ディープなトラディショナル・ボイスでパワフルにヒットを飛ばす実力派女性シンガーSara Evans(サラ・エヴァンス)が、この2007年「Greatest Hits」を出しました。ここ最近は離婚騒動ですったもんだしてたようですがそれも落ち着き、まずはベスト・アルバムで素早く復帰したってところ。もちろん、新曲も4曲用意されており、リード・シングル"As If"は早速カントリー・チャートでヒットしています。Saraの歌声の安定感は、決して強面のカントリー・ファンを裏切る事はありません。
そのヒット・シングル"As If"。アップ・テンポのなかなかノリの良いキャッチーなナンバーですが、過去のアップテンポのヒット曲(このアルバムに選曲されている、素晴らしい"Suds in the Bucket"、"A Real Fine Place to Start")と比べると、相当にディストーションの効いたエレクトリック・ギターがフィーチャされたサウンドで、Saraのボーカルがすこし引き気味。これも、ここ最近のトレンドに倣ったってとこでしょう。そして他の3つの新曲。ピアノでしとやかに始まるバラードの"Love You With All My Heart"も、コーラスではこの手のサウンドで盛り上げます。曲はさすがに良いんですが、今後Saraがこのサウンドにドップリ漬かったら、と思うと心なしか不安に・・・しかし、アコースティック基調のサウンドが和ませてくれるカントリー・ミディアム"Pray for You "や、フィドルによるイントロが気持ち良いロッキン・カントリー"Some Things Never Change"もありますので、その心配は杞憂でしょう。
このアルバム、ベストなんですけれども、ちょっと何か足りなくない?ブレイク作「No Place That Far」からはカントリー・チャートで初の1位を獲得したバラードの"No Place That Far"、「Born to Fly」からはファンキーな魅力が新鮮だった"Born to Fly"や情熱的な歌唱が感動的な"I Could Not Ask for More"など4曲 、「Restless」からはダウンホームなミディアム"Perfect"やピュアなロッキン・ホンキー・トンク"Suds in the Bucket"、そしてアルバムとしてカントリー・チャートで初の1位(ポップは3位)を獲得した「Real Fine Place」からは哀愁のメロディが印象的なタイトル曲や"Cheatin'"など3曲。こうして素晴らしい歌声と曲が満載なのですが、大事なあの曲が抜けてるよね、と。そう、"Three Chords and the Truth"が入ってない。そして、この曲をタイトルにした素晴らしいデビュー・アルバムからの曲が1つも入ってないのです。製作コンセプトが、このデビュー盤だけ大きく違うから、今回は外したのでしょう。う~ん、理解できるが納得できない。
「Three Chords and the Truth」は1997年のSaraのデビュー作。Dwight YoakamのギタリストPete Andersonがプロデュースするという話題性もある作品でした。伝説的ソングライターHarlan Howard (Patsy Clineの"I Fall to Pieces"など) に見初められたそのトラディショナルな歌声を生かすべく、Dwightのバンドが全面的にバックアップして現代版ベイカーズフィールド・サウンドを展開。そのアップテンポ・ナンバーでのパッションに溢れる歌声により、ただのレトロには終らない意気の良さを見せてくれました。それらの中でもHarlan作、Buck Owensでヒットした名曲"I've Got a Tiger By the Tail"のカバーが目を引きましたね。しかし、このアルバムの本当の聴き物はバラード、そしてそのピークが"Three Chords and the Truth"なのです。ココでのアコースティックなカントリー・サウンドはこれ以上ないくらいの深みと重厚さと美しさを放っており、その中でSaraがその完璧なディープ・ボイスでソウルフルに歌い上げています。通常は60~70年代のおけるソウルシンガーの深みのある歌声を形容する「ディープ」と言う言葉をどうしても使いたくなる、本当に凄い正真正銘のカントリー・バラードです。そしてもう1曲、Leslie Satcher作の"Unopened"も相当に良いバラード曲でなかなかに凄い曲と思います。アコギによる印象的なフレーズの響きが実にリッチで、これぞ現代カントリー・ミュージックの醍醐味の一つ。Patsy Clineの名曲"Imagine That"も堂々のカバー、新人にしてPatysナンバーを軽々と歌いこなし、その実力を見せつけてくれます。
ただ、その「Three Chords and the Truth」と現時点の最新オリジナル作「Real Fine Place」のどちらがお奨めなんだろうかと考えると、なかなか難しいです。もう好みの問題ですね。「Three Chords and the Truth」は間違いなくトラディショナル基調の本物のカントリーで申し分ない(トラディショナリストもケチの付けようがない)ですが、「Real Fine Place」のSaraがこれ以上ないという素晴らしいコンテンポラリー・カントリー・サウンドでモノにしたワイルドさと余裕を兼ね備えた魅力がそこには感じられず、型にはめられているとも言えなくもない。ジャケットで見れるSaraのイメージが全然違って来ている事が、彼女の音楽の変化を良く物語っていますね。「Real Fine Place」での、例えばSheryl Craw(シェリル・クロウ)作の"Roll Me Back In Time"は、歪んだ音色のロッキッシュなエレクトリック・ギターが実に印象的なカントリーのメロディーを紡ぎだし、余裕たっぷりのSaraの歌声が舞い踊る、疑う余地なく極上のカントリー・ミュージックと思います。「Real Fine Place」のトータルのクオリティや、コンテンポラリーとトラディショナルのバランスは素晴らしい。
将来もし、Saraがどんなにクロスオーバーでロック的サウンドで歌おうとも、我々カントリー・ファンは彼女に期待をし続けるのでしょう。なぜなら、Saraは"Three Chords and the Truth"を歌った人なのであり、その気になれば何時でもこんな歌を歌える人なのだと、我々は知っているからです。それはSaraだけができる事であり、例えば女王Martina McBrideやその後継者Carrie Underwoodには出来ない事なのです。
1971年ミズーリ州Boonville生まれ、New Franklinの農場で育ちました。彼女の二人の兄が楽器を始めたのが、Saraが4歳の時。その家族バンドは貧しい家計を助けました。1991年にナッシュビルに移り、今回離婚となってしまった旦那Craig Schelskeと出会います。間もなくオレゴン州に移って活動しますが、1995年にまたナッシュビルへ戻りデモのレコーディングを始めます。そしてこの年、先にも触れたHarlan Howardとの運命の出会いをキッカケにRCAと契約、「Three Chords and the Truth」でのデビューとなりました。このアルバムは、残念ながらヒットしませんでしたが、2作目「No Place That Far」がヒット、スター街道を歩む事になり、実力派シンガーとしてTrisha Yearwoodに取って代わったLady Countryとして現在、最前線に君臨しています。
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心強いコメント、うれしいです。
Sara Evansは既にカントリー・ファンの方々
にはそれなりに有名と思いますが、ポップス
ファンの間ではどうなのか、私もよくわか
りません。お知り合いで見込みのありそうな
人がいたら薦めてみてください。
最近ベスト物が幾つか出てるようですので、
また紹介をさせていただきます。
子供を産んだ直後お腹もまだ戻っていなかったけれど、でもそんなこと気にもせずパワフルに歌っていました。
良かったですね。
米国女性は本当に強い、レディーファーストなんかいらないくらい。
離婚するなんてもったいないくらい美人なのに、何があったんでしょうね。
ベガスでご覧になりましたか。うらやましいです。
ジックリとコンサートで聴きたいですね。
実は私も98年のファンフェアで数曲見ました。
"Cryin' Game"がブレイクし出した頃です。
カントリー・ゴールドで来ないかな。
重ね重ね、よろしくお願いします。