ダイアリー・オブ・カントリーミュージック・ライフ

現代カントリー・ミュージックのアルバム・レビューや、カントリー歌手の参考になりそうな情報を紹介しています

Ashley McBryde アシュリー・マクブライド - Never Will ~インタビューで語る幼少期や近況も~

2020-04-25 | カントリー(女性)

 

2019年はACMアワードだけでなく、CMAアワードでも新人賞

(Horizon Award)を受賞し、ようやく実力に見合う栄冠を得た、

咲きの苦労人、アシュリー・マクブライドのセカンド・アルバム

です。シングルのヒット具合はそれほどでもない(最高でも"A

Little Dive Bar in Dahlonega"がカントリー・エアプレイで30位)

ですが、早くからいわゆるプロの評価が高く、エリック・チャー

が無名の彼女を自分のステージに上げた話は有名です。他でも、

例えばビルボード誌のスタッフが、彼女のデビュー曲”Girl Going

Nowhere”を2010年代(つまり10年間)の35ベスト・カントリー・

ソングの16位に、さらにアルバム「Girl Going Nowhere」を 同じ

25ベスト・カントリー・アルバムの15位に選定しています。

 

このセカンド・アルバムでも、ソリッドなアメリカン・ロックと

心に染みるカントリー・ソングを組み合わせた基本路線はキープ

されていますが、一聴して曲想は良い感じにレンジが広がり、サ

ウンドもグレード・アップ、さらに適度にキャッチーさも添えら

れて、より幅広く受け入れられそうな感じになってると思いまし

た。やっぱり、ヒット曲が欲しいところでしょうから。

 

歌詞をモチーフにした連続ドラマ仕立てになってます。初回は下の" One Night Standards"

 

オープニングは、ひっそりしていたデビュー・アルバムから一転、

ジョン・メレンキャンプばりのシャープなアメリカン・ロック

"Hang in There Girl"でスタート。カントリーでこの手によく入れ

るバンジョーは聴かれず、潔くキレキレのエレクトリック・ノイ

ズでカントリーを主張します。歌詞は、貧しい田舎の風景と華や

かな地に憧れる少女を描き、”オイルと不凍液をチェックして、

さあ出発!頑張れ!あなたなら大丈夫よ”というポジティブ・ソ

ングです。アシュリー自身のかつての姿をタブらせているのでし

ょう。

 

 

リード・シングルとなった" One Night Standards"は、one night

standのもじりだと思いますが、一晩限りの関係の男女のやり取

りを歌っているよう。これがこういう関係の”標準・基準”ってこ

とでしょうかねぇ。情感あふれるミディアムで、余裕があります。

彼女のソングライティングは今は評価されていますが、それを培

った下済み時代や、初めて曲作りをした子供の頃について、最近

CMAに語ったインタビューで紹介しましょう。

 

・・・  「(下済み時代、)私は自分で作った曲だとはお客さんには言

わなかったわ。なぜなら、皆シャワールームに入ったり、次のビ

ールを買いに席を立っちゃうから。実際に見たのよ」と、笑いな

ら語ります。しかし、アシュリーのペンによる歌はいつも素らし

いものでした。彼女が曲を書き始めたのは12才の頃。「あぁ、なん

て事!」アシュリーは、ある日おばあさんの家で彼女の最初のオリ

ナル曲、アシュリー曰く「”Fight the Flames"って曲で、12才の

の子に起こるはずもない、長たらしい情事の曲」を披露した時、

母さんがため息と共に言い放ったのを覚えています。しかしお母さ

んは耳にしたものが何だったのか分かっていました。彼女の娘はソ

ングライターの耳という特別な才能を持っていたのです。 ・・・

 

 

曲想の拡がりということでは、抑制を効かせた導入部からヘビーな

サウンドへドラマチックに展開する"Shut Up Sheila"で新境地を開

拓していますね。アリゾナ州の400エーカーの牧場で育ち、毎年

母さんとブルーグラス・フェスティバルに参加していたというアシ

ュリーの面目躍如といえる、トラディショナル・タイプのカントリ

ー・ソング”First Thing I Reach For”や、サウンドをくぐもらせて、

トロな雰囲気を演出したブルーグラス風の”Velvet Red”が、ベテラ

ン・ファンには嬉しいところです。

 

 

 

そして、ラストのくせ者”Styrofoam”。つまり、発泡スチロールの

有名な商標で、ソフト・ファンクのビートに載ってしゃべくって

この断熱材を称えるという曲です。

 

 

”1941年、レイ・マッキンタイアという物理学者が、スウェーデン

の発明家、カール・マンターズが発見していた方法を再発見しま

した。知ってましたか?私は調べたんです。とにかく、レイは湿

気に強い独立気泡フォームの押出ポリスチレンを大量に作る方法

を見つけました”

 

と、やけにややこしく専門的な話をしてから、一転、急に話が生

臭くなっていきます。Kwik Sak(ナッシュビルのガソリン・ス

タンド)で5ドルでそのボックスを買い、氷とNatty Lights(ロー

カル・ビール)を入れて、ご満悦。学校で子供が作った灰皿を

お爺さんに壊れないように送るのに、良い緩衝材にもなります。

生活面だけでなく、アメリカ軍隊でも、筏を始めとしたいろんな

使用法で活動をサポートする事にも触れられます。そして最後・・・

 

”一部の人は云います。”自然に対する影響は大丈夫?、分解がと

ても遅いよね” 私は科学者ではありません。分かるのは、飲んで

いるこのビールがとても冷たい事です。発砲スチロールのお陰で

す。有難う、レイ・マッキンタイア。有難う、カール・マンター

ズ。そしてありがとう、スティーブ、Kwik Sakの店員さん”

 

これは、独特のユーモアでオブラートに包んだ、南部労働者階

の誇りの表明でしょう。その慎ましい生活に役に立っている様子

を自信をもって語り、彼ららしい”俗っぽさ”を醸す話題として

軍の事もしっかり触れられています。贈り物をあげるのは、やは

りお爺さんです。

 

環境問題に無頓着なスタンスも歌われます。これについては、

だビール好きだから、とスルーしますが、彼女がその事を理解す

る能力が有り了解している事は、冒頭のややこしい話で主張され

ます。労働者層は決して無能ではないのです。発砲スチロールは

私たち日本も含め、なんやかんや言っても世界中で使われ続けて

います。なおこの曲は、アシュリーといつも共作しているRandall

Clayの単独作です。

 

最後に彼女の近況を。ファンからの期待も増してくる中で、自

自身をより良く変えていこうと行動している事を、インタビュ

ユーモラスに語っています。

 

・・・ アシュリーは人生が良い方向に変わっている事を穏やかに実

感しています。彼女は最近(2度目の)禁煙を始め、飲酒も控え

めにし、さらにレイシックの手術も考えているようです。”あと、

スクワットもしているの。痩せる為じゃないのよ。息切れせずに

どんなステージもこなせるようになりたいからね(笑)” ・・・

 

 



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