ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Billy Currington 「Doin' Somethin' Right」

2007-09-01 | カントリー(男性)
 残念ながら惜しくもCMA AwardでHorizon Award(期待の若手賞)ノミネートを逃した、注目の若手Billy Currington。同じレコード・レーベルMercuryのスーパー・スターShania Twainと"Party For Two"でデュエットすると言う幸運に恵まれ(2005年のMusical Event of the Yearにノミネート)、人気上昇。これはその原動力となった2005年のセカンド、好盤です。10月30日には、ニューアルバムの発売も控えています。

 

 そのハンサムながら髭面でワイルドなルックスにぴったりのロッキン・カントリー"I Wanna Be a Hillbilly "でスタート。強烈なイントロのスライド・ギターともども、なかなか歌声の方もエモーショナルで迫力満点。「田舎モンになりてー!」なんて、いかにもカントリー・ボーイらしい台詞です。続いてシングル・ヒット(カントリー1位!)した"Good Directions"は少しペース・ダウンしたミディアムのストレート・カントリー。ドブロ・ギターとフィドルが常に絡みつき、カントリーの素晴らしさを強力にアピール。そしてここでのBillyは、力のあるクリアーなカントリー・ヴォイスを聴かせてくれます。同じくシングルの"Why,Why,Why"は、そのコーラスでソウル・ヴォイスが炸裂するかっこいいジャンプ・ナンバー。面白いのが"Little Bit Lonely"で、レゲエ風リズムを取り入れたミディアムで、Billyもエモーショナルなしわがれ声でノッています。ひょっとして、レゲエのパイオニア、Bob Marleyを意識したのかな。

 このような硬派な個性を持ちつつも、どうもなかなか器用な人のようで、ファースト・シングルでこれも1位に輝いた"Must Be Doin' Somethin' Right "は、結構メロウなコンテンポラリー・ソウル・バラード。この手もうまくこなしてしまうのです。そりゃShaniaとポップ・カントリーのデュエットをしっかりこなした人ですから("Party For Two"はロックバンド Sugar RayのMark McGrathとデュエットしたポップ・バージョンもあるくらいです)。そして、このアルバムには 元Doobie BrothersMichael McDonaldが参加しており、同系統のAOR(アダルト・オリエンティッド・ロック)バラード"She's Got a Way with Me" でそのマイルドで温かみのあるコーラスを聴かせてくれています。そして、Billyのボーカルも、そのコーラスをバックにMichaelに負けず劣らずムーディー。現在のカントリーは1990年代以降、(スーパー・ヒーロGarth Brooksなどの音楽からも感じられるように)こうしたAORサウンドもうまく吸収・消化してきているのが特筆すべきポイントの一つとなっています。Kenny Rogersのヒット曲 "Lucille"は、Billyの持つポップさとストレートさがうまくブレンドされたカバーと言えるでしょう。

 

 この作品は、今のカントリー・ミュージックのおいしい部分を漏れなくパッケージ、そしてBillyがそれらを十二分に表現できる逸材である事を聴き手に理解させてくれる、コンテンポラリー・カントリーの極上サンプルと思います。そして時折見せるハードな歌唱は、特に昨今のカントリー界の空気をしっかり理解してる証でしょう。最新シングル"Tangles Up"も実にモダンな曲調のロッキン・カントリーで、新作への期待をつのらせます。

 ジョージアはRincon育ち。彼の姓Curringtonは、彼が1歳半の頃に母親が再婚した父親からのもの。その父親が大の酒飲みで苦労したようです。高校卒業後すぐにスターを夢見てナッシュビルに来るも長くは続かず、いったんはジョージアに戻りますが、夢は捨てきれずまたナッシュビルに。コンクリート会社で働いたり、歌の個人レッスンをしていたところ、レッスンの顧客の一人が彼をデモ・レコーディングや作曲の仕事に紹介、そしてその出版社を通じてMercuryと見事契約を果たし、2003年デビューしたのです。

 BillyのMySpaceサイトはコチラ → http://www.myspace.com/billycurrington


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