●2018年リリースの「Desperate Man」のレビューをコチラにアップしました
以前、2011年の「Chief」をご紹介した事の有る、エリック・チャーチの2015年最新作です。今やCMAアワードでも、男性ボーカル部門だけでなく、エンターテイナー部門にもノミネートされるビッグな存在となった彼。ポップ界にはなかなかいない、”アーシーなテナーボイス”の持ち主が、特に事前のプロモーションもなしに突如2015年にリリースした好盤です。
「Chief」にてアカデミー・カントリー・アワードのアルバム賞を受賞して以降の彼の足取りを簡単に見ておきましょう。2013年に、カントリー界では珍しいライブアルバム「Caught in the Act」をリリース。テネシー州はチャタヌーガのTivoli Theatreでレコーディングされたアルバムは、ポップチャートでも5位に入る、ライブとしてはなかなかの健闘振りでした。その後彼が取り組んだのが、2014年にリリースされた「The Outsiders」。タイトル曲に代表されるヘヴィー・サウンドが大きな特徴で、"Give Me Back My Hometown"のような大ヒットバラード曲も織り交ぜたそれは、ポップとカントリー両方のアルバムチャートでトップを獲得。大成功を収めた後の、この新作です。
前述のプロモーション活動同様、パッケージも異色。まず、本人の顔がどこにも出てこない(リーフレットの中にも!)。曲目、関係者のクレジットやお決まりの謝辞などの情報類も一切なしで、CDのラベルに曲目が印字されてる程度。物憂げな少年が陰鬱な雰囲気の中、一人座っている意味深なジャケット。落書きのように書かれた、判読困難な曲目。カントリーではありえない程アーティスティック。。。音的にも、前作「The Outsiders」で究めたハード・サウンドは殆どなりを潜め、ジャケットからも感じられるような陰影の有る音場で、適度にポップな艶は持ちつつも、なかなか南部嗜好のサウンドを聴かせてくれ、エリックの強烈な意志・コンセプトを感じ取れます。
タイトル曲は、学校のクラスの中で異端的な少年に自分自身を重ね合わせるという、ジャケットで見せたイメージを歌った、めまぐるしくテンポの変化する壮大なナンバー。アルバム全体をコンセプト的に演出していますが、これ以降の作品群では、彼が大切にするカントリー定番のテーマ~失恋、切望、家族、そしてその愛~が散りばめられていきます。そして、その演奏スタイルも、疾走するロッキン・カントリー"Knives Of New Orleans"、彼らしいリズムボックスをフィーチャーしたミディアムでシングルにもなった"Record Year"にとどまらず、神々しいコスペルコーラスの"Mistress Named Music"、骨太なファンク調の"Chattanooga Lucy"、ソウルフルに聴かせる"Round Here Buzz"等じっくり味わえる、質の高い作品が取り揃えられています。なお、バラードの"Mixed Drinks About Feelings"でデュエットしている Susan Tedeschiは、90年代から活躍している、ブルース・アーティスト。とにかく、エリック・サウンドの集大成と言える、素晴らしいアルバムだと思ってます。クリエィティブな演奏も聴きものですよ。
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