![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/6f/19/59f672ff68ded3b6316e78e87c4bab32.jpg)
カントリー・グループとしてCMAアワードのグループ賞をを3年連続で受賞し、目下のところトップの勢いを維持しているバンド、オールド・ドミニオンが4作目となるニュー・アルバムをリリースしました。コロナ・パンデミックの中製作された本作、超意外とも思える超豪華ゲストが名前を連ねるという話題もあり、その程よく品ある洒脱なポップ・サウンドは変わらず健在のようです。
本作はナッシュビルではなく、ノース・カロライナ州のアッシュビルで完成させたもので、リーダーでボーカルのマシュー・ラムジーが本作の制作経緯を語っています。゛「Time, Tequila, and Therapy」は去年のコロナ・パンデミックによるロックダウンの時期に、アッシュビルで3週間に間に作曲からレコーディングまでこなして完成させたんだ。バンド・メンバーでちっちゃい「オールド・ドミニオン・バブル」を作ってね。特にプランも作ってなくて、成り行きに任せようとしてた。アルバムを完成させなくっちゃ、なんてプレッシャーはなくて、4,5曲良い曲が出来たら良いなと思ってたんだけど、完成させてしまったんだ。夢のようなシナリオだよ゛
そんな感じでリラックスした環境で製作したアルバムでしたが、ここでサプライズがありました。なんと、“Lonely Side Of Town”で、今や「ソウルの女帝」とも言われているグラディス・ナイトがゲスト参加して歌声を聴かせてくれているのです。今年77才の大レジェンドですが、日本のソウル・ファン(今のR&Bというより昔のソウル)には大変人気が有り、アレサ・フランクリンより好まれてたのではないでしょうか。私も大好きな人で、かつてアトランタ・オリンピックの開会式に登場した時は大変感動した覚えが有ります。やはりグラディス・ナイト&ザ・ピップス当時の名曲が思い出され、"Didn't You Know""The Nitty Gritty""Neither One of Us""Midnight Train to Georgia"など挙げだしたら切りがなくなります。
グラディスの参加が実現した経緯もマシューは語っています。゛僕たちはその時は知らなかったんだけれど、グラディスはアッシュビルに住んでいたんだよ。それでせっかくスターが居るんだから、僕らのレコーディングに加わってもらえないかなってアイデアが出たんだけど、意外に簡単にコンダクトできたんだ。なぜならスタジオのマネージャーがグラディスを知っていて、すぐに駆け付けてくれたんだよ。スタジオに居て彼女の歌う姿を見れるなんて、驚くべき体験をさせてもらったね゛ここでのグラディスの歌声は、もちろん全盛期とは比べてはいけないでしょうが、声の力やリズム感など年齢を感じさせず、流石です。こういった80年代メロウ・ソウル風は、オールド・ドミニオンとしても音楽的スタイルの幅を広げる結果になってると思います。
メンバーのブラッド・トゥルシによると、リード・シングル“I Was On A Boat That Day”は、デビューの頃から温めていたタイトルだったそうです。゛(デビュー・アルバムの)"Break Up With Him"を書いた時からそのタイトルはあったんだ。チョッとした失恋ソングなんだけど、その男はそんな特別な状況でも心底傷心してなくて、なぜなら彼はボートに乗って楽しんでいるんで、あとは明日からなんとかするよ、ってな感じなんだ゛なんとも飄々とした、バンドのイメージにぴったりの曲ですね。ざっくりしたアコギのストロークが、最近トレンドのカントリー回帰にマッチしているように聴こえます。
アルバムとしては、彼らのアダルト・オリエンテッドと80年代ウェスト・コースト・ロックの融合というコンセプトは守りながら、先に触れたようなカントリー回帰やソウル風の導入などほどほどな幅の広がりを聴かせてくれます。もともとスタジオ・ミュージシャン出身という手堅いテクニックに支えられた、心地よくも手堅いサウンドは、まだまだ他の追随を許さない唯一無二の個性です。
★他にも、「Old Dominion」(サード・アルバム)や、「Happy Endings」(プロフィールも)を取り上げています★