★2021年の新作「 Country Again: Side A」を取り上げました★
新作「Center Point Road」のリリースが5/31に控えているトーマス・
レット。これは2年前のリリースになるサード・アルバムです。CMA
アワードでここ最近、2年連続で男性ボーカル賞にノミネートされる程
の存在になった彼、取り上げておきたいと思います。 2013年デビュー
で、この頃に出て来た、”シュッとした感じ”(カントリーにしては、で
すが)の男性アーティストの一人。というより、長年カントリーに ディ
ープに親しんでいる方には、90年代に一時活躍した甘いマスクの美声
アーティスト、Rhett Akinsの息子と云えばピンと来るでしょうか。
そのシュッとした感じの男性アーティスト達としては、フロリダ・ジョー
ジア・ライン、サム・ハントSam Hunt、ブルット・エルドリッジBrett
Eldredge、ハンター・ヘイズHunter Hayesあたりが思い出されますが、
特に前2者は、カントリー・フィールドにヒップホップのフレーズやR
&Bのグルーブを大胆に持ち込み、今に至るカントリーのトレンドの起
点を作ったと思っています。このトーマスもセカンド「Tangled Up」で
その流れに乗り、その地位を確立しました。そこでは、ラップやスクラ
ッチ音を始め、懐かしいZapp(ロジャー)風のトークボックスや、ソ
ウル・レジェンド、サム・クックの”ウッ!アッ!”のギャングコーラス
等、R&Bらしい要素をあちこちに散りばめて雰囲気を盛り上げていま
したね。
簡単にプロフィール。1990年ジョージア州生まれのトーマスは、カント
リー・スターを父に持 持ってはいましたが、高校生の頃までは父の後を
追う事は考えませんで した。それでも、マール・ハガードやハンク・ウ
ィリアムスらのカント リー・レジェンドに親しむ一方、ミレニアル世代
らしくレッド・ツェッペリンやローリング・ストーンズなど雑食的に音
楽に傾倒していたのです。音楽への路を真剣に進もうとした大学生時代
に、EMIとソングライティング契約を結びますが、2010年には早く
to Quit"が採用され、頭角を現すのです。
この「Life Changes」は、前作「Tangled Up」の作風は踏襲せず、AOR
的パワー・ポップ集といったような感じですね。オープニングは、マレン・
モリスのボーカルをフィーチャした、ディスコ調の"Craving You"で颯爽
と滑り出します。トーマスのテナー・ボイスが実に軽やかです。ロマンチ
ックなバラード"Marry Me"はポップ・カントリーの王道と云える佳曲。や
はりカントリーはバラードがキモですから。特にお気に入りは、カントリ
ー・ミディアムの"Sixteen"あたりです。
そんな艶やかな作品群の中で、"Drink A Little Beer"に驚きました。父、
Rhett Akinsとのデュエットというだけでなく、ケイジャン風のストレート・
カントリーなのです。更に、ブレイク後、バンジョーがバリバリ鳴り出した
と思ったら、ハイスピードのバーン・ダンスが展開するというトラディシ
ョナル・スタイル。こんな曲が、シンセが大仰に響く"Leave Right Now"
のようなエレクトロ・ポップと並んでるのだから、この人の守備範囲の広
さは半端ないですね。どんなスタイルも爽やかに歌いこなせる人です。
一時期のR&Bグルーブ一辺倒から、カントリー界のトレンドも変わって
来そうで、このトーマスも、新作でどんな変貌を見せるか楽しみです。
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