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新年明けましておめでとうございます。威勢良くこの人でスタート。
ハンサムでスター性抜群のシンガー・ソングライター&ギタリスト、Keith Urban(キース・アーバン)がベスト・アルバム「グレイテスト・ヒッツ(Greatest Hits)」をリリースしています。メインストリームのカントリー・スターとしては異例の長髪のロッカー的風貌。そして Dire Straits(ダイアー・ストレイツ)のMark Knopfler(マーク・ノップラー)にも影響されたというロック・マナーの染み込んだギター・プレイと、ソウルフルでセクシーなしわがれ声を武器にしたコンテンポラリー・カントリーで人気を確立。またアコースティック・ギターの弾き語りで切々と歌う洗練されたバラード曲も魅力の一つ。トラディショナルなBrad Paisleyとは見事な好対照で、ある意味良きライバルと言えるでしょう。2005年にはCMA AwardsのEntertainer of the Year を獲得するまで登りつめました。奥さんがハリウッド女優ニコール・キッドマンである事は、彼の、そしてカントリー・スターのアメリカにおけるステイタスの高さをハッキリと示しています。この話題性から、前作「Love, Pain & the Whole Crazy Thing」は「愛・至上主義 」という(チョッと恥ずかしくなるような)邦題で日本盤も発売されました。さらに私は、上海で中国盤がリリースされている事も確認しております。
さて、このベスト盤。ボリュームたっぷりなだけでなく、ほとんどがラジオ・プレイ用のシングル・エディット・バージョン。つまり、異国の地でCDで聴いている我々にとっては、アルバム収録とは違うバージョンで楽しめるのです。なかなかに心憎いサービス。その上に極上の新曲2曲が冒頭にフィーチャーされます。まずは1曲目の"Romeo's Tune"。これは懐かしいロック・スターSteve Forbert(スティーヴ・フォーバート)の1979年の代表曲のカバー。オリジナルがソフトなフォーク・ロック風サウンドなのに対し、Keith盤は彼のエレクトリック・ギターと今風の硬質なドラムによりタイトな印象。Keithのボーカルも、意気の良い掛け声を要所で交えて、エモーショナルな彼らしい歌声です。このようなカバー曲からも、現代のコンテンポラリー・カントリーが70年代のアメリカンロックを正当に継承して進化させている事が見て取れます。2曲目"Got It Right This Time (The Celebration)"は、Keithオハコの打ち込み風リズムとソフトなキーボードがバックを固めるモダンなミディアム・バラード曲。そしてギター・ソロと壮大なコーラスで一気に飛躍して素晴らしい盛り上がりを見せる作品です。
Keithは、ポップ~クロスオーバー・カントリーの代表と言える人。確かに曲調はシンプルなトラディショナル~ストレート・カントリーとは異なる、時折打ち込みのリズムを使ったりしながら、メロディアスでモダンな展開を見せるモノですが、こうしてヒットソングを通して聴くと、サウンド・デザイン的には結構カントリー伝統のアコースティック楽器をうまく使っています。そして時折南部らしいダウンホームなフレーズ("I Told You So")を奏でるのです。例えば"Better Life"では弾けるリズムとバンジョーの絡みが実にファンキーだったり、"Days Go By"でフィーチャされる狂おしいまでにかき鳴らされるマンドリンとギターのユニゾンが、ここでしか味わえない新鮮なグルーヴを生み出していると思います。平凡なアリーナ・ロック曲など全くありません。ただ、いきなりこれをポップス・ファンに聴かせちゃうと、モダンなのか素朴なのかわけが分からず、思考停止させてしまうかな・・・・どう伝えるかです・・・・切々と歌い上げられるバラード"But For The Grace of God""Your Everyting""You'll Think of Me"などでのKeithの歌心は、ぜひ広く聴かれて欲しいと思います。また、今年のグラミーにもノミネートされた6分を超える"Stupid Boy"や、"Everybody"のスケールの大きさには感無量。21世紀のソウル・ミュージックがここにあります。もちろん自身によるリード・ギターにも圧倒されますよ。ルックス的には、ワイルドなBruce Springsteenと甘めのRick Springfieldの間を取ったような、絶妙なイメージです。
Keithが初めて我々の前に姿を現したのは、1997年。カントリー・ロック・バンドThe Ranchのフロント・マンとしてでした。そして、その唯一のアルバム「The Ranch」のオープニング"Walkin' in the Country"のカッコよさは強烈なモノでした。テレキャスターの乾いた音でカントリー・フレーバーをしっかり保ちつつも、ロック/ポップ感覚も持ち合わせたギターは素晴らしかった。セールス的には失敗だったようですが、センスあるアーティストらはしっかり注目していて、Dixie Chicksが「Fly」の中で、このアルバムからの"Some Days You Gotta Dance"をカバー。Keithはギターも弾いていて、Chicks Rockサウンドの確立に一役買っています。また、Garth BrooksもライブにゲストとしてKeithを迎えており、「Double Live」にその演奏が記録されています。「The Ranch」は、Keithの魅力が花開く前の発展途上の作品と言われていて、確かにその後のポップな華やかさはまだ獲得していません。しかし、緊迫感溢れる硬質で、トラディショナル・カントリーへも目配せした良心の音作り("Hank Don't Fail Me Now"のイントロなど)は、この当時のKeithだからこそ創造できた、今となっては貴重な記録だと思います。
(プロフィール) 1967年、ニュージーランド生まれ。アメリカ人ではありません。父親がアメリカ文化やカントリー・ミュージック・ファンで、Keithも自然と Glen Campbell、Dolly Parton そして Don Williamsなどの音楽に親しんでいきます。と同時にギタリストとしては、ロック世代らしくMark Knopflerや、Fleetwood MacのギタリストLindsey Buckingham(リンジー・バッキンガム)にも興味を持っていたようです。90年代初頭からオーストラリアのカントリー・シーンでブレイク。そして1997年にバンドメイトのPeter Clarkeらと共に念願のナッシュビルに移動、早速ライブでのKeithのギタープレイがCapitolの目に留まり「The Ranch」でのデビューに繋がるのです。ソロ・デビュー以降の人気は凄まじく、CMA AwardsではHorizon部門、Male Vocalist部門は3回、そして先にも触れたEntertainer部門を2005年に受賞しました。一方、Grammyでも2005年にBest Male Country Vocal Performance("You'll Think Of Me")を獲得しています。
ついでに思い出話を。Keithがソロ・デビューした90年代末、日本(のごく一部だったかも!?)でオーストラリア・カントリーが話題になった時期がありました。それは当時CSデジタル放送局DirecTV(嗚呼!)で放送していたCMTが「パシフィック・リム」というアジア、オセアニアと対象としたバージョンで、オーストラリアの旬のカントリー・ナンバーも流していたからです。私もFelicity、Shanley Del、Troy Cassar-DaleyなどのCDを師匠の専門店を通じてゲットして楽しんでいたのを思い出します。Keithと時期を同じくしてアメリカでブレイクしたKasey Chambers(Dead Ringer Bandのボーカリストだった)もいましたね。本場アメリカでのカントリーがクロスオーバー化、サウンドのロック/ポップ化が加速していた中、オーストラリアのカントリーは垢にまみれていないアコースティック基調の実に良心的なサウンドに感じられたものです。そうした中、2000年のシドニー・オリンピックの閉会式で、オーストラリア・カントリーのレジェンドSlim Dustyが登場。あの大観衆を前にギター1本で会場を悠々と歩きながら"Waltzing Matilda"を歌う姿に大感激したものでした。
●KeithのMySpaceサイトはコチラです●
John Mellenchampは、現代カントリーのルーツの一人として挙げられますよね。学生の頃のMTV時代「Scarecrow」が大ヒットしてました。
Chet atkinsは60年代は世界で最も影響力のあるギタリストだった、とも言われてるようで、Mark Knopflerに限らずブリティッシュ・ロック・ギタリストには一目置かれていたようです。
Keithは、ニコール・キッドマンとは離して売って欲しいなぁ、と思います。
今日のEverybodyまでを聞いて本当に聞かせるのが旨い人だと思います。 切実に歌い込む人ですね。
この人有ってのBrad Paisley,Kenny Chesneyと言うのは言い過ぎでしょうか。
ニュージーランド人なのにAmerican RockのJohn Mellenchampの後継者の様な気がします。
それはまるでイギリス人のMark KnopflerがChet atkinsからCountryへのめり込んでいく様な物でしょうか、、、、
この人年を取れば取るほど旨くなっていく気がします。
Dire Straitsは"悲しきサルタン”やMTV時代の"Money For Nothing"が思い出されます。
マーク・ノップラーは2006年にエミルー・ハリスとの共演ライブ「Real Live Roadrunning」をリリースしているようです。CMT.comには彼のWebページもあります。
今年もよろしくお願いいたします。
いいですねDire Straits、大好きです。
おっと今回はKeith Urbanの特集でしたね、失礼いたしました。
素敵な渋い曲を思い出すことが出来ました、ありがとうございます。
新しいカントリーもぼつぼつ聴いています。
楽しいカントリー・ミュージック・ライフをすごされてますね。Tammyは結構この国でファンが多いのでは、と感じています。
Jo Deeとは新年のオープニングにピッタリですね。セカンド・アルバムの"I'm Alright"は鮮烈でした。そろそろニュー・アルバムが出てもイイ頃でしょう。