ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Vince Gill ヴィンス・ギル - Down to My Last Bad Habit

2016-05-22 | カントリー(男性)

カントリー界の押しも押されもせぬ大物であり、素晴らしいギタリストでもあるヴィンス・ギル。メジャーMCAでのデビュー以降、堂々の15作目のオリジナル・アルバムです。だいぶ前に、2006年リリースの4枚組み大作「These Days」(全曲書き下ろし!)をご紹介しましたが、それ以降、ホーム・レコーディングの「Guitar Slinger」、凄腕ウェスタン・スウィング・バンドThe Time Jumpersへの参加、ペダル・スティール・ギターの名手、ポール・フランクリンとの共作で、クラシック・カントリーへのオマージュ作「Bakersfield」ときて、この2016年の新作です。全曲、共作も含めて自身のペンによる作品集で、企画色はなし、ストレートにメインストリーム市場に自身の最新の音楽をぶつけてきました。

そのハートウォーミングな泣き節はいまだに健在ですが、今回は幾分、エモーショナルに力を込める瞬間がチラホラ。このアルバム、結構、ソウル~クラシックR&Bを意識した作品群になっていますね。まずは、オープニングのミディアム・アップ"Reasons for the Tears I Cry"で快調にキックオフ。このグルーヴってヴィンスの独壇場で、私はこれを”ヴィンス・ギル調”と呼んでいます。彼の90年代初頭の大ヒット曲"Don't Let Our Love Start Slippin' Away"が思い出されるのですが、今回はより情熱的に歌い上げていますよ。スロー曲では、タイトル曲"Down to My Last Bad Habit"や、"I Can't Do This"が聴きもの。前者はとアーバン・ソウル風でヴィンスの声が実に切なく”泣いて”います。一方後者はゴスペル・スタイルで、そのコーラスでの歌声はかなり激情的。"Make You Feel Real Good"は、ブルース・ハープが響きわたるミディアムのR&Bで、これもアルバムのハイライトになってます。歌声だけでなく、ギターも自身で披露してくれており、センス溢れるツボを得たフレーズにも嬉しくなります。



大物と言うだけでなく、プロデュースも精力的にこなしてきた業界通の彼らしく、ゲストも注目すべき人たちが。"Take Me Down"ではリトル・ビッグ・タウンが、優しみ溢れるポップなスロー"I'll Be Waiting for You"では、今をときめくCamが美しいサポート・ボーカルを聴かせています。"One More Mistake I Made"では、なんとジャズ/イージーリスニング界からクリス・ボッティChris Bottiを招き、そのクリーンなトランペットをたっぷりフィーチャ。アルバムのソウル色に彩りを添えていますね。しかし、ラストは、きっちりトラディショナルなアイテム"Sad One Comin' On (A Song for George Jones)"で締めくくるあたり、カントリーの伝統への熱いこだわりを感じます。この曲、コーラスでアリソン・クラウスの声が聴けますよ。ブックレット内のパーソネル欄にひっそりとクレジット有るだけで、カバーの曲目欄には他のゲストのような記載はないのですが、友情参加ってとこかな。付き合い長いでしょうから・・・

能力の高いヴィンスならではの、レベルの高い作品集です。これほどのベテランで、ビルボード・カントリー・アルバムでも4位を獲得しています。あえて難を言えば、彼の力ならこのレベルは当然だね、なんて思ってしまうことくらいか。まだまだ興味深い活動を続けてくれる事でしょう。

 



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