ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

ザック・ブラウン・バンド Zac Brown Band - The Comeback

2021-10-30 | Zac Brown Band ザック・ブラウン・バンド レビューまとめ

 

前作「The Owl」で大胆にもエレクトロ・ダンス・サウンドを取り入れて度肝を抜いたザック・ブラウン・バンド(ZBB)でしたが、この2021年の最新作では、ファンならタイトルでピンと来るように、そもそものZBBらしさをこれでもかと畳みかける作品集にしてきました。リード・シングルの"Same Boat"はイントロのガット・ギターからして、デビュー・ヒットの"Chicken Fried"を思い起こさせる曲想で、現在ビルボードのカントリー・エアプレイではトップ10ヒット中です。アルバムの印象としては、「Jekyll + Hyde」「Uncagedの間くらいの感じと聴きました。

 

 

いろんな意味が想定される本作のアルバム・タイトルの意味に関して、ザック・ブラウンはこの作品集が個人的にも「カムバック」を意味していると語っています。゛しばらくオフを過ごしていたら、家にいてギターに歩み寄りたくなったんだ。また創作したくなったんだよ。一人の人間であると感じたかったし、自分が若返ったかのように感じたのさ゛ザックは、「The Comeback」に収録された作品をファン達が聴けば、それらがまごうことなき「ザック・ブラウン・バンド・サウンド」だと理解するだろうと考えているようです。゛ここで聴ける全ての曲は、ファン達がよく知っている過去のアルバムのいずれかの曲の姉妹のように聴けるよ゛この言葉から、本作が、ファン達が望むZBBらしさを今の音として再現することをしっかり意識していたことがよくわかりますね。

 

 

自然児のようなザック・ブラウンがフィーチャーされた、鬱蒼としたジャングルを舞台にしたジャケットが印象的ですが、特にザックの顔に茶色がかった赤色の粘土がついているのが気になります。これは、同様に彼の姿がアップで見られるデビュー・アルバム「The Foundation」も同じ感じでした。ザックは説明しています゛僕は10歳のころから川で泳いで育ったんだ゛それはザックが休息を取るときに、いつも訪れる人里離れた小さな場所のようです。"僕はある種川のネズミみたいに育ったんだ。だからその場所は僕をルーツに帰らせてくれるんだ。ジョージアの赤土から出てきて、川に育てられてこんな僕がでてきたんだよ゛

 

ザックはこうも言っています。゛僕たち全員がどれほど分裂しているのかじゃなく、全員がいかに同じなのかを思い出すのに役立つ何かを書くこと、それ僕にとって重要だったんだ。僕が住んでいる地域や出身地では、それ(分裂)を感じていないからね゛彼の言葉からも、音楽を愛するアメリカ南部の人々が、決して偏見や差別の意識を持ったことはないという、強い信念を感じます。

 

 

曲想はキャッチーなカントリー・ロックからアメリカン・ハード、フォーキーなアコースティック・サウンドやブルーグラスなどなど、ZBBの持つテリトリーの広さをいかんなく発揮しています。電子サウンドの縛り(?)から解き放たれて、ハチャメチャなブルーグラス風ナンバーの"Fun Having Fun"あたりではメンバーたちも雄叫びを挙げて、牧歌的でユーモラスな魅力も復活です。という事で、前作で戸惑ったファンには有難いアルバムになると思いますが、その分何が飛び出すか!?という期待感や話題性はあまりないわけで、聴き手心理とは難しいものですね。

 

 

個人的には、しんみりとアコースティックで聴かせる"Wild Palomino"や、フォーキーな"Love and Sunsets"が寛いで楽しめてお気に入りです。ホームタウンやその自然を歌う歌詞など、ザック・ブラウンが力まず歌いプレイする様に安心感を覚えます。第一線で活躍するようになってもう十数年、もう時代の先頭を走る必要はないのですから、ゆとりをもって末永く活躍してもらいたいものです。



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