ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Randy Rogers Band ランディ・ロジャース・バンド - Nothing Shines Like Neon

2016-06-04 | Texas・RedDirt テキサス・レッドダート レビューまとめ

およそ15年という堂々たるキャリアを持つ、テキサス州が誇るグループ、ランディ・ロジャース・バンド。彼ら自身のインディー・レーベルによる、カントリー・ミュージックにとっても特別な地であるテキサスで収録された、現代の深南部アメリカ酒場のリアル・サウンド、と言いたい最新作です。いかにもローカル・バンド風の、その強面(失礼!)なルックスにもかかわらず、我が国でも案外にその名に触れる事が出来て、CDも容易に入手できるアーティストだとの印象があります。まずは、そんな彼らの足跡から触れましょう。



ランディはテキサス州Cleburneで育ちました。6歳の時に曾祖母からピアノの手ほどきを受け、11歳では曲を書いてたそう。そうして音楽の素養を身に付けていった彼は大学の友人達と自身のバンド、ランディ・ロジャース・バンドを結成。最初のアルバムは、地元テキサス州で収録したライブアルバムでした。2002年に初めてのスタジオアルバム「Like It Used to Be」をリリース。2枚目の「Rollercoaster」で、現在まで続く主要なバンドメンバーが勢ぞろいしました。この後、そんな彼らに大きな転機が。メジャー・レーベルMercury Nashvilleとの契約にこぎ着けたのです。そこから「Just a Matter of Time」を2006年にリリースすると、あの著名なロック誌、ローリング・ストーン誌が、”2007年の夏に聴くべき10のバンド”として、U2やローリング・ストーンズと共にピックアップした事で、彼らへの注目が俄然高まったのです。その年のツアーは成功し、その後もイーグルスやダークス・ベントリーらの大物ともステージを共にしていきます。2010年には同じくメジャーなMCAに移籍。「Burning the Day」と、2013年には「Trouble」をリリースしました。アルバムチャートではなかなか健闘したものの、ヒット曲には恵まれなかったことから、ここでメジャー・レーベルとは袂を分かつ事に。そしてこの新作・・・

冒頭から、"San Antone"です。コーラス部には、”アラモ砦の(デイビー・)クロケット<注:メキシコからの独立革命の英雄>のように”なんて、テキサス人やアメリカ奥南部の人達を湧かせるフレーズもしっかり織り込まれてます。軽やかに刻まれるスネアのリズムにのり、フィドルがたっぷりと咽び泣くリアル・カントリー曲です。"Things I Need to Quit"では幾分エレクトリックなバンド・サウンドが展開しますが、ここでの最大の聴きものはランディの搾り出すようなロンサム・ボイス。ダウン・ホームなリズム・セクションも相まって、主人公の”やめるべき悪癖”に対する悔恨の念を情感たっぷりに歌い上げます。このアルバムでは、インディ・レーベルならではの、真に彼ら自身から自然に発せられたテキサスの音、そしてランディの声の良さがたっぷりと表現されていると思います。



メジャーで活躍した経歴のおかげで、トップレベルのゲスト陣が参加していることも注目です。荘厳な父親賛歌"Look Out Yonder"では、アリソン・クラウス(とダン・タミンスキーも)がコーラスでスピリチュアルな響きを添えています。メジャーの音とはひと味違う、ドライな肌触りのアップテンポ"Taking It as It Comes"では、ジェリー・ジェフ・ウォーカーがデュエット。そして、ジェイミー・ジョンソンがソングライティングにも名を連ねた"Actin’ Crazy"は、ジェイミーらしいミディアム・テンポのアウトロー風正調カントリー曲です。いずれの曲も、テキサスに根付いたバンドのカラーにフィットした、適切な客演ですね。

最後が、"Pour One for the Poor One(金のないヤツに最後の一杯を)"だなんて、もう完璧に、酒場の音楽ホンキ・トンク・カントリーの流儀を踏襲してますね。このアルバム、有る意味、渋め、玄人筋の音楽ファン向けの音かもれません。名バンドがテキサスに帰ってきて、本当の良かった。



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