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2016年のメジャー・デビュー・アルバム「Hero」とデビュー・シングル
"My Church"で鮮烈にカントリー界に登場したマレン・モリス。その当時
のことは、最近アップしたインタビュー記事でご紹介しましたが、待ち
に待ったセカンドのリリースです。やはりこの3年いろんなコラボでの
交流がありましたが、やはり大きかったのが、昨年2018年、エレクトロ・
ポップのZeddと組んだ"The Middle"だったでしょう。 その成功を見れば、
この曲で彼女の虜になったオーディエンスに向けた作風にするのは、当
然の事だろうと思います。
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リード・シングルの"Girl"は、印象的なギター・リフで重厚なビートを
刻み、ここらは「Hero」を想起させる部分も有りますが、全体としては
華やかにあか抜けて、シンセサイザーやプログラミングの現代的なサウ
ンド、ダンス・ビートが幅を利かせます。これは、前作のBusbeeに加え
て、アデルやベックとのコラボで知られるGreg Kurstinがプロデュース
に参加した効果でしょう。マレンの歌声には艶やかな甘さやR&B的な柔軟
さがあり、アップ・テンポでは溌剌とした歌を聴かせてくれます。そん
な中で流れるようなミディアムの"A Song for Everyone"での和みのマレ
ンが個人的には収穫と云えるお気に入り曲です。
ここでの彼女自身の歌唱、「Hero」の頃に対してスタイルを調整した
ように思います。"The Middle"からそうでしたが、声のピッチを上げ
ているのです。これによって、ソウルフルな力強さ、滑らかさやふくよ
かな甘さが出ていると感じます。その一方で、「Hero」の作品、その筆
頭が"My Church"ですが、当時のピッチの歌唱で感じられた深い陰影や
”啓示的”と云いたい奥行き有る響きが聴かれなくなっています。"My
Church"を初めて聴いたとき、その冒頭から深み有る一撃で引き込まれ
た記憶がありますね。
これで思い出されるのが、レディ・アンテベラムのボーカル、チャール
ズ・ケリーの話。彼はしわ枯れ声で、元々高めのピッチで歌ってい
たらしいのですが、ヒラリー・スコットと出会い、彼女とのハーモニー
の為に歌う声を低くした結果、レディAの魅力となる気骨ある歌声を発
見したと語っていました。となると、マレンはピッチを高くして、カン
トリーから離れてしまおうとしてるのか。。。
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このクロスオーバーへの志向を感じさせるアルバムの中で、ダウン・ホ
ームの王道と云えるブラザーズ・オズボーンと"All My Favorite
People"で共演しているのは見過ごせません。このトゥワンギー以外の何
物でもないギターがフィーチャされた、ライブ感溢れるプレイでは、カ
ントリー・ガールならではの魂を聴かせてくれます。ジョン・オズボーン
のギターとマレンの掛け合いも飛び出してカッコイイ!サザン・ロックだ。
この曲を含む前半にはブランディ・カーライルをフィーチャした目玉曲
"Common"も有りますね。とにもかくにも、このバラエティに富んだ意欲作
と云えるアルバムがどう彼女をグレードアップさせるのか、興味深く見守
りたいです。
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