ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Jason Aldean ジェイソン・アルディーン - 9 ~ラスベガス銃乱射事件を乗り越え、アメリカ階層社会の狭間で輝くヒーロー~

2020-03-14 | カントリー(男性)

2005年のデビュー以降、サザン・ロック~アメリカン・ハードを

ベースとしたパーティ・サウンドを駆使し、今やカントリー界で

トップ・クラスの人気を維持し続ける超スター、ジェイソン・アル

ディーンの、2019年暮れにリリースされたズバリ9作目のオリジ

ナル・アルバムです。ストレートに「9」と題したのは、彼が少

年時代に野球をやっていたころの背番号だったからだそうです。

 

 

さすがにこの屈強なキャラのせいか(?)、グラミー賞の受賞は

ありませんが、「My Kinda Party」や「Night Train」の頃、ノミ

ネートされていました。CMAアワードでは「My Kinda Party」で

アルバ賞を獲っている他は、最高の栄誉となるエンターテイナ

ー賞で4回もノミネート。やはり、ファンの人気が直接の力となる

ACMアワードで、エンターテイナー賞をさらうなど多数受賞し強

を誇っています。いずれにせよ、長く不動の人気で君臨し続け

てきた人と云えます。とにかくシンガーとして、力強くも見事に

澄んだ魅力あるテナー・ボスは唯一無二のカントリー・ボイス

なのです。

 

 

最近の彼は、音楽的には「Old Boots, New Dirt」から無機的なドラ

ムループをスロー系のナンバーを中心に取り入れて("Burnin' It Down")、

アメリカン・ロックに現代性を加味した新境地を開き、このアルバ

ムはプラチナのセールスを保持しました。この「9」もその流れの

中にありますが、前作「Rearview Town」に比べても、チョッと各楽

曲のサウンドのバリエーションが単調な感じがしました。スカッと

爽快なギター・サウンドがメインなのは同じなのですが、例えば、

"Some Things You Don't Forget"から”Came Here to Drink"まで、

ーバラードが続くあたりです。

 

Rearview Town

 

「Rearview Town」ではレトロなR&Bスタイルの”You Make It Easy”

や、トゥワンギーなギターとミランダ・ランバートのコーラスがカン

トリーな”Drowns the Whiskey"、マイナー調の"Rearview Town"など、

スロー~ミディアムの聴かせる曲で際立つモノが多く、しかもい

れの曲もカントリー・シングルで1位を獲得するくらい支持を受け

いました。新作のリード・シングルの"We Back"は、”標準路線の”

ード・ナンバーで、従来からのジェイソンの姿をまた披露しました、

という感じでしょうか。ただ、またシングル・ヒットを飛ばし続け

るだろうパワーは十分持っている作品集です。

 

 

ジェイソンを見る時、そのイメージからの想像ではありますが、

やはりメインストリーム・カントリー・ファンの一角を占める労働

者階級、低所得白人層のヒーローとして君臨しているのだろうと感

じます。彼のデビュー当時にサポートしたのは、その頃隆盛を誇っ

た”Redneck Woman"グレッチェン・ウィルソンにも協力していた

ン・リッチです。彼女のその曲には、その支持層が好む音楽の代表

として、真っ先にサザン・ロックのレイナード・スキナードが挙

られています(他はキッド・ロックやジョージ・ストレら。

ニヤ・タッカーの名も)。ジェイソンは、グローバル化や多文化主

義に背を向けるそのファン層の嗜好に答え続けているのだと思いま

す。だから、音楽的なバラエティさに無頓着なのは、そいうのと

関係するのかな、とも想像するのです。個人的には、音楽的に一番

新鮮だったのは、デビュー初期「Relentless」あたりの頃だったと

っています

 

 

2017年ルート91ハーベスト・フェスティバルにおける「ラスベガス

銃乱射事件」では、彼のステージ中に銃撃があり、”黙って逃げた”

などとちょっとひどい中傷を受けるという災難が有りました。おそ

らくそのような声を出した人は、そもそも日ごろから労働者階級を

侮蔑してはばからない、”対抗する階級層”だったのでは、と邪推し

てしまいます。この事件の真相は闇のままのようですが、アメリカ

に厳然と存在する階層摩擦が背景にあるのでは、と少し思います。

してそれも乗り越えたジェイソンは、今後もさらにそのファン層

のヒーローとして輝き続けるのでしょう。



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