2019年の10月にリリースされた、現在、カントリー界のトップ・
バンドと言えるオールド・ドミニオンの3枚目となるセルフ・タ
イトルのアルバムです。そして、初めてジャケットにその姿が
フィーチャーされました。ごく平凡なリビング・ルームの一室
(アンティークなヴィクトリア調の家具にさりげなくアメリカ国
旗が)に窮屈そうに座る5人のメンバーに、何となくコミカルな
魅力が漂います。土埃の香りがあまりしない洒脱なポップ・セン
スは維持しつつ、あえてセルフ・タイトルにした事に彼らの意気
込みを感じます。
前作「Happy Endings」では、プログラミングを適度に交えて、
割と穏やかなポップ・サウンドを構築していた、という感じがし
てましたが、ここではリード・シングル"Make It Sweet"からクリ
アで勢いのあるバンド・サウンドで押してきます。ビルボードの
カントリー・エアプレイで見事1位となっています。"Never Be
Sorry"も彼ららしいカラッと弾むアップ・テンポ曲ですが、アリ
ーナ映えするスケール感が有りますね。
注目は、セカンド・シングルでコチラもまたエアプレイ・チャー
ト1位となったスロー曲"One Man Band"。これで2016年から6曲
連続トップの快挙です。この曲、おだやかなギターの爪弾きと最
低限のリズム・セクションだけで、マシュー・ラムジーがソウル
フルに歌うという、実にシンプルな構成のナンバー。艶やかな音
を織り交ぜてPRする事が常のポップ・カントリー界にあってかな
り画期的な作品で、これが1位のヒットとなったのは重要だと思
います。"My Heart Is a Bar"以下、この手のメロウなナンバーが多
く収められている事もこのアルバムのもう一つのポイントでしょ
う。"Some People Do"ではファルセットも交えてしっとりと聴か
せてくれます。
このアルバムで展開するオールド・ドミニオンの音楽の根っ子に
あるのは、はやり80年代のウェスト・コースト・ロック、例え
ばヒューイ・ルイス&ザ・ニュースやソロ時代のグレン・フライ
あたりなんだろうと思います。そういう部分をより前面に出した
というところでしょう。こういうアメリカ南部然とした香りがあ
まり感じられない音楽が大いに支持されてる事に、カントリー・
ファンのすそ野の広がり、都会への浸透を感じますね。
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