亡き次男に捧げる冒険小説です。
===============
一六
テーリは義兄弟の戦力を詳細に把握した。ハーラの《聖騎士》と《生得魔術師》の能力、そして使えるようになった呪文。テーリの《野伏せり》と《魔法技師》の能力。ナーレの《僧兵》と《吟遊詩人》の能力。それぞれが《戦闘クラス》と《魔術クラス》を有する《マルチクラス》の冒険者であった。これはあらゆる局面に対応できる汎用力のある《パーティー》といえる反面、専門性の低い器用貧乏な集団ともいえる。しかし自分たちのできることがわかっていれば、それを十全に発揮できる戦況を整えれば良い話だ。特に今回のような狭い洞穴に隠れている魔獣や《ゴブリン》は範囲攻撃の呪文をもつ義兄弟にとっては格好の餌食といえた。
洞穴の内部構造さえわかれば、あとは適切に魔法の罠を張り巡らせるだけである。魔獣を一網打尽とするための命懸けの情報収集が始まった。
金属の擦れる音がうるさいプレートメールを着込むハーラには、藪の中から周囲を警戒する見張り役になってもらった。身軽なナーレを万が一の護衛として連れ立って、テーリの探索能力を頼りに洞穴への初めての「ダンジョン・アタック」が始まった。
【第2話 一七に続く】
次回更新 令和7年2月25日火曜日
===============
洞窟に潜入するテーリとナーレ。魔獣の巣穴を丸裸にせよ!