ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Martina McBrideマルティナ・マクブライド - Eleven

2012-02-20 | Martina McBride マルティナ・マクブライド レビューまとめ
 11曲をフィーチャーし、2011年の11月11日にリリースされた、マルティナ通算11作目のアルバム、その名もズバリ「Eleven」。タイトルは他愛ないストレートなものですが、20年近く所属したRCAを離れ、心機一転Republic Nashvilleに移籍しての第一弾、並々ならぬ意欲を込めて制作されたアルバムです。プロデューサーはティム・マグロウやシュガーランドのプロデュースで知られる、Byron Gallimore。移籍の経緯やレコーディングについて、マルティナ自身が語っているコメントを交えて紹介しましょう。

 2010年RCAとの契約期限を迎えた時、マルティナは考えました”私にはここに沢山の友達がいて、はっきり偉大な仕事をしてきたわ。でも、立ち止まって’私にはこれまでと違う何かが必要’と言わなきゃいけない時が来たのよ。チョッとしたリスクだったわ。でも正しいと感じる事をすべきなの”多くの選択肢があった中で、最終的にScott Borchettaが立ち上げたRepublicへの移籍を決定。”Scottがレーベルのアーティストとやってきた事を冷静に見て、そして彼と会って音楽に対する強い興味や情熱~ビジネスだけでなく音楽に対してのね~それらを持っている事を知ったの。このレーベルはとても音楽中心なのよ。私は感銘を受けたわ””彼らは’OK!サインして彼女がこれまでレコーディングしてきたのと同じようなスタイルの作品を制作し、何が起こるか見よう’ってな感じではなくて、’私達は貴方が欲しいんだ。そして貴方のキャリアで最高のレコードを制作したいんだ’って感じだったのよ”


 Borchettaはマルティナに重大な提案をしました。マルティナは言います”Scottと話し合った時、彼は言ったの’ナッシュビルの外でレコーディングする事を考えた事はあるかい?’って。彼は続けたわ’君はその事を考えるべきかもしれないよ。僕は君が快適なゾーンから外に出る必要があると思っているんだ’彼は、私がナッシュビルで沢山の帽子を被っている事を理解していたと思うの。私はパート・タイム・ミュージシャンでなくてはいけなかった、第一に私は母親だったから。毎日子供を学校まで送っていって、毎晩夕飯の献立を考えていると、音楽に集中できるのはせいぜい2-3時間だったわ”そしてマルティナは、ナッシュビルのセッション・ミュージシャンと共に、アトランタのスタジオでのレコーディングに臨んだのです。

 アトランタではかつてなく音楽制作に集中できたよう。”音楽を作る以外、何もする事がなかったわ”と笑うマルティナ。”ショッピングも出来なかったし、レストランにも行かなかった。毎日、ホテルから駐車場を横切ってスタジオに通う毎日だったわ。一日中音楽に没頭したの”その贅沢な時間の中で、マルティナはソングライティングにも時間を費やす事ができ、今回は過去最高の6曲で共作者としてクレジットされています。”考えたの’私は今十分な時間を得て、そして3人の娘達は一日中学校にいる’そのおかげで、娘達に時間を取られる心配をする必要がなかったのよ。私はソングライターを愛しているし、レパートリーの全てを自作するようなアーティストじゃない。でも、皆が私に曲作りを勧めてくれたり、私と共作しようと望んでくれるの。で、もう少し曲を書こうと決めたわけ。そのおかげで、今回のアルバムは私のパーソナリティの中の、多くの違う面をお見せする事が出来たと思うわ”


Pat Monahanとマルティナ

 この新しい挑戦の効果は作風にハッキリ表れていて、本作はかつての作品群と比べると肌触りがドライで幾分かライブ感があり、また曲想もとても幅広くなっていると感じます。パワフルな歌声もまだまだ健在。16歳になる娘、Delanyとのチョッとしたコミュニケーションのトラブルをヒントに書かれたリード・シングル"Teenage Daughters"は軽快なカントリー・ロック、続くセカンド・シングル"I'm Gonna Love You Through It"は、マルティナらしい重厚なバラードで、ここらはわりと想定内かな。でも、レゲエ調の"Always Be This Way"や、ミュージカル映画のテーマソングみたいな"Broken Umbrella"はユニークで新鮮な空気をアルバムに取り込んでいますね。CMTの番組で共演したサンフランシスコのロック・バンド、TrainのPat Monahan(曲自体も彼の作品)とのデュエット・スロー"Marry Me"における、Patのシャガレ声もこのアルバムの質感を決定している要素になってると思う。"You Can Get Your Lovin' Right Here"では、重厚なリズムとホーンセクションをフィーチャしてメンフィス・ソウル風な味付け、マルティナのR&Bルーツを垣間見させます。

 このソリッドな雰囲気のアルバムを聴いていると、甘さと志の高いメッセージ性が絶妙に同居していたかつてのマルティナがチョッピリ懐かしくなる時もありますが、一旦はメインストリーム・シーンのトップを極めながらも、貪欲に新しい芸術を模索するその姿に脱帽と言う他はないです。


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1 コメント

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Martina McBrideの一ファンです。 (shinkunnopapa)
2012-05-13 23:39:41
初めてコメントです。2年半ほど前に始めたtwitterをきっかけに昔良く聴いていたAnne MurrayとBryan Adamsをフォローしたところたまたま彼女の名前が共通のフォロアーとして出ていました。30年もの間カントリーミュージックを聴いていませんでしたので彼女の名は全く知りませんでした。どのような歌い手さんかと思いYOU TUBEで最初に観たのがGod Bless AmericaとIn My Daughter's Eyesでした。その歌唱力のもの凄さに圧倒されてたちまちファンになってしまいました。それ以降取り付かれたように(少しオーバーですが)毎日聴き続け、日本の人があまり入っていなそうなファンサイトに投稿したりtwitterで眺めたりで今に至っています。日本で彼女のような歌い手さんは思い浮かびませんが、テレビで流れる日本の音楽番組を観るにつけ、エンターテイメントについての考え方が違うのかなと思ったりしています。私の周りにはMartina McBrideを知る人物は残念なことにほとんどおりません。
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