家につながっている会計事務所が申請の代行をしてくれる」とあり、数十万円が手に入るという内容でした。

 

このケースが今回の事件とつながっているかはわかりませんが、政治家という肩書を使い、不正だとは気づかせないような文言で、応じてくれる人を募ろうとしていたのです。

 

クローズされた環境下で騙す

 

今回の事件を見ていて、気をつけてほしいことが、もうひとつあります。

 

それは、セミナーというクローズされた環境下に連れ込んで、「ここだけの話」と言って騙してくるやり口です。

 

セミナー形式になると、受講者は受け身になって聞いてしまいますから、講師の話が嘘だったとしても、それが見抜きづらくなり、心に突き刺さりやすくなります。特に、若い人たちは。それが、これまでに聞いたことがない新しい内容であれば、なおさらです。

 

それに、受講する人の多くは、わざわざ足を運んで聞いているので、「何か自分の身になるものを持って帰らなければならない」と思って、真剣に聞いていますので、詐欺をする者にとっては、実に騙しやすい環境下になのです。

 

それゆえに、詐欺や悪徳商法では、セミナー形式での教え込みをよく行います。

 

くれぐれも、セミナーでの内容は鵜呑みにせずに、その場を離れてから、冷静になって内容を吟味するようにしてください。それをしなければ、相手の術中にはまることになります。

 

これまで、不正受給を流布させる方法は、知人、友人を介しての勧誘や、SNS情報を載せて友人、知人や、見ず知らずの人も広く勧誘する。また、遊戯施設でゲリラ的な勧誘がありました。さらに今回のように、セミナーを使って声掛けをする手法もあることがわかります。

 

いずれにても、今回はセミナーを通じて、「グレーがグレーにならない方法」を信じて、不正受給の方法が伝播していったことは、間違いありませんので、セミナー参加者はすべて洗い出される必要があります。

 

そして、そこから枝葉のように分かれて不正受給を行った人たちを追及してくことで、不正受給の解明がより進んでいくことでしょう。

 

いまだ不正受給をしていながら、お金を返還せず、警察に相談していない人も多くいるかと思いますが、すべてが白日のもとにさらされる前に、勇気を出して、罪の告白への一歩を踏み出してほしいと思います。