1999年のデビュー以来、昨年までに1000万枚のレコード・セールスを達成したブラッド・ペイズリー。彼の、クリスマス・アルバムも含めると8枚目のオリジナル・アルバムがリリースされました。昨年秋にリリースの、ブラッドのギター・プレイをフィーチャーしたインスト中心のイベント・アルバム「Play」からでは、たった半年でのリリース。この創作力は脱帽ですね。デビューの頃は、コンテンポラリー化が顕著になりつつあったカントリー・フィールドの中で、貴重なトラディショナリストとして登場した彼。2000年に熊本のカントリー・ゴールドで来日した際にも、「カントリーの良い所は、幅広いスタイルが楽しめる事。私はトラディショナルな曲を書きますが・・・」と語っていました。その彼もキャリアを重ねる毎に、トラディショナルな軸はガッチリ固めつつも少しづつスタイルの幅を広げ、そしてキャッチーなメロディ・センスを駆使して現在のアメリカン・ミュージック界での地位を確固たるものにしたのです。歌入りレギュラー盤としての前作「5th Gear」(2007年)は、アリーナでのパフォーマンスを意識した必殺のシングル・ヒット"Ticks""Online"や"Aii I Want Is A Car"のソリッドなウェスト・コースト・ロック調サウンドが印象深いアルバムでした。対して今作「 American Saturday Night」では、間の「Play」で披露したモダンでスムーズな曲調やR&Bスタイルをも吸収してテリトリーを広げながら、ブラッドらしいトラディショナル・ベースのスタイルとクオリティをキープした力作だと思います。リード・シングルのモダンなで荘厳なバラード"Then"は既にチャート1位を獲得してますしね。
オープニングのタイトルソング"American Saturday Night"は、クリアなテレキャスターのリフがペースを創る、シャープなリズム・ナンバー。スッキリしたノリが新鮮で小気味イイ。冒頭こう歌われます。”彼女はブラジルのレザー・ブーツでドイツ車のペダルを踏むのさ。ビートルズの"バック・イン・ザ・USSR"を聴きながらね。今夜世界中を渡り歩くんだよ。でも海外に行くわけじゃない。ストリート・フェアでボーイフレンドに会いに行くのさ」。そしてなんと、アルバムからのセカンド・シングル"Welcome To The Future"には、我が国日本について触れた歌詞が!”僕のお爺さんは第二次大戦で日本人と戦ってたんだ。フィリピンの基地からお婆さんにたくさんの手紙を書いてたんだよ。僕は現在の変わり様をお爺さんとお婆さんに見てほしいな。だって僕は今朝、東京の会社とビデオで会議をしたんだよ」たとえ話のフィクションなのか、彼自身の事を歌っているのかどうかは?ですが、東京のレコード会社と日本盤の話をしているのだったら我々にとって嬉しいニュース。(暗い世相の中にあって)この希望ある未来をテーマにした8ビートのリズム・ナンバー、未来風の雰囲気を演出するために80年代のシンセサイザーっぽいキーボード・サウンドを要所要所にフィーチャーしていて、チョッと驚きました。このキーボードの音(それと、コーラスもですけど)、何となくチープ?ってな感じもしたのですが、アコースティック・ギターのストロークやサウンドトータルの軽やかな質感に結構馴染んでいるのです。ブラッドとChris Duboisの共作。
今から17年前ですが、日本の事を取り上げたカントリー・ソングとして記憶しているのが、Tim Mensyという有能なソングライターのアルバム「This Ol' Heart」に収録されていた"America For Sale"。歌いだしはこんな感じ。”日本に所有されるアメリカ産。僕たちの父の生み出したものが、外国人の手の中に・・・”当時の日本はバブルの時代、ソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収した事が大いに話題になっていました。そうした中で、この曲の自国愛からにじみ出た感傷的なメッセージが、とてもカントリー的に感じられたものです。対して、ブラッドが先の2曲で提示した、自国以外の消費財や文化をごく自然に受け入れ、共存共栄していこうとするメッセージは、カントリーとしてはなかなかに新鮮です。かつてはトラディショナリストと言われた彼が、こうした価値観を提示した事に、カントリー・ミュージック、そしてアメリカの”変化”を感じます。
コンテンポラリーでキャッチーなメロディとオーソドックスな様式がシッカリ絡み合った、ブラッドならではの逸品が"Water"。このアルバムのピークの一つです。イントロとラストに挿入される水滴の音がその気持ちよさを引き立てます。弾むリズムにペダルスティールやフィドル、そしてブラッドのギターが絡んで、現代カントリー・ミュージックの粋がここにあります。そしてもう1曲のピークが、カントリーならではののどかさに溢れたミディアム"Anything Like Me"。ラストで一瞬”Me~"と歌う2歳の息子、William Huckleberryにインスパイアされたナンバーです。わが子の事となると、やはり気合が入るのでしょう。もちろん、お約束のトラディショナル・ナンバーもきっちりラインアップしてます。お得意のハイスピード・チューン"Catch All The Fish"ではソリッドでスペイシーなベイカーズフィールド流ギター・ソロが冴え渡り、クラシックなホンキー・トンク・シャッフル"The Pants"で、ブラッドが決してカントリーの伝統を忘れる事がない事をPRしてくれます。
今作の新たなトライとして、ヴィンテージR&Bスタイルの"She's Her Own Women"や、ソウルフルな曲調のミディアム・スロー"Oh Yeah, You're Gone"がユニーク。「Play」でB.B.キング・ナンバーをモノにした事がキッカケだったのかもしれません。どこまでも自分の音楽スタイルを広げようとする意欲と、軽快ながらもソリッドで強固な軸がぶれないブラッドらしさを失わない事にあらためて嬉しくなってしまうのです。
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オープニングのタイトルソング"American Saturday Night"は、クリアなテレキャスターのリフがペースを創る、シャープなリズム・ナンバー。スッキリしたノリが新鮮で小気味イイ。冒頭こう歌われます。”彼女はブラジルのレザー・ブーツでドイツ車のペダルを踏むのさ。ビートルズの"バック・イン・ザ・USSR"を聴きながらね。今夜世界中を渡り歩くんだよ。でも海外に行くわけじゃない。ストリート・フェアでボーイフレンドに会いに行くのさ」。そしてなんと、アルバムからのセカンド・シングル"Welcome To The Future"には、我が国日本について触れた歌詞が!”僕のお爺さんは第二次大戦で日本人と戦ってたんだ。フィリピンの基地からお婆さんにたくさんの手紙を書いてたんだよ。僕は現在の変わり様をお爺さんとお婆さんに見てほしいな。だって僕は今朝、東京の会社とビデオで会議をしたんだよ」たとえ話のフィクションなのか、彼自身の事を歌っているのかどうかは?ですが、東京のレコード会社と日本盤の話をしているのだったら我々にとって嬉しいニュース。(暗い世相の中にあって)この希望ある未来をテーマにした8ビートのリズム・ナンバー、未来風の雰囲気を演出するために80年代のシンセサイザーっぽいキーボード・サウンドを要所要所にフィーチャーしていて、チョッと驚きました。このキーボードの音(それと、コーラスもですけど)、何となくチープ?ってな感じもしたのですが、アコースティック・ギターのストロークやサウンドトータルの軽やかな質感に結構馴染んでいるのです。ブラッドとChris Duboisの共作。
今から17年前ですが、日本の事を取り上げたカントリー・ソングとして記憶しているのが、Tim Mensyという有能なソングライターのアルバム「This Ol' Heart」に収録されていた"America For Sale"。歌いだしはこんな感じ。”日本に所有されるアメリカ産。僕たちの父の生み出したものが、外国人の手の中に・・・”当時の日本はバブルの時代、ソニーがコロンビア・ピクチャーズを買収した事が大いに話題になっていました。そうした中で、この曲の自国愛からにじみ出た感傷的なメッセージが、とてもカントリー的に感じられたものです。対して、ブラッドが先の2曲で提示した、自国以外の消費財や文化をごく自然に受け入れ、共存共栄していこうとするメッセージは、カントリーとしてはなかなかに新鮮です。かつてはトラディショナリストと言われた彼が、こうした価値観を提示した事に、カントリー・ミュージック、そしてアメリカの”変化”を感じます。
コンテンポラリーでキャッチーなメロディとオーソドックスな様式がシッカリ絡み合った、ブラッドならではの逸品が"Water"。このアルバムのピークの一つです。イントロとラストに挿入される水滴の音がその気持ちよさを引き立てます。弾むリズムにペダルスティールやフィドル、そしてブラッドのギターが絡んで、現代カントリー・ミュージックの粋がここにあります。そしてもう1曲のピークが、カントリーならではののどかさに溢れたミディアム"Anything Like Me"。ラストで一瞬”Me~"と歌う2歳の息子、William Huckleberryにインスパイアされたナンバーです。わが子の事となると、やはり気合が入るのでしょう。もちろん、お約束のトラディショナル・ナンバーもきっちりラインアップしてます。お得意のハイスピード・チューン"Catch All The Fish"ではソリッドでスペイシーなベイカーズフィールド流ギター・ソロが冴え渡り、クラシックなホンキー・トンク・シャッフル"The Pants"で、ブラッドが決してカントリーの伝統を忘れる事がない事をPRしてくれます。
今作の新たなトライとして、ヴィンテージR&Bスタイルの"She's Her Own Women"や、ソウルフルな曲調のミディアム・スロー"Oh Yeah, You're Gone"がユニーク。「Play」でB.B.キング・ナンバーをモノにした事がキッカケだったのかもしれません。どこまでも自分の音楽スタイルを広げようとする意欲と、軽快ながらもソリッドで強固な軸がぶれないブラッドらしさを失わない事にあらためて嬉しくなってしまうのです。
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昔からアメリカンロックが好きでしたが、結婚して子育てに奮闘して以来ロックにはご無沙汰。
最近単身赴任で時間ができて(家族と離れるのは寂しいんですけどね)インターネットラジオを聴くようになり、ヒューストンのKILTというラジオ局をよく聴くようになっていたところ頻繁にオンエアされていたのがブラッド。
存在を知るのは5thGear以降ですが、大好きになりました。
同じ気持ちの人と逢えて嬉しいです(職場では話題にしたところでまずわかってもらえないし…)。
初めまして。コメント頂き有難うございます。
ヒューストンのネットラジオを聴かれてるというのが、イカシていますね。
単身赴任ご苦労様です。カントリーは、主には責任ある会社勤めや世帯持ちの方々にお奨めの音楽なのだと思います。音楽だけでなく、歌詞も一般のポップに対して落ち着いてて、和めるものです。今の生活に、癒しや戒め、そして勇気を与えてくれます。
日本で会社勤めをしていると、なかなか自分の楽しみのために音楽を聴く事が出来なくなります。でも、忙しいからこそ、音楽のようなささやかな楽しみが、なにより貴重なのだと思います。カントリーはピッタリです。
ブラッドは日本にも来ていますし、ファンは日本中に散在している筈と思います。
今後ともよろしくお願いいたします。
特に「Anything Like Me」は心に染みました。自分も5才と1才の息子がいるもので。日常のちょっとした事を実にうまく歌いあげますよね。
嬉しいコメントを有難うございます。Dさんのようなカントリーの理解者がおられる事が心強いです。
今後ともよろしくお願いいたします。