ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

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【ガイド】 CMA アワード & カントリーミュージック協会 とは

2008-11-09 | カントリー業界情報、コラム

 ※2008年CMAアワードの結果はコチラ

 いよいよ11月12日、カントリー・ミュージックの祭典、2008年CMA Awards・ショーが開催されます!ノミネートをザックリ見るとあまり変わり映えしないじゃ~ん?なんて思われるかもしれませんが、着実に新顔も入ってきています。米国雑誌でもカントリー界は「秋の紅葉の様にゆっくりであるが、確実に世代交代が進んでいる」と論評されていました。カントリー・フィールドのみならずアメリカン・ミュージック・シーンで大きな影響力を持つCMAによるBiggest Nightです。とは言いつつ、”CMA”と言っても、カントリーに精通してる方はお分かりでしょうが、一般のポップス・ファンには「意味わからん!」って思われるのが正直なところと思います。ロック、ポップスには同様の枠組み組織はありませんからね。そこで、簡単にCMAの事やCMA Awardsの選考について、ごくごく簡単にご紹介したいと思います。

 


 カントリー・ミュージック協会(CMA:Country Music Association)が生まれたのは1958年、つまり今年で50周年のスペシャルなメモリアル・イヤーなのです。その登録メンバーは我が国も含め全世界41カ国、6000人を超えます。メンバーになるには会員の推薦と音楽業界に従事している事が条件です。具体的にはカントリー・ミュージックの普及の為に活動している人達~例えばレーベル、出版社、マネージャー、タレント・エージェンシー、ラジオ番組企画や作曲家などなど~です。と言う事で「俺、カントリーがメッチャ好きやねん!」と言っても入れません。協会の専任スタッフとしては代表、報道担当、イベント&特別プロジェクト担当、財務&運営、そしてマーケティング戦略担当の部門に42人が在籍。活動内容は以下のようなものです。

①CMAアワードの開催・運営

CMAミュージック・フェスティバル(ファン・フェア)の開催 : 毎年6月、ほとんどのカントリー・スター達がナッシュビルに一堂に会し、次から次へとにライブショーを行う1週間のフェスティバルです。

③Hall Of Fameの運営 : 組織は別ですが実質的運営をしています。

④カントリー・ラジオ・セミナーの開催 : カントリー発展の為有力な媒体であるラジオ関係者を毎年3日間ナッシュビルに集め、リスナーの傾向、何を望んでいるか、期待される方向等のセミナーが有り、その間各レーベルは売り込みたいアーティストのパーフォーマンスを展開します。新人達にとってはこれに出演出来る事がスター街道が遠くに見えたと実感できるのではないでしょうか。

⑤ソングライターの育成 : ライターだけのライブを開催したり、育成セミナーを開いています。

⑥業界擁護・支援 : 著作権等について歌手・作曲家・レーベル・出版社の権利等の意見をまとめる。

⑦寄付行為 : 小児医療、小児音楽教育

 


 そのCMAの活動理念は、世界におけるカントリー・ミュージックの発展を支援し魅力を高める事、広告主や消費者やメディアにカントリー・ミュージックが成長していく媒体である事を明らかにする事、そして、カントリー業界に一貫した目標を提供する事、とあります。コレだけ見ると、ありきたりな所信表明のようですが、1958年に設立した当時は本当に切実でした。誰がCMAを作らせたのか?ずばり、エルビス・プレスリー(Elvis Plesly)です。そして彼に続いたロックンローラー達です。CMAの前代表のJo Walker-Meadorは言ってます。「ロックンロールがラジオを席巻していました。ラジオ局はカントリー・ミュージックを取り上げなくなり、スタイルを変えていきました」今でこそ、エルビスは”カントリー・ミュージックとブルース/R&Bを自然児感覚でブレンドし、ロックンロールと言う新しいジャンルを生み出した”と理解されていますが、当時の白人マーケットからするとロックンロールがカントリーに取って代るのでは!?という強烈な危機感があったのです。一つの音楽ジャンルが消えてしまうかも・・・・そういう局面で、ラジオDJ、グランド・オール・オープリーのマネージャー、レコード・プロデューサーやアーティストらが結束して、CMAが誕生しました。一つの音楽ジャンルをプロモートする団体としては、初のモノだったのです。

 そしてこの時期以降、50年代終盤から60年代にかけて、カントリー・ミュージックは「ナッシュビル・サウンド」というストリングスをフィーチャーした独特のコンテンポラリーなサウンドで復活を遂げ、パッツィ・クラインのようなカリスマ・スターや、スキーター・デイビスの"The End of the World"のようなオールディーズの名曲が生まれていくのです。このナッシュビル・サウンドは、ブラック・ピープルをも魅了し、エスター・フィリップスや、何よりレイ・チャールズがナッシュビルに向かい、"愛さずにはいられない""わが心のジョージア"など大ヒットをモノにしたのは有名です。蛇足ですが、私は、この流れとブラック・ゴスペルにおけるハード・シンギング・スタイルが合体し、1960年代初頭に「ソウル・ミュージック」が生まれたと思っています(オールド・ソウル・ファンの皆様、ナッシュビル・サウンドも聴きなさい)。

 CMAはカントリーの伝統を守るべく、すかさずカントリー・ミュージックの殿堂~Hall of Fameを1961年に設立。そして、1967年には「CMA Awards」がスタート。その第2回目のアワードは、全米でテレビ放送された歴史上初めてのアワード・ショーになったのです。そして今やその視聴率はグラミー賞を凌ぐと言われてます。

 

 
 こうしてCMAを一つの起点とした業界トータルとしての冷静で戦略的な分析・考察が、カントリー・ミュージックに現在までの隆盛を保ち続けさせた原動力だったんだと私は考えます。こういう仕組みは、アーティスト独自のパーソナルな芸術的な意志を重視する(とされている)、ロック的な感覚からすると違和感を覚えるかもしれません。でも、決して全てのカントリー・アーティストや音楽製作者が右に倣えで業界の方針に従っているわけではないですし、そうした中でカントリー・ミュージックは商売と芸術のバランスが、右往左往しながら、常に取られてきたのではないかなぁ、と感じています。そういったトータルの戦略もなく、しばらくは白人ロッカーにチヤホヤされて安穏としていたブルース・ミュージックが、残念な事に今や殆ど時代性を失ってしまった事を思えば、カントリーにおけるCMAの存在は大いに意義があったと言えるでしょう。もしかしたら、ロックもブルースと同じ運命を・・・・

 

 

今年のCMAアワードのホストBrad PaisleyCarrie Underwood


 そしてCMAアワードの選定について。

 CMAアワードは、上に述べたCMA会員による投票で決まります。ファン投票で決めるベガスのAcademy of Country Music Awardとの大きな違いです。だから、カントリー業界人の思惑が入ります。対象期間は、本年であれば2007年7月から2008年6月の1年間。投票は3回に別れ、まず第1回目は7月上旬。この時は、各カテゴリーで一組、自由にアーティスト名を記入します。そして2回目が8月下旬。ココでは先の投票からの上位の20組が各カテゴリーでリストアップされ、投票者は5組まで選ぶ事ができるようです。この結果がノミネートとして発表されるのです。最終の投票は10月下旬。5組の最終ノミネートから1組を選んで、CMAアワード・ショーの当日を待つ事になります。
 
 投票を前に、レコード会社からCMAメンバーに、所属アーティストへの投票を促すホームページへのリンクが付いたメールが届きます。代表的なものを教えてもらいましたので、以下にリンクします。面白いですよ。

Taylor Swift
Brad Paisley
Sugarland
George Strait

 従来はアワード・ショーのチケットは会員限定でしたが、多くのファンの要望もあり、3年前から誰でも見れるようになりました。それまではメンバーや業界人だけでオプリーホールでやってたそうですが、現在はナッシュビルのイベントホール(今年はSommet Center)に2万人を集めて開催されてます。昔に比べたら大きな会場でファンの反応も凄く大盛り上がりのようです。一度は行ってみたいですね!!

 そして!今年のNHK-FMのCMA Awards放送は12月27日(土)18:50~21:00の予定になっています。ファンの皆様はお楽しみに!



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