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ウィスキー・マイヤーズ Whiskey Myers - Tornillo ~ ケビン・コスナーの「イエローストーン」で急上昇のテキサス・カントリー・バンド

2022-09-04 | Texas・RedDirt テキサス・レッドダート レビューまとめ

 

アメリカ本国で2018年から2022年にかけて、エピソード1から4まで放送され、その好評を受けてわが国でも今年WOWOWで放送された、あのケビン・コスナーが出演のみならず製作総指揮も行ったドラマ「イエローストーン」。そのシーズン1でフィーチャー(バンドとしてパフォーマンス・シーンに出演)された事で、一気にその知名度を上げたのが、このテキサスを拠点に活動するカントリー・バンド、ウィスキー・マイヤーズです。そのエピソード4で、リップ・ウィーラーとベス・ダットンのスロー・ダンスのシーンでプレイされた"Stone"が、アメリカの多くの視聴者の心を捉え、Googleで「Whiskey Myers」が一体何者か?検索したそうです。今も活動を続けるサザン・ロックの雄、レイナード・スキナードの正統な後継者と言って良いバンドです。

 

 

プロフィールです。テキサス東部のパレスティンで、ギターとボーカルのコディ・キャノンが、ギタリストであるジョン・ジェファースとコディ・テイトらとジャム・セッションしていた事が、バンドの始まりでした。元々はバンド名をLucky Southernと名乗っていたそうです。カレッジに進学のためテキサス州タイラーに移った三人は、さらに2名のメンバーを加え、ウィスキー・メイヤーズと改名しました。本格的な活動開始は2007年からで、テキサス東部のレッド・ダート・サーキットで、イル・ヤング・バンドのサポートなどで活動を広げていきます。

2008年にデビュー・アルバム「Road of Life」をリリースしました。2011年には意欲的にも自分たちのレーベルを立上げ、「Firewater」をリリース。チャートにも姿を見せ始め、ビルボードのHeatseekersで4位になっています。テキサスではトップ・レベルの人気を誇り、2012年にはテキサスのアワードで新人賞を受賞しています。2014年には、クリス・ステイプルトン「Starting Over」ジェイソン・イズベル「Reunion」ハイウィメンをプロデュースしているデイブ・コブをプロデュースに迎え、「Early Morning Shakes」を発表し、ビルボード・カントリー・アルバムの10位を記録しました。引き続きコブがプロデュースし、パーカッションのトニー・ケントを新メンバーに迎えたた2016年の「Mud」は、同アルバムの4位まで昇りました。

 

「Mud」収録の"Stone"

 

そして、2018年に「イエローストーン」の出演を果たします。その露出による知名度のアップが功を奏し、続く2019年のセルフ・タイトルのアルバムは、ビルボード200で初登場6位の快挙を果たしたのです。活動のエリアも一気に広がり、10万人を集めたロンドンのフェスにも出演しました。このような経緯を経て今年、メキシコ北西部産の螺旋状にねじれたさやを持つ木を意味する「Tornillo」をリリースしました。

 

 

冒頭に触れた、多くのドラマの視聴者がバンドをGoogleで゛検索゛したエピソードについて、メンバーのジョン・ジェファースは最近のインタビューで、゛僕たちは実在するよ。確かにね゛と苦笑を浮かべます。゛そして、僕たちはバンドなんだ。バンドのように活動してるんだ。Whiskey Myersは男じゃない。シンガーでもない。ただのバンドなんだよ゛ジョンによると撮影現場では、゛ColeとKelly。全員と交流したよ。ケビンには会わなかったな。あの小さな、たしか4分くらいのシーンのために、12時間か13時間くらい撮影したんだ。俳優や女優に対する新たな敬意を発見できたよ゛といった感じだったようです。

 

 

今作「Tornillo」では、ホーン・セクションを導入したのが新機軸で、それはリード・シングルでテキサス、レッド・ダート・チャートでも既にヒットした"John Wayne"(タイトルがいかにもアメリカ南部的)から早速その効果が良く現れています。幾分ファンキーで弾むグルーブが心地よく、合いの手を入れる女性コーラスが「サザン・ロック」を主張しているようです。"Antioch"や"The Wolf"などのミディアム曲でもホーンの効果で、サザン・ソウル風な味わいもありますね。"Fet's"、"Mission to Mars"は軽めのアップテンポで、文字通りのカントリー・バンド風ですが、熱いギター・ソロがフィーチャーされます。メイン・ボーカルのコディの声は、あのロニー・ヴァン・ザンドを思わせるしわがれ声で、かつてのロック・ファンには刺さる歌声ではないでしょうか。

ややもすると時代錯誤ともとられかねないサウンドですが、メインストリーム・カントリーの艶やかなギター・サウンドと比べると、強い情熱や意思を感じる音で、アルバム全体としては粗削りな感じ(年齢的に落ち着いては聴けません)はありますけれども、こういう音が今も存在する事が頼もしいです。

 

 

 



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