ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Carrie Underwood キャリー・アンダーウッド - Blown Away(ブローン・アウェイ)

2012-05-27 | Carrie Underwoodキャリー・アンダーウッド レビューまとめ
 今年2012年にリリースされた、メインストリーム・カントリー・フィールド最高のディーバ、キャリー・アンダーウッド待望の4作目です。アメリカン・アイドル出身のカントリー・スターということで、カントリーとポップのエッセンスを絶妙の織り交ぜた音楽と、スケール大きく、しかも親しみやすい歌声でシーンを引っぱってきた彼女。今作ではゴージャスなジャケットをまとい、プレーンで和みの装いだった前作「Play On」とのイメージの変化に目が行きます。確かに本作では、シーンを引っぱっていく者として必要となる変化、新しいチャレンジの要素も見受けられて注目ですが、全体としては彼女らしい親しみやすさもシッカリ併せ持ち、バランスの取れた質の高いポップ・カントリー・アルバムになっていると思います。このアルバム、何と!初めて日本盤が発売されるそうで、楽しみです。女性週刊誌のグラビアでセレブ的に扱われていたりしたから、今頃なによ!?と言いたいところですが、ある程度のセールスが見込めないと日本盤が出ない事情を考えると、我が国でジワジワとカントリーが定着している事を感じます。


 オープニングからの3曲は、クロスオーバーへのPRを想定した、ポップ志向でしかも果敢な挑戦を感じる作品が並びます。リード・シングルの"Good Girl"はスッキリしたロック・ギターでストレートに盛り上がるファンなナンバー。かつてのシャナイア・トゥエインを彷彿とさせますが、キャリーの歌声はよりエモーショナルで強力、不愉快な男性への強い女のメッセージをたたみかけます。挑戦的といえるのが、タイトル・ソング"Blown Away"。ポップ・ソングとしてもユニークな曲想で、ハイテンポなタテノリ(!)リズムとティンパニーやハープの響きによって、嵐が吹き荒れているかのような緊迫感溢れる空気を作り出し、幼児虐待という重いテーマを歌い上げています。重さということでは、次の"Two Black Cadillacs"も、不実な男に痺れを切らした妻と愛人が結託して、その男をあの世に葬る、というセンセイショナルなテーマを扱ったナンバー。この曲でも厚みのあるストリングスがキャリーをバックから煽りたてて緊迫感を増長します。

 これら3曲でガッチリと一般リスナーの心をつかんだ後は、キャリーならではの親しみと情感のポップ・カントリー・ワールドが展開。ここからが現代カントリーらしい心地良さに溢れていて、私もお気に入りで繰り返し聴いてしまいました。情感の極みと言えるのが、ミディアム・スローの"See You Again"。前作「Paly On」には見られなかった、スムーズでチョッピリアーバンなバック、要所に入るブレイクでのシンプルなピアノがキャリーの成熟したボーカルを引き立てます。スローバラードの"Forever Changed"は、愛する人が安らかにその人生を終える事を見つめる困難さを歌った、感動的な作品。これははソングライターが自身の母の死をテーマとして書いた作品なのですが、キャリーはこの曲に今は亡きお祖母さんの死をだぶらせてしまい、とてもステージでは歌えない、とTV番組出演時のインタビューで涙ながらに語ったそうです。このアタリの作品の柔らかな感情の表現力って、彼女が師と仰いだカントリー界のクイーン、マルティナ・マクブライドのそれを超えてしまったかのようです。見事。


 このアルバムの嬉しいところは、カントリーならではのオーガニックで牧歌的な曲や、トワンギーなホンキー・トンク・ナンバーもキッチリ収録している事。"Do You Think About Me?"は、マンドリンとアコギのテーマ・フレーズが印象的な、シンプルなカントリー・ソング。かつての恋人が、まだ自分の事を思ってくれてるかしら、と歌うのどかな曲で、とにかく和ませてくれます。"Nobody Ever Told You"ではアーシーなバンジョーも登場する心地よいミディアム曲。細かくリズムを刻むフィドルや効果的に挿入されるコーラスなど、サウンドの小技が効いていて、なかなか聴き応えがあります。ケニー・チェズニーの十八番といえるレゲエ調カントリー"One Way Ticket"も、とにかく飲んでリラックスして楽しみましょう!というお気楽ソング。これからの時期、良いかも。トラディショナル・カントリー・スタイルの究めつけは、アップテンポのホンキー・トンク・チューン"Cupid‘s Got a Shotgun"。ハイ、この強力な早引きリード・ギター、ブラッド・ペイズリー以外の誰のモノでもないですね!CMAアワードの共同司会ですっかり息のあった処を見せてくれる2人、ブラッドのトワンギーなカントリー・ギターでキャリーが歌うという、これ以上ない共演です。

 キャリーは実はCMAアワードで最高の栄誉であるエンターテイナー賞をまだ獲得していません。デビュー以降3年連続で女性ボーカリスト賞を獲得し、エンターテイナー賞は時間の問題かと思われましたが、テイラー・スウィフトが突如彗星のごとく登場してさらってしまったのです。しかし今年は本アルバムを引っさげて、大々的にツアーも敢行、アメリカ国外も精力的に回るようで、いよいよエンターテイナー賞への期待も膨らみます。我が国での人気も盛り上がれば、さらに弾みがつくことでしょう。プロモーションでの来日も期待したいですね。


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