ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

The Highwomen ハイウィメン - The Highwomen ~ブランディ・カーライルらメンバーが語るアルバム製作秘話や結成の経緯~

2019-09-14 | Maren Morris マレン・モリス レビューまとめ


今年2019年の最注目、カントリー界のスーパーグループ、ハイウィ
メン
のデビュー作がベールを脱ぎました。注目の音の方ですが、
既にリリースされていた”Redesigning Women”や"Crowded
Table"などから予感された通り、ポップだのEDMだのとは無縁の、
正真正銘のカントリーミュージックが展開されていて、長いフ
ァンには嬉しい事です。今回は、CMA(カントリーミュージック
協会
)が提供している、Beverly Keel氏のインタビュー記事をご
紹介します。その結成経緯やアルバム製作コンセプトがメンバー
の言葉で語られていて良いと思います。

やはり、最近のカントリー・シーンはあまりに男性アーティス
トに偏りすぎで、そこらに対する問題意識が語られています。

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2019年のCMAフェスティバルの最終日の翌日、疲れてはいるも
のの興奮冷めやらぬ業界のリーダーの一群が、新たに結成された
カントリー界のスーパーグループ、ハイウィメン~ブランディ・
カーライ
ル、ナタリー・へンビー、マレン・モリス、そしてアマ
ンダ・シャイアズ
による待望のデビューアルバムのプレミア・シ
ョーに出席する為、カント
リー・ミュージック・ホール・オブ・
フェイム博物館に集まった。


カントリー界における女性アーティストを取り巻く最近の様相か
らすると、
このアルバムは特に求められてはいなかったが、女性
たちには本当に必要
とされていた。ドキュメンタリーのタイトル
にもなる、このエレクトラ・レーベルのプロジェクトは、カント
リーミュージックにおける女性の平等を求める戦いの為のサウン
ドトラックを提供する事が出来るだろう。”私達はこれが何を意味
するのか今も見つけようとしているの”とモリス。”本当に毎日
がより特別なものになって行ってるの”



一晩前、モリスは日産スタジアムの見事なソロ・ショーで会場を
を沸かせたが、そこで、”Common”でのデュエットの為にカー
ライルをステージ上に招いた時の会場の反響に驚いたという。そ
れから24時間も経たない後に、残り二人のハイウィメン達と共に
多くのスタンディング・オベイションを受ける事になるのだった。

ハイウィメンは音楽的に強い所信表明や握りこぶしを振りかざす
ような事はしていないが、愛、笑い、そしてすべての人をパーテ
ィに誘うような、美しく調和のあるメッセージを創っている。音
楽スタイルはクラシックで時間を超越したカントリー・フィール
を持ち、詩的で、物語があり、自由の響きを創造するための共感
を呼ぶものとなっている。

12曲の作品は、鮮やかな色彩の中で女性でいる事のニュアンスを
探求し、母である事、立ち直る力、喪失、傷心そしてユーモア等
の一般的なテーマを取り上げている("If She Ever Leaves Me"
は同性愛者をオープンに歌った初めてのカントリー曲である)。
それは2019年における女性としてのプレッシャーや存在する事の
音楽の日記だ。デビューシングルの”Redesigning Women”を、
プロデューサーのDavid Cobbは、”落ち着くことが出来ない4人
のたちの悪い女性を表現している”と紹介する。



"全体のコンセプトは行動、本当に喜び溢れる行動なの”とカーラ
イルは言う。"カントリーミュージックで女性の声を掲げる為に
私たちに加わるよう招待している。また男性達にもハイウィメン
に同乗するよう活発に誘っているわ。そして、華やかなやり方で
今すぐカントリー界での女性の表現の場の不足を解決する策の一
つになるの”

モリスはグループの音楽を気骨と気品の2つに等しく分類する。
”男性に対する怒りのような方法や形じゃないの。それは信じら
れないくらいに温かく、全てを取り込むようなものなの”

もちろん、スーパーグループはカントリー界では目新しいもの
ではない。エミルー・ハリス、ドリー・パートン、そしてリン
ダ・ロンシュタットは1987年にアルバム「Trio」をリリースし
たし、パートン、ロレッタ・リン、そしてタミー・ワイネット
は1993年に「Honky Tonk Angels」をリリースしている。
パートンの影響力や、上記両方のトリオの共通の要素を、ハイ
ウィメンは十分承知しているだろう。

しかしハイウィメンはそのインスピレイションの多く、そして
グループ名を、ジョニー・キャッシュ、ウェイロン・ジェニン
グス、クリス・クリストファーソンそしてウィリー・ネルソン
によるハイウェイメン(Highwaymen)から得た。彼女たちは
ジミー・ウェッブのペンによるNo.1ヒットである”The Highwaymen"
のアップデート・バージョンによって、この男たちに敬意を払
っている。彼女たちは女性をフィーチャする為に歌詞を書き換
え、新しい歌詞をウェッブにも見てもらった。シャイアズは言う。
”彼は言ったわ””キミたちは上手くやったよ。僕の支援は全く必
要ない。A+をあげるよ”””

 

ウェッブのレビューはその通りだった。シェリル・クロウやYola
らのゲストを迎えた、心に残る再翻訳版は、特に今日の政治的、
文化的環境の中で新たな意味やインパクトを生み出している。
シャイアズが触れたように、オリジナル曲はハイウィメンに、
めったに語られなかった歴史の中の女性の物語について、独自
に、そして共通した何かを言うための構造を提供したのだ。

”ハイウェイメンは幽霊バンドだった”とカーライルは言う。"本
質的に彼らは死んでたわ。ウェイロン・ジェニングスはコンクリー
トに落ちて死んだダム建設者だった。ウィリー・ネルソンは処
刑された盗賊。クリス・クリストファーソンは船乗りで、そして
キャッシュは何らかの理由で宇宙船を操縦していた”

”私たちはそれを頭に入れて曲を改作した。歴史を通じて迫害さ
れてきたり、彼女達を超えるような重大な理由で死に至った女性
達の事をベースにしながら、キャラクターを作ったの”とカーラ
イルは言う。”自分の子供達を守るために南北戦争を逃れる女性、
魔力に対して有罪宣告をされセイラム魔女裁判で処刑された医者、
グレイハウンド・バスで殺されたフリーダム・ライドの乗客、等
のキャラクターね。私たちは最終的に一つのメッセージで一致し
た。重い歌よ。でもそれは必要だった事であり、大きな流れの中
で美しくもあったのよ”

メッセージと共に音楽を創る為に女性達で集まるという初期のビ
ジョンを思いついたのはシャイアズだった。彼女は賞賛すべきフ
ィドル・プレイヤーであり、2018年に高い評価を受けてグラミ
ー賞や2つのアメリカン・アワードを獲得したアルバム「To the
Sunset」を含む6枚のソロ・アルバムをリリースしている。ま
た、ジェイソン・イザベル&the 400ユニットの「Nashville
Sound」でのプレイでも良く知られている。



”ある日のバーで彼女は私に近づいて来て、こう言ったの””私の
名前はアマンダ・シャイアズ。あなたとハイウィメンというバン
ドを始めたいの”””と、今年2019年に6枚目のアルバム「By the
Way, I Forgive You」で3つのグラミー賞を獲得したカーライル
は言う。”私は答えたわ””マレン・モリスも誘う必要があるわね””
マレンはすぐにこのサーカスに飛び込んで来てくれた。彼女が
ちょうど自分のアルバム(「Girl」)をリリースする準備段階
である時にも関わらず、躊躇する事はなかったわ”

2016年にCMAアワードの新人賞を獲得して以降、モリスのキャリ
アは新たなレベルに高まり、その後10のCMAアワードのノミネ
ートを獲得したり、グラミー受賞曲の”My Church"や(Zeddと
Greyとのコラボである)”The Middle"や"80 Mercedes"等の
曲をフィーチャした世界ツアーを今年2019年に敢行している。

プロデューサーとして、コブはヘンビーにプロジェクトの為の曲
の提供を依頼した。それは彼女が、ミランダ・ランバートの"White
Liar"
,"Automatic"そして"Only Prettier"、リトル・ビッグ・タ
ウンの"Pantoon"や"Tornado"、ケイシー・マスグレイブスの
"Rainbow"や"Butterflies"等の曲を共作しているという、理論上
の必然からだった。

”ナタリーが私たちに曲を送ってきた時、私の意見では、最高の曲
だった。ただ音楽的にハイウィメンの物語を描いただけのモノじゃ
なかった。彼女は実際に私達の有るべきサウンドを開墾していた”
とカーライルは言う。”それで曲を録音するだけでなく、グループ
に入るようヘンビーを誘ったのだった。



ヘンビーがLori McKennaと30分で書き上げた"Crowded Table"
はハイウィメンの哲学をとらえた曲である。”私たちは皆同じボー
トに乗っているように感じる。女性にカントリーミュージックの
物語の一部になってほしい”とヘンビーは言う。”女性にカントリー
ミュージックのヒーローになってほしいわ。そしてその傍には
偉大な男性達もいなきゃいけない。でも、私たちには、ラブ・ソ
ング以外にも言うべき事がたくさんあるのよ”

カーライルによれば曲は、必ずしも同じ事を考えているわけでは
ない人たちを一つにする喩えとして、テーブルと火を使うと言う。
”私は皆同じ事を信じてはいない。ハイウィメンにおいてもね。で
も同じテーブルに着いて食事を共にできるわ。そして、活動する
者として、女性として世界に出ていき、私たち自身の信条を支え
合う事が出来るの。そして共に戻り、一日の終わりにはそれぞれ
の家に帰る。それって家族がする事ね。それこそが、みんなが今
聴く必要がある本当に美しい感情なのよ”

”私はおそらくこれまで参加した中で最も誇るべき作品の一つだと
考えているわ”とモリスは言う。歌詞を引用しながら、”もしそれが
私たちが与える愛なら、その次には私たちが刈り取る愛なのよ”




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